2022年広島県公立高校入試問題解説速報

本日もよろしくお願いいたします。今日は広島県公立高校入試が行われ、社会が公開されましたので、今回は公立高校入試解析を行いたいと思います。
え、その公開についてといいますが、まず、所属する機関とは一切関係ありません。あくまでも個人の見解とみていただけると幸いです。また、問題の使用に関しましては、広島県教育委員会様より承諾をいただいたうえで問題を使用します(写真などの著作権は5月以降になります)。
では、今回は広島県公立高校入試問題の解説速報を行いたいと思います。なお、正答率が出た後に改めて解析を行いたいと思っています(短文記述問題の解答例については、広島県教育委員会から発表されているものをそのまま使用しています。問題などは下記のサイトを活用ください)。
最後までお付き合いよろしくお願いいたします。


■2022年広島県公立高校入試問題

今年の入試問題ですが、問題の順番が少し変わっていましたが、大きくは例年並みで変わっていませんでした(ひと昔前の広島県は大問2に公民が出ていたこともありました)。
大問1は地理総合、大問2は公民(経済)、大問3は歴史総合、大問4は三分野総合問題です。大問4は今年注意をしていたSDGs関連の問題が出ていました。
問題数(採点対象)が24問、そのうち短文記述問題が10題、完答問題が2題(短文記述問題2題を含む)と少しだけ減りました。短文記述問題とその他の問題で点数はほぼ半々になります。となると短文記述問題の出来が点差を分けること、知識系の問題の出来によって点差がそれぞれ分かれると思います。

■大問1 解説

大問1は交通史をテーマとした地理総合問題です。となると、新幹線や高速道路などの関連問題が出題されていたのでは、と思います。

問1は高速道路が弧を描くように通っている理由を答える問題です。今回は空欄に入る語句を答える問題です。扇状地の地形に合わせて何に沿って作られたのか、を答えるといいですが、地形図を見ると、等高線しか入らないと思います。

問2 地図は2010年までに開業している新幹線の路線図を表しています。資料1は東京を起点に各都市に到達する時間を表しています。資料1の2010年と2014年を比較すると、鹿児島県だけ所要時間が短縮されています。その理由として、2010年から2014年の間に九州新幹線の博多・八代間が結ばれたことが大きいです。つまり、九州新幹線に関する知識が分かればそこまでの難度ではありません。それ以外の都市ではすでに新幹線が整備されていたのです。

問3 東京・サンフランシスコ間の平均飛行時間の相違点を自然条件に触れて答える問題です。飛行時間に影響を与える自然条件といえば風です。となるとこの付近で影響を与える風は偏西風となります。少し理科の知識も必要となります。

問4 ドイツと日本の交通機関の割合を答える問題です。これはドイツと日本の地形が影響あります。ドイツは主に陸地が中心で、日本は島嶼部が多いところから日本はになります。つまり、航空機や船舶の利用がある方が日本になります。

問5 バスの運行の新しい仕組みについて利用者の立場、運航会社の立場それぞれの立場の利点を答える問題です。広島県ではこの形式の問題は2・3年に1度出題されています
今回のポイントはバスの運行の新しい仕組みが利用者側なのか運航会社側なのか、それぞれ整理する必要があります。運行経路・運行間隔については運航会社側の利点で、乗車方法は利用者側の利点です。表に書かれている文をうまく利用して、利用者側は「便利」という語句を、運航会社側は「効率的」という語句をそれぞれ用いないといけません。

問題としては標準的で書けないような問題ではないですが、まとめたものを文章にできるかどうかが点差を分けると思います。

■大問2 解説

大問2は久々に経済に関する問題です。僕が想定していた問題の一つではありました。今年は需要・供給の関係問題も出題が多いので、整理しておきましょう。

問1 イチゴの卸売量と卸売価格の関係をまとめる問題です。卸売量が5月と12月でほぼ同じなのに12月に卸売価格が高い理由を答えればいいです。ここでは背景知識を使います。12月といえばクリスマスのシーズンです。ここではケーキに使うイチゴの需要量が多いということが分かれば答えはアとわかります。

問2 公共料金を国や地方公共団体が認可や決定をしている理由を答える問題です。この問題はどちらかというと用語説明問題です。今年の問題でも出題頻度が高いので、確認をしておきましょう。公共料金を設定している理由としては、「安定的に供給することによって国民の生活を守るため」です。

問3 企業の価格決定に関する問題です。資料の事例をよく読むと、「X社の定める希望小売価格で売るように要請し、それに応じない小売店には、商品の出荷を停止していました」の部分から価格競争が阻まれる要因となり、消費者は価格によって小売店を選べなくなる問題が出ます。そのため、独占禁止法に基づいて監視や指導を行う機関は公正取引委員会です。ここはそれぞれで採点されるので、最悪でもBは正解を出したいところです。

問4 新傾向の問題です。今回の問題のなかで僕が注目した問題の1つです。お金の使い方についてまとめた文に当てはまる漫画はどれか、という問題です。
解答のポイントは「お金は有限」「私たちの欲求は無限」です。この2点に該当する漫画を選べばとなります。アはお金の循環に関する話、ウはクレジットカードの利用に関する話、エは税金に関する話です。

問4は新傾向ですが、まとめと漫画の正しい整合が必要となります。そして、アクティブラーニング形式の問題も増えていることがわかります。知識を蓄えるだけでなく、活用できる知識を意識しましょう。

■大問3 解説

大問3は食生活に関するテーマ問題です。テーマに即した問題、関連した問題の双方とも出ている良問と思います。

問1 弥生時代の日本の様子を選ぶ問題です。解答の際には歴史名辞を見つけて判定しましょう。アは渡来人、ウは前方後円墳よりそれぞれ古墳時代、イは土偶より縄文時代です。よって、正解はエです。

問2 (1)は奈良時代の統治の説明問題です。短文記述にせずに正誤問題にしています。これも先ほどと同様に歴史名辞で決めていきましょう。イは摂政・関白から平安時代(藤原氏の摂関政治)、ウは幕府と藩より幕藩体制なので江戸時代、エは守護、地頭より鎌倉時代とわかります。よって、正しいものはアとなります。
(2)は全国の特産物を都に運ぶ税が入ります。よって、イの調となります。この問題は一問一答で記述させてもよかったとは思います。

問3 室町時代で米・麦を1年に二つの作物を異なった時期に同一の農地で作る二毛作が入ります。

問4 日本からオランダに醤油が運ばれた主な経路を答える問題です。考えられることとしては、大航海時代の時に開かれた航路を答えるとそのまま解答となります。よって、正解はエとなります。

問5 牛鍋以外に資料から生活様式の変化を読み取る問題です。明治時代の文明開化時に入ってきたものとしてランプが当てはまります。

問6 和食を継承するための取り組みに関する自由記述型の問題です(公民融合問題)。条件をよく読んで、資料Ⅳの中から1つ選び、資料Ⅴの内容を読み取ったうえで、自分の提案を書ければいいです。
資料Ⅴを見ると、「外食が日常化した」「冷凍食品、インスタント食品により食生活は便利になったが、家庭内で調理をする機会が減った」という現状を踏まえて資料Ⅳの特徴に合わせて取り組みを書きましょう。

【解答例】(広島県教育委員会発表による)
B:外食の日常化やインスタント食品の普及によって家庭内で調理をする機会が減っているので、正月に地域の子供と大人が集まり、共に調理して食べる。

こういった問題は他の視点もあるのでは、と思うので、僕が考える別解も提示したいと思います。もし、ご意見等ございましたら申してください。

【その他の解答例】(吉野が想定した解答例)
A:ファストフード店やファミリーレストランが各地に開店して外食が日常化したので、こういったお店で地元の食材などを使った料理を季節に応じて提供する。
C:電子レンジの普及や冷凍食品、インスタント食品により食生活が便利になった一方で、栄養が偏る恐れがあるため、インターネットなどで健康にいい食事を調べて自分で調理をする機会を増やす。
D:ファストフード店やファミリーレストランが各地に開店しているため、そのお店と協力して、郷土料理や地元のグルメを提供することで食文化の多様性を生み出す。

Dについては資料Ⅴのどの部分を使うのかが難しいので、食文化の相違点をレストランなどと連携して提供する、という方向にもっていくといいでしょう(少しAと似たような解答になるかもしれないです)。

問6の自由記述問題はいろいろな着眼点があると思います。前半部分で資料Ⅴの現状をまとめたうえで、資料Ⅳで選んだものに対する提案をまとめるといいでしょう。

■大問4 解説

大問4はSDGsをテーマに「安全な水とトイレを世界中に」の部分に注目した三分野総合問題です。SDGsの問題はこれからも出題頻度が上がります。ぜひ確認ください(前半戦統括に関連記事があります)。

問1 「6」の目標を達成するために「1」の目標を達成することが必要だと考えた理由の説明です。攻略ポイントは➀上水道の普及率と一人当たりの国内総生産の関係性を読み取ること、②それを受けて、「1」「6」の目標達成のためにどうしたらいいか、という2点を記述すればいいです。なお、数値が低い場合は高くするようにする、高すぎた場合は低くする、というのは基本的な考えですが、今回もその方法が使えます。

問2 江戸市内の衛生についてのまとめ問題です。実は、僕がお世話になっているCAMELの授業ではこの話を軽く触れています。

【江戸時代の肥料(金肥)】→主に水田や畑の肥料として使用
干鰯ほしか油粕あぶらかす
・たい肥(し尿や人糞など)

干鰯や油粕については金肥の例としてはよく出ますが、たい肥も江戸時代では金肥となります
え、そんなの教科書に載っていないよ!と言いたいのですが、「中学社会歴史 未来をひらく」(教育出版)のP141にはこのようにまとめられています。

【リサイクルの知恵】(「中学社会歴史 未来をひらく」P141より)
 江戸時代には、人々が排せつする糞尿ふんにょうを、農作物の肥料(下肥しもごえ)として用いることが広まりました。近郊の村に住む百姓たちは、江戸に糞尿を買いに来て、それを肥料にして栽培した野菜などを、また売りに来ていたのです。(中略)
 糞尿は、水路の発達していた所へは部切船へきりぶねという専用の船で、そのほかの所へは馬に載せた桶で運びました。糞尿を川にたれ流すということはなく、こうして有効に利用していたので、江戸の川は、そのころのロンドンやパリの川と比べても、ずっときれいでした。(一部抜粋)

今回の問題で活用されていたところを抜粋しましたが、自分の使っている教科書にないといって、出題されないわけではありません。自分の府県で使っている教科書全てに注意を払う必要があります(といっても高校入試でそこまでやる必要はないですが……)。
ここから、Aには「畑や水田の肥料」、Bには「農村へ運び出された」がそれぞれ入ります。

問3 世界の水資源についてのまとめ問題です。a・bについてはグラフⅢと表Ⅰをうまくまとめるとアが正解となるのはわかります。cの記述ですが、空欄の後ろに「今後、水不足が深刻になることが懸念される」とあります。これはグラフⅡのアフリカの一人当たりの利用可能な水の量が少なくなっています。これは、産業の発達で水の使用量が大幅に増えていることがわかります。解答例は「産業が発展することによって、水の使用量が大幅に増加する」となります。

今回は短文記述問題が中心の問題のため、点差がつきやすいと思います。問1は100字前後の論述問題になりますが、書くべきポイントはそこまでの難度ではありません。問2は東京書籍・帝国書院という中心的な教科書に掲載がないので、少し戸惑った受験生もいたのでは、と思います。

■予想平均点は?

それらを受けての予想平均点ですが、僕の中では標準レベルとみています。なぜなら、短文記述問題での点差はつくものの、その他の問題では確実に点数を取っておきたいので、ここでの失点が響くと大変なことになると思います。昨年の平均点が25点(50点満点)ですが、今年も同じくらいの平均点になるのでは、と予想しています。ただ、短文記述問題の形式に慣れていない受験生にとっては厳しい試験だったといえるし、正しい学習を積み重ねた受験生にとっては高得点勝負になるのでは、と思います。

■来年度の受験生に向けて

来年度の受験も今年度と近い形式になると思いますが、資料読解、短文記述問題のトレーニングは忘れないようにしましょう。そして、単純知識問題はそこまで多くないものの、土台となる知識の定着を早い段階で仕上げておくのは間違いではありません。そのうえで、英語・数学の学習習慣をしっかりとつけて、来年度の受験に備えましょう。広島県については、来年度から一発勝負に変わります(選抜Ⅰが廃止されるため)。そして、内申制度も変わります。特に中3の成績が3倍評定になるので、しっかりと成績を取りにいってください。
また、移行措置単元の学習も忘れないようにしましょう。今年の広島県では箱ひげ図問題が出されています。他府県の皆様も新単元の問題も気を付けておきましょう。

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