100日後に死ぬ父。78日目。
父は自分が糖尿病であることを、自分の兄には伝えていなかった。元々父と伯父さんはあまり仲が良くないので、父は自分のことを報告するのが嫌なんだと思う。世の中の男兄弟がすべて父と伯父さんのような関係ではないと思うけれど、僕は男兄弟というものに良いイメージがなかった。
僕は父から伯父さんの話をあまり聞いたことがない。聞いたとしても伯父さんに対しての愚痴がほとんどで、伯父さんの良い所を話している記憶はまったくなかった。しかもその愚痴を聞いていると、父にも悪い部分があるので、伯父さんが父を怒るのも無理はなかった。
だからと言って、僕や母が伯父さんの味方になれば父も面白くないので、そうした時はただ愚痴を聞くことだけに集中するしかなかった。
父が糖尿病の事について、いつ伯父さんに話すのかはわからない。このままいくと、伯父さんは人伝で知るほうが早いと思う。すでに近所の人たちのほとんどが知っているので、伯父さんの耳に入るのは時間の問題だった。そして伯父さんは父に話してくれなかったことに怒り、ふたりはまた言い合いをすることになる。
父は物事を悪い方向に進める才能のようなものがあった。早く自分から伯父さんに伝えればよいものの、父は伯父さんに伝えるのは後回しにするようである。
それで伯父さんが怒ると分かっていても……。