
短編【スパイダーウェブ】小説
『勝手に決め付けていいですか?毎日寂しい夜なんでしょ?違う?うふふ。無理すんな☆そんな貴方に朗報!タッタ3000円でS女のリストを送ります。使い放題やり放題!さぁ、今すぐ振込みなさい!』
勝手にマゾ男にされてしまった大伴啓太のメールボックスにメールが届いていた。
『振込み、有難うございます。早速S女のリストを送ります。お楽しみあれ♪。(※更に5000円の送金で伏字無しのアドレスを送ります♡)
◉滋賀県 山岡ミミ子 24歳
スリーサイズ:85-54-82
m●on●yon@●●●.co.jp
◉滋賀県 大林希美 30歳
スリーサイズ:80-49-81
sek●usu●aisuki@●●●.ne.jp
◉滋賀県 今野恭子 21歳
スリーサイズ:88-57-79
●annko●ikuiku@●●●.ne.jp
◉滋賀県 …………。』
大伴啓太はメールボックスを開いて唖然とした。
四日前に、怪しげなメールが届いた。
これは絶対に詐欺だと思いつつも、まだ女性の胸の柔らかさを知らない啓太は一日中思い悩み、甘酸っぱい桃色の欲望に負けた。
メールに記載されていた銀行口座に3000円を振り込んだのだ。
そうすれば、S女のリストを送ると書かれていたからだ。
使い放題、やり放題と書かれていたからだ。
しかし、送られてきたリストのアドレスは伏字で使えない。
まさか、こんなリストが送られてくるとは。
しかも、S女って…。
滋賀県の女かい!!
こうして、いまだ女性の唇の柔らかさを知らない啓太は大人になって行くのだった。
『お振込み有難うございました。ご入金の確認がとれました。更に1万5千円のご入金で【魅惑のワクワクお見合いパーティー・BEAUTIFUl】』へのご招待IDを送ります』
長谷川賢一はメールボックスを開いて、一瞬なんの事か飲み込めなかった。
そしてもう一度、一週間前に送られてきたメールアドレスを確認した。
ちょっと待て!
長谷川は思わずPCの画面に叱責した。
お見合いパーティーって何だ!
俺はそんな所に行きたくて5000円も追加送金したんじゃないぞ!
伏字のないメールアドレスが送られてくるはずなのに!
まただ!
ちきしょう!
またやられた!
もう、二度とだまされないぞ!
と言いつつも、長谷川は懲りずに出会い系サイトをはしごするのである。
『お振込み有難う御座いました。ご入金の確認が取れましたので、【ご招待ID】を送ります。当サイトで最終登録を行って下さい。
【ご招待ID・anntamo-bakane】』
これでいいのだ。
安西義重は自分に言い聞かせた。
俺ももう52歳だ。
そろそろ本気で身を固めなければ固め損なってしまう。
10日前に送られてきたメールに乗って、軽い気持ちで3000円入金した。
それが、まさかお見合いパーティーにご招待されるとは。
俺ももう52歳だ
こういう出会いも、アリかもしれない。
こうして、義重はノコノコと結婚詐欺師達が待ち受ける甘くて危険な蜘蛛の巣に自ら飛び込んでいくのである。
ネット世界に張り巡らされた蜘蛛の糸は今日も獲物を待ち構えている。
⇩⇩別の視点の物語⇩⇩