あなたはドコに「 、」を打つ? 読点の処方箋
お世話になっております。素人以上小説家未満の管野光人です。
あなたはこんな経験がありませんか?
作文を初めて書いたとき、小説を初めて書いたとき、まず頭を悩ませたのが「 、」と記する「読点」ではありませんでしたか。
はい、私はあります。むしろコレがあるゆえに作文が嫌いでした。
私と同じくうなずいたあなたに、今回はこの「読点」を攻略していきます。
日本語における読点の文化
まず、ぶっちゃけます。いきなり結論。
むしろ、読点を打たなくてもOK
「そんなわけないじゃん!」とツッコまれたあなた。
たとえば、表彰状や感謝状または卒業証書など、どの賞の文面にも「 、」と「 。」の句読点がありませんよね。
賞状に句読点を使わないのは相手に敬意を表す意味があるからです。
もともと教養のある人は句読点がなくても文章を理解できていたのですね。
本来、日本語には句読点を用いる文化がありませんでした。
それが用いられるようになったのは明治10年または20年代からで、1906年(明治38年)に文部省が「句読点法案」で初めて使い方を示したといわれています。
この句読点が用いられたのは文学作品などの普及が早く、反対に新聞などは戦後になって句読点の普及が完成したそうです。
ですから普及の早かった出版文化では、読む相手に分かりやすい文章として読点が打たれている風潮になっています。
極端な例では「息継ぎ」の箇所で読点を打つという説までまかり通っている有様ですから。
では、正確に読点を打つルールはあるのでしょうか?
読点のルールを探ろう
前振りで偉そうな解説をしましたが、寡聞にして浅学な自分では読点の打ち方を探ることはムズカシイ。
そこで困ったときの共同通信社『記者ハンドブック』です。これはライターが正しい文章を書くためのルールブックみたいなもの。
そのハンドブックによると、
読点は文章を読みやすくしたり、記事内容を正しく伝えるために打つ。
息の切れ目や読みの間(なるべく20字以内)を考えて付ける。
う~ん、「息の切れ目」は賛同しかねますね。もっと明確なルールがほしいものです。
そこで頼った参考書籍は、岡本洋三著『日本語とテンの打ち方』です。
この書籍では、読点の機能を「言葉と言葉を分かつ」ことにあるとしています。
例題として、
7と3の2倍はいくらですか?
これは誤解されやすい文章ですね。
13と20の答えが考えられるからです。
この例題の答えを13の答えにしたかったら、
7と、3の2倍はいくらですか?
と読点を打つべきですよね。
もっと正しい文章にするなら、下記のように直すべきでしょう。
3の2倍と、7を足すといくらですか?
このように語順と読点を注意深く考察すれば、それが「筆力」の向上に繋がるようです。
分かつ読点の5種類
さらに言葉と言葉を分かつ読点には、5種類の効果があるとされています。
①時間の経過に用いる読点(「そして」の後に時間経過を盛り込む)
そして、彼の家に行った。
②係り受けに用いる読点(「一週間」の後の言葉に係らないのを示す)
それから一週間、家に隠れていた。
③言葉の強調に用いる読点(「かならず死ぬことを」の言葉を強調する)
「かならず死ぬことを、忘れるなかれ」
④伝達事項を分かつ読点(「壁の警句」の引用と、個人の行為を分かつ)
という壁に警句があったが、私は「今日はその日じゃない」と書き換えた。
⑤リズムに用いる読点(リズムを取るための読点とも考えられる)
けれども、姿の見えぬ彼を思うと、想像が復讐するように身が震えた。
もちろん、上記であげた5つの例題でも読点を用いずに書けます。
そして彼の家に行った。
それから一週間は家に隠れていた。
「かならず死ぬことを忘れるなかれ」
という壁に警句があったが私は「今日はその日じゃない」と書き換えた。
けれども姿の見えぬ彼を思う。すると想像が復讐するように身が震えた。
読点を究めて文章を磨こう
前項の5つの他にも、長い修飾語が2つ以上あるとき、その境(首)に打つとか、語順が逆順の場合に打つのもあります。
「死は忘れない、今日を生きるために」
このようなセリフのほうがケレン味があって面白いですよね。
あなたがお硬い小説家を目指すなら構いません。しかし、読む人の心を震わせる物語作家を志すならば、読点を究めるのは心強いストラテジー(戦略)になることは疑いありません。
おそらく、読点から読点、句点から読点までの文字数は20が理想的らしい。それも考慮に入れて読点を追求してもいいかもしれませんね。
最初に「読点は打たなくてもOK」と示しましたが、その逆も真なりです。
最後に極論。
読点はドコに打っても構わない。決めるのはあなたです。
この読点を攻略することによって、あなたオリジナルな文体が開発できるかもしれません。
ぜひ、読点をあなたの武器にしてください。
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