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偶然、出会えたような気がしただけだったよ

 「電波」という曲をこの活動が始まった時に作った。
 友達と僕、4人でラジオをやる、そのエンディングにちょっとしっとりした曲が欲しくて書いた。
 フルでその曲はYouTubeに上がっていないけど、ツイッターに上げていたので貼っておきます。


 ちょうどこの曲を書いたころ、名声優、藤原啓治さんが亡くなった。
 アニメを見たことがある人なら誰でもその人の声を聞いたことがあるだろう。
 特に、アニメ・クレヨンしんちゃんのひろしの声はとても国民的で印象に残っている人も多いと思う。
 
 その訃報はとてもショックだった。
 子供の頃から聞いていた声、大人になってからも、FF15のアーデン、銀魂の服部全蔵、Dr.stoneの百夜。大好きなキャラクターの声がもう聞けない。それが本当に寂しかった。
 Twitterをみるとトレンドには「藤原さん」。タップするとアニメアイコンの匿名さんがたくさん藤原さんの思い出を綴っていた。
 僕はとても不思議に思った。

 この中の何人が藤原さんの顔を知っているのだろう?
 この中の役名ではなく藤原啓治の声としてアニメを見ていたのだろう?

 とんでもない数の言葉が4G回線のWi-Fiの電波を通して僕のスマホの画面に表示される。
 書いているこの人たちの顔なんか知らないし、僕だって藤原さんの顔がわかるかと言われるとわからない。でも、そこには本当に愛のある書き込みばかりがあった。
 名前も顔もよくわからない。でも声はよく知ってる。
 名前も顔も性格も知らない。でも野原ひろしなら知ってる。
 たくさんの人がそのことを知っていて、藤原さんが亡くなったことを悼んでいる。
 そこに表示される文字に向かって僕が思ったことをラジオや放送、インターネットに絡めて綴った歌が、こういうときだからのEDテーマ、「電波」だ。

 明け方に見た空 無数の電波が突然みえた
 名前も知らない人たちが心に消えた
 偶然、出会えたような気がしただけだったよ
辺り見渡せば、一面に季節巡り
顔も知らない人たちが胸に消えた
偶然、出会えたような気がしただけだったよ

どんなことも「偶然」、この文章を偶々読んでくれているあなたに会えたことも偶然だし、僕は「運命」や「必然」を信じていない。だから「偶然」この言葉を選んだ。
こういうときだからのメンバーが全員動画編集だとかができるのも偶然、おしゃべりが好きなのも偶然、僕がギターを弾くのが好きなのも偶然。この悲しい時間の中で、偶然楽しいことが見つかった。

死ぬまであと50年として、あとどれだけの偶然に出会えるだろう。

文責・加藤


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