ドラゴンをぶった斬るだけの。
https://www.1101.com/n/s/gakkou_event_ukiyoe2019
浮世絵ひらがなトークに行ってきた。
普段から浮世絵に馴染んでいたわけではない。
写楽の役者絵、北斎の富嶽三十六景など知っているものの、
深い造詣は無かった。
なんとなく面白くなりそう、くらいの気持ちで臨んだイベントだが
ある絵師の2枚に強く惹きつけられることになる。
「宮本武蔵の鯨退治」
まず目に映るのが、水玉模様がおしゃれな鯨。
その背に乗り、今まさにトドメを刺さんと刀を突きたてる剣豪宮本武蔵。
巨大さを表現するために紙を3枚重ねるという念の入れようである。
「文覚上人」
滝行中の僧侶。元々は武士だったらしい。
眉をしかめ、歯を食いしばり、下唇を噛み、
流れ落ちる滝に耐える必死さが表れている。
絵師の名は歌川国芳。
江戸時代後期を生きたその人の絵からは
ちょっとやりすぎじゃないですか、と言いたくなるくらいの
躍動感、カッコよさが感じられた。
クジラに刀を突き刺す武蔵からある漫画を連想していた。
「ONE PIECE」の尾田栄一郎氏の短編で、あらすじはほとんど覚えていない。
見開きで侍がドラゴンをぶった斬る。ただそれだけなんだけど
その迫力が今も忘れられないほど今も強く印象に残っている。
見る人の度肝を抜く強い表現を描く、という点で
現代日本の漫画家と江戸時代の浮世絵師は共通していた。
浮世絵は今でこそ美術館に額縁入りで展示されているが、
元々は美術品ではなかった。
庶民が家に飾ったり、参勤交代のお土産として、
気軽に楽しめる娯楽として大衆に消費されていた。
浮世絵師は競争相手も多い。
単に画才がある、技術的に上手なだけでは
他の絵師を抜きんでることはできなかった。
国芳は長い間不遇の時代を模索し、
やがて彼自身のオリジナリティを築き上げていく。
古典とは決して古臭いものではない。
その時代を生きる人々にとって常に最先端だった。
古典を触れる楽しみは最先端に触れる楽しみでもある、と考える。