パロディスター 製作日誌②
みんな、ドキュメンタリーって好き?俺はあんまり好きじゃねえんだ。それじゃ、劇場で会おう。
俺は照れ臭そうにそう呟くと、マルボロに火を点けて深く吸い込んだ。
吐き出した煙が真っ黒な夜空に溶けてゆくのを見て、故郷の友のことを思い出した。
そうあれは、学校から離れた夜の公園で…
え、ちょっと待って!あれ?おかしいぞ?なんか急に苦しい、胸が痛い、何かに焦がれるとかではなくシンプルに激痛が、と思い左胸を触ると直径15mmほどの穴が空いて血がじゃんじゃん吹き出していた。
俺はゆっくりと振り返るとそこにはサイレンサーが装備されたグロッグ17を構えた”パロディスター”のプロデューサーが立っていたのだ。
拳サイズの吐血をした俺は膝から崩れ落ちた。その様子を見たプロデューサーは遠巻きから少し笑って、こう言った。
「監督、なんぼなんでもトガりすぎなんでいい加減にしてくださーい」
俺は血で塗れた手でマルボロを吸う。いやだってドキュメンタリー映画ってなんか辛気臭いじゃないっすか。貧困とか差別とか大変なのはもちろんわかるし、自分の知らない世界で起きていることを知るのはとても大切だけど。
でもしんどいっすやん、そういうの2時間くらい観るとけっこうバッド入りますねん、わし。
ですが!パロディスターという作品はものごっつ爽快です。この作品を作るに至った経緯なんかも本編で全て語られます。っていうか監督である僕が自分でべらべら喋ります。なんてわかりやすいんだ!
なので僕のようなドキュメンタリー映画があんまり得意ではない方にも楽しんでいただけるかと思います、73分の”なげえYoutube”だと思ってもらって大丈夫です。
説教くささゼロ、退屈させない、体感45分くらいじゃないかな、まじでまじで!だからみんな新宿Ksシネマに、
と言ったところで、ほとんどフィルターになったマルボロが俺の人差し指と中指を焼いた。だけど熱さを感じれるほどの意識なんてもう残っちゃいなかった。
誰かの吐瀉物を啄んでいるカラスが首を上げ、俺に向かって京都弁で鳴いた。
「兄はん、ひょっとしてもう書くこと尽きてもうたんちゃいますー?」
そんなわけねえだろ、劇場で待ってる。
7/8[sat]-7/21[fri] 新宿K's cinema パロディスター 前売り券も発売中です。