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パロディスター 製作日誌③

ねえ、これ誰?めっちゃ連絡とってんじゃん。
夜中に電話してるとか、めっちゃ怪しいんですけど。
は?別に彼女だから携帯くらい見てもいいじゃん、プライバシーとか知らんし。
もう無理、最悪。別れる、ってか死ぬ。あんたも一緒に死んで。
あーもう意味わかんない、みんなあたしのことメンヘラとか言うけど、違うし。
ビョーキだから、診断書みる?
ねえ、ってか誰なの、この人、教えてよ、ねえ!

このマッド・アマノって、誰なの?


パロディスターのチラシを見た人の9割が聞いてくる、この質問。
出身が関西で、と言うと
”銀だこのたこ焼きってどう思ってるの?”
と同じくらいみんな聞いてくる。銀だこなんかみんな好っきゃろがい!
※冒頭に登場した地雷メイクで最近はシーシャにハマってるコンカフェ嬢はフィクションです。

はあ、しょうがねえなあ。
マッド・アマノって人は…

 ほらよ。

あのさ、おまえらみたいな小市民と違ってマッドさんはちゃんとウィキってんの。
ってか、それ。スマホ。調べろよ。おまえら月々1万いくらか払ってんだろ?
もう、らくらくフォンに変えろ、そんで余ったお金はwikimedia財団に寄付しろ。
実家のアカウントでNetflix観るな、ええ加減にSPINSで服買うのやめろ。
もう居酒屋でフライドポテト頼むな、MacBookに貼ったステッカー剥がせ。
日本のバンドだけを目当てにサマソニ行こうとすんな。
大型連休に彼女とteamLab行ったのをわざわざインスタに、

と口角に泡を溜めながら叫び散らかす僕の顔に冷たい液体がぶち撒けられた。
おい!どこのどいつだ!と僕は白目のなくなった眼球をぐるぐると回す。
すると、そこはポリバケツを持った”パロディスター”のプロデューサーがいた。
もう目の前にいる人物が誰かもわからず、善悪の判断もつかなくなり、人ではない言語を喚き散らかしている糞尿とホワイトガソリンに塗れた僕に向かって、

「監督、マッド・アマノさんのお話をよろしくお願いしますね」

とプロデューサーは言って、僕に似た化け物に向かって火のついたオイルライターを放る。
火種はホワイトガソリンに引火して辺りは一瞬にして火の海となった。
僕は自分の皮膚が焼ける匂いを嗅いで、人であった頃の記憶を思い出した。
そう僕は映画監督でマッド・アマノさんのドキュメンタリーを撮っていた。

あの頃はまだ20代で、毎月末に料金未納で携帯が止まっていた。
初めてマッドさんの家にお邪魔したときのことはよく覚えている。
家デカっ、外車あるやん、猫多っ、コーヒー美味ぁ、ほんで、ほんで、

マッドさん、めっっっっっっっちゃ喋るやん!!!止まらんやん!!

実際のところ”パロディスター”はマッドさんの一部を切り取ったに過ぎず
”マッド(ト)ーーーーーク”っていうドキュメンタリーが作れるくらいに、多種多様なお話をされてる素材が400GB(.mp4換算)くらいあります。150GBくらいは過激すぎて使えません。
マッドさんは一言で言えば、パワフル。
そいえば撮影終わりに二人でトンカツ食べに行ったりしたな。運動してるから足腰も強いし。それから、えーと…

と思っているうちに、燃え盛る炎の中で僕の肉体はこの世から消えた。
嗚呼、最後にマッド・アマノあるあるが言いたい。
肉は焼け、骨は黒焦げになり、血液は蒸発して、脳は溶け落ちた。
きっと今は”思念”だけが残り、ここに文字が形成されている。
マッド・アマノあるある言いたい。早く言いたい。
黒煙と意識が混じり合い、高く空に昇ってゆく。
それはインディーズ映画、それかもしくはドキュメンタリー映画の歴史が変わることへの狼煙となるのか、僕はそれを見届けることはできなかった。
だけど、マッド・アマノあるあるいいたい。はやくいいたい。


    マッドさん服いつもおしゃれー


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予告編はこちらから。

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