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グランメゾン東京の楽しみ方2
前回に引き続き、グランメゾン東京について勝手に感想と考察を述べるnoteです。
前回のnoteはこちら。
3話目はジビエ料理のコンクールに出るというお話で、生産者と料理人の関係性を伝えていました。
生産者も料理人も同じ職人なのでこだわりが強い人が多いです。ドラマの様に門前払いされる事も本当にあります。
自分の作っているモノの価値をしっかりと理解してもらいたいがための行動で、Amazonでポチッとしたらすぐに物が届く時代だと電話一本でなんでも手に入ると思ってしまう人が多いですが、実際に生産者の元へ行き話を聞いて現状や想いを共有した上で取引をしたいと思うのは当たり前の感情だと僕は思っています。
そして一度理解し合うと最強の支援者となってくれる熱い人たちです。
(福島の生産者に会いに行った時のもの。ネギ農家さん)
レストランに食事に行って生産者の話を聞いても、実際には料理にしか意識が向きにくい。当たり前といえば当たり前なのですが、僕たち料理人は生産者の方達がいて初めて料理が作れます。
だからこそ料理のその奥にある生産者の事をもっと知ってもらいたい。レストランは生産者と料理人とサービスマンとお客様、そして関わる全ての人が一つになって完成します。
料理人とお客様だけでは絶対に完成しません。
その事をグランメゾン東京では丁寧に伝えてくれていました。本当に嬉しくなります。
台風で多くの生産者も被害を受けています。早く日常に戻れる事を心から応援しています。
試作試食はミリ単位で調整する
前回のナス同様、鹿でも調理法別で試食をしていましたね。ある程度慣れている素材ならあそこまでしないかもしれませんが、料理人が今までに味見している食材のパターンはあの映像の比ではありません。
一つの素材でも産地やサイズ、時期でも変化する。同じ産地で同じ時期でも個体差で味は違う。生産者と同じ様に料理人も自然と戦っています。
だからこそ何度も何度も味見をする。
尾花さんが道端の草や花をよく味見していますよね?あれは全て料理へと繋がっています。息する様に味見をして記憶に残しているのです。
そしてその記憶がふとした時に繋がって偉大な料理が生まれるのです。
ただ食べるのではなく、その時の味や香り、温度や濃度、舌触り、色、気温や気候も影響するので記憶します。食べるという事に全神経を集中します。
そこには美味しい美味しくないよりも全ての情報をインプットすべく探りに行く。
口に入れた瞬間から余韻までの流れを把握する。その作業を全ての素材に対して行うのが料理人の日常です。(僕はそうです、なので食事と試食は分けてます)
肉の火入れは一度単位で違いが明確なので、本当に繊細にやります。ドラマでも炭火、フライパン、オーブン、オイルと加熱の媒体が違いました。媒体ごとの丁度良い温度帯と加熱時間、その後の処理を決める。
更に組み合わせる付け合わせやソースも選ぶので、無限大の可能性から自分の一皿を生み出す作業なのです。一ミリ単位でも足りない繊細な世界かもしれません。
(鳩、カカオ、麦を組み合わせた料理。藁で燻した鳩をカカオと麦のオイルで合わせた、血の旨みを活かす苦味を使った料理)
是非ではなく価値観の違い
尾花と丹後は料理の方向性が違います。ドラマなので対比になる様に真っ直ぐに美味しい料理と最先端の組み合わせと驚きのある料理を分けていますが、どちらが良いではなく、お互いに引き立て合う料理だと思います。
なので見る人達には是非ではなくどちらもそれぞれに正義であり素晴らしい料理だと思ってもらいたいです。
クラシックもモダンも大切なのです。
今回はgakuの料理にフォーカスを当てますが、あの料理の組み合わせに僕はすごく意図を感じます。
鹿肉の野性味にセップ茸を合わせる。セップはフランスでは生の新鮮なものをサラダで食べたりします。(衛生的かどうかはさておき)
そこにヘーゼルナッツとビーツを合わせるのは、ナッツのキノコとの相性の良さにビーツの土っぽさを合わせています。ここには鹿ももちろん相性が良く、鹿の育った環境への想いも感じられます。
マリーゴールドはハーブの青さとは別にタバコの様なスモークさも持っているので、キノコやビーツの土っぽさとの相乗効果が感じられます。
かんずりには柚子が入っており柑橘の香りもあるのがヘーゼルナッツやマリーゴールドのハーブの香りとリンクし、全体に辛味の刺激と発酵調味料の旨味も足される。
バラにはフローラルな香り以外にシナモンやクローブといったスパイス香もあるのでそこを合わせている様に感じます。(食べた事ないけど)
料理の組み合わせの意図を感じられると更に楽しくなるので、料理人は是非そうゆうところにも意識を向けて欲しいですね!
働き方の自由を認める
前回のnoteで書きましたが相沢の働き方を認めているのがとても素晴らしいと思います。料理人はレストランで働いてこそ!っという風潮はありますが、時代の変化と共にその価値観も変化してきています。
もっと多様性のある業界になって欲しいのでこの演出は本当に嬉しいですし、お客様と同じくらいスタッフの幸せに意識を向けているところがこれからのレストランにより一層必要な部分だと感じます。
そして一番興奮したところはグランメゾン東京のメニューです。全ての料理人が感動したと思うのですが監修しているカンテサンスのスペシャリテが2品も入っています。(サブレも入れると3品)
カンテサンスに食事に行ったことのある人なら分かるのですが、山羊乳のババロアとメレンゲのアイスクリームは長年続けられているスペシャリテです。
僕も食べたことがありますが初めて食べた時の衝撃は今でも覚えています。
そしてサブレも合わせる食材は変わりますが必ず出てくるアミューズ。
このメニュー構成を見ただけで心底感動しました。レストランへのリスペクトが溢れています。是非カンテサンスへ食事に行ってもらいたいです。(何者w)
次回はモンブランが波乱のきっかけになりそうです。デザートはレストランで一番大切と行っても過言ではありません。それをどんな風に描くのか?今から楽しみでなりません。
こんな風にドラマを少しでも楽しく、そしてレストランの事を知ってもらえる様に。レストラン業界へ少しでも貢献できればと思います。
次回も気ままに書きますので、是非見ていただければと思います!
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