食と地方を繋ぐ新しいチームの作り方。
地方創生という言葉が使われてから、どのくらい地方は創生されたのか?
食の世界でいえばダイニングアウトというプロジェクトが地方から様々な事を発信している。
『DINING OUT』は、各地域で野外レストランを開催する 『ONESTORY』主催のプロジェクトです。
トップシェフやクリエイター、地元の方々と創り上げ、日本の新たな愉しみ方を具現化します。
そして、それを東京で再現する『SPECIAL SHOWCASE』、世界へ発信する『JAPAN PRESENTATION』、
この3つの「DINING」を通して地域をクリエイトすることが
『ONESTORY』の描く新たな地域の創造です。
全国各地で現れる数日だけの野外レストラン。間違いなく日本で一番素晴らしいプロジェクトで、各地域の方達がスタッフとして参加し、地元の食材を使ってシェフが料理を作る。僕自身いつか参加してみたいプロジェクト。
ただ、あえて僕の考えを言わせてもらうと、もっと地域と密接に地域から世界に発信する形が作れると思っている。そして若い料理人の力を発揮して可能性を広げることも同時に出来るのではないかと。
端的に言えば、
(期間限定の)土地に根ざした新しい複合エンターテイメント空間を創る。
ということだ。(期間限定としたのは場所ではなく料理人の話。)
僕は実際に体験した中で、東京で料理を作る難しさと可能性の低さを実感した。10年前とはお店の数も違い、料理人が注目されるのが難しい時代になったと感じる。(注目されることはできるが圧倒的に難しくなっている)
そして食の力だけでは戦えない時代にもなっている。これから先、料理人と料理だけで人が呼べる時代は終わりへと向かう。
ではどうすれば良いのか?
誰もやっていない場所で、誰もやっていないプロジェクトを料理人の力を最大限活かす形で提案できれば、かなり面白いものができると思っている。
僕は料理の力は偉大で、これからも可能性が大いにあると思っている。ただそれは料理人の力だけでは残念ながら発揮されない。現在の料理業界の視野だけではその可能性を最大化できないからだ。だからこそ異業種との掛け合わせでそのポテンシャルの最大化をはかり、世の中に多くの影響を与えられるようにしたい。
食は生きるために必要なものと嗜好的なもの、より健康になる為のものなど様々なものがある。ただ、料理人が関わっているのは嗜好的なものが多く、活躍の場が限定的だ。だからこそもっと多くの食に関わる現場で料理人の力は発揮されるべきで、それによって様々な食に関わる業界がその先へと発展できる。そして料理人が自分の店を持つこと以外の選択肢を生み出して、自分たちの可能性を切り開いて行く時代になると信じている。
その為に僕は少しでも多くのチャレンジをして、次の世代の若者たちに挑戦の場を作って行く。かつて先人たちがフランスへの道を切り開いたように、僕はレストラン以外の料理人の活躍の場を拡げ、料理自体の可能性を拡げて行く。
その一つとして最初に書いた
(期間限定の)土地に根ざした新しい複合エンターテイメント空間を創る。
を具体的にどう進めるか。
僕は生産者を巡る旅を30都道府県以上回っているが、どの地域にも使われていない物件や土地がある。そしてそうゆう場所ほど良い素材と良い生産者、自然が溢れている。土地の魅力はあるのに知られていなかったり、伝え方を知らないが為に広まらない。地方のポテンシャルが生かし切れていない代表例だ。
この場所を活かす方法が必要で、そこには食の力が絶対に無くてはならない。しかし料理だけでは人を呼べない。料理に興味のある人にしか刺さらないコンテンツはこの先厳しいからだ。(理由は色々あるが割愛)
では何と相乗効果を生むかというと、やはり宿泊施設だと思う。昨年龍崎翔子さんと出会ってからホテル業界の事に興味を持ち、お仕事もご一緒させて頂いた(現在は休止中)ことから、ホテル業界の課題感も見えてきた。圧倒的に料理人が足りないのと、特に小さなホテルで料理をちゃんと作りたいと思っている料理人が全然いない。これは大きな可能性を失う勿体ない事だと思う。
宿泊施設×料理人×地域性
この掛け算には多くのものが必要で一筋縄ではいかないかもしれない。ただ、今後地方の時代が確実にくる中で、この組み合わせは絶対に必要なものだ。これが高レベルで体現されているのが里山十帖だ。
僕は里山十帖が大好きで昨年だけで2回訪れた。とにかく穏やかな時間が流れる空間。地域のものを使った滋味深くも洗練されたここでしか食べられない料理。圧倒的な癒しをもらえる温泉。究極の贅沢だと思う。
ここはある程度余裕のある人向けだと思うが、同じような場所を各地方でできるのではないか?地方の特色を活かした場所ができるはず。
ここでのキーマンはやはり料理人だと思う。
今料理人の出口は東京でオーナーシェフになるのが一番良い出口のように思われている。だからこそ皆自分の店を出す。(大半はパトロンがいるが)でももう東京はいいんじゃないか?地方の方が圧倒的に魅力がある。でも料理人はレストランしか作れない。それ以外のことをほとんど学んでいないからだ。だからこそ他の業界に橋をかけることで新しい化学反応が生まれる。
東京で料理を作るということは、世界中から集まる食材を使い、自分らしさをアップデートし続けないといけない。それは本当に大変な作業だし無理がある。逆に地方は食材の縛りが強い。でもだからこそそこでしか作れない料理になるし、季節で明確な変化を生み出せる。必要以上の変化も求められない。ここが料理人にとって良いポイントで、健全に美味しい料理を作れる環境にあるということだ。
もちろんその中で変化や自分らしさは必要だが、素材に寄り添った料理が持続可能だと思う。消費されない料理人を守れる環境。その上で料理以外に宿泊施設でのメリットや旅する環境(美しい自然や観光地)が掛け合わさると、そこへ行く理由が増えていき、様々なジャンルの人を呼び込める。
その土地が好きな人には新しい料理の発見があるかもしれない。料理が好きな人には宿泊施設の楽しみが増えるかもしれない。宿泊施設から興味を持ってもらい、その土地のことや料理が好きになるかもしれない。
サービスをする側も、それを体験する側も、両方がボーダレスに関わる時、それぞれが新しい顧客を開拓するキッカケになる。
料理人だけで何かをしても料理好きにしか届かない。旅行好きな人に料理の新しい一面を知ってもらえない。でも複合的なエンターテイメントな場所として、多くの人に認知してもらうことで、その垣根を超えられると思っている。
冒頭で話したダイニングアウトは数日間だけで、主に料理人のイベントだ。価格も高いので、顧客の層が決まってしまいがちだと思う。だからこそ料理好きも、旅行好きも、ホテル好きも集まる場所を作ればいい。話題性を増やし、多くの人に来てもらう事で、それぞれの良さを伝えるべきだ。
これはサービス体験を作る側だけでは無く、広告やメディアも巻き込みたい。日本の地方を盛り上げる事で、世界に対抗できる日本ならではのコンテンツにしたい。
2021年に向けて必ずやります。まだ何も決まっていないけれど。料理人がこのコンテンツに関わることがステータスになるように。地方から発信することがスタンダードになるように。料理人の多様性が生まれるように。
まだまだできることは無限にある。その可能性を示すためにも僕はレストランでは無く、自分にしか出来ない多くの人を巻き込んだプロジェクトをやる。
旅をするだけでも、宿泊するだけでも、料理を食べるだけでも、体験の価値としては低い。いまの時代に合った体験価値を作るにはクロスモーダルな体験が必要不可欠。料理人だからこそ関われるプロジェクトがあることを、もっと多くの若い料理人に知ってもらい、自由な発想で新しい仕事を生み出してもらえるように。
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