人間はどのようにし自分を理解しているのか?
人間は自分の感覚だけではなく、他者の評価を通じて自分自身を理解している
人間は自分1人で自分のことを理解するのではなく、他者を通じて自分自身を理解していきます。そのため、自己は場面によって形を大きく変え、その集団に適した自分を演じることにより、集団から疎外されないようにしています。
「自己(セルフ)と「社会的自己(ソーシャルセルフ)」
僕たちは、「自分」という人間をどのように理解しているのでしょうか?
他者から見られているあなたと、あなたが感じている自分自身について「ズレ」はないでしょうか?
そもそも、人間は自分自身を理解する時に、二つの視点から自分を理解していきます。
まず一つ目が、「自分とはこのような人間だ」と自分で自分を理解する(セルフ)です。
この自己は、性格や能力、容姿について知覚しやすい傾向を持っています。
そして二つ目が、他者が自分を評価したものを基準として得られた、社会的自己(ソーシャルセルフ)です。
この社会的自己は、所属欲求を抱く社会的動物の人間に大きな影響を与えます。
ここでは、人間がどのように自己を知覚しているのかを理解するとともに、自分自身を理解する過程が、集団社会で生きる人間にどのような影響を与えるのかを学び深めていきます。
自己は場面によって使い分けられている
僕たちは、他者との比較によって自分自身を理解しています。
学校の成績を思い浮かべてみてください。
成績は平均点によって自分の位置を把握するので、もしあなたの成績がクラスの平均点だったとすれば、あなたは「自分は中くらいなんだ」と理解することでしょう。
しかしながら、あなたが中の上位に位置していたら、あなたの自己知覚は「平均」から「中の上」に変化します。
このような自己は、周囲の状況によって大きく形を変えます。
これは、数値だけに当てはまることではなく、性格や印象などにもいえることです。
僕たちは、接する相手や場面によって、その集団に合った自分の姿を知らず知らずのうちに演じています。
家族の前の自分と、職場での自分が違う人が多いですが、家族の前の自分も、職場での自分も、どちらも本当の自己だといえるのです。
人間が他者と比べて評価しようとする理由
人間は他者と比べることで、自分自身を評価しようとします。
それは、自分の意見や態度が妥当であるかどうかを判断しようとするためで、その評価を正確に把握することは、社会に適応して生きていくうえで、非常に役立ちます。
自分を正確に把握できていなければ、周囲に迷惑をかけ、ダメな人間というレッテルを貼られてしまう可能性も出てきます。
この他者と比べることで自分を評価しようとする根底には、人間の自己高揚動機(優れた存在でありたいと思うこと)が大きな影響を与えています。
自己高揚動機を高めるためには、他者からの良い評価をもらわなければなりません。この動機が働くため、人間は他者からの評価に敏感になってしまうのです。