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【柏崎】地域で挑戦し続ける。外柔内剛な池田工務店のこれまでとこれから
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新潟県柏崎市にある、 有限会社池田工務店(池田建築設計事務所)。創業75年、昭和22年以来柏崎のまちと建築にひたすら向き合い続けてきた。空き家や開業、移住についてなど、池田工務店には日々多くの相談事が集まってくる。今回は代表取締役・池田 民樹さんと専務・池田 一峰さんにお話を伺った。時代とともに柔軟に変化しながらも、まち・人・建築物を大切にする根本的な姿勢は曲げない。まさに「外柔内剛」な、池田工務店の魅力に迫る。
(聞き手・小林紘大/小野寺 美咲)
池田工務店の根本にあるもの
◎建物は自分の子どものようなもの
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専務・池田 一峰さん(右)
民樹社長 手がけた建物は自分の子どものようなもの。ですから、メンテナンスも含めて、お客様とは一生のお付き合いになります。
池田工務店では長年、立地やご家族構成、その暮らしに合わせた地域密着型の住まいづくりを行ってきた。
ブランディングされた画一的な建物ではなく、そこで営まれる暮らしにあわせた住まいを形にする。柏崎に残る昔の日本建築は、現在の一般的な建物に比べて複雑な構造になっているものが多く、経験と知識がなければ手を入れられないため、その技術力が大いに発揮されている。
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長岡や上越など
幅広いエリアで活躍している
地域によって、積雪量は50センチ〜数メートルにまで変化する。さらに海沿いは想像以上に風が強い。そのため、屋外に取り付けた換気扇フードの形状ひとつで、家が機能しなくなってしまうことも。
特に屋根・軒・外壁の素材選定には、十分な知見が必要となる。地域の風土や状況を知り尽くした池田工務店だからこそ、日本海の厳しい寒さの中であっても快適で、なおかつ木の温かみの感じられるこだわりの家を形にできるのだ。
◎地域に恩返ししたい
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民樹社長 地域にお世話になってきたから、恩返ししなければならない。そう思って、やらせてもらっています。
池田工務店の役割は、住まいづくりに留まらない。社長は柏崎刈羽建築組合、柏崎商工会議所、新潟県建設組合連合会などの長役として勤めてきた。さらに2004年の新潟県中越地震、2007年の新潟県中越沖地震でも地域のために奔走。市の窓口と連携し、専門家として市民からの住宅被害の相談を受けたり、地域の大学生たちに町の状況を伝えていく取り組みなどを実施した。現在では、一般社団法人全国空き家アドバイザー協議会柏崎支部長に就任している。
昔から、いち工務店の域を超えた活動を重ねてきた。だからこそ、現在の池田工務店は柏崎の建築全般の相談窓口としても広く知られ、地域の精神的支柱となっている。
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後述するまちづくりの活動など、「地域に恩返しする」姿勢は社長から専務の一峰さんへと色濃く受け継がれている。
◎寄り添うだけでなく「柏崎とともに生きる」
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一峰さん うちに勤めてくれている大工は、18歳から住み込みで修行していました。私が小さい頃は、一緒に食卓を囲んでいましたよ。社長が第一線で現場に出ていた頃から鍛えられていた、一番のお弟子さんです。
民樹社長 昔は新潟中から、住み込み希望の若者が私のところに来てくれたんですよ。皆、3年は住み込みで面倒をみていました。しかしそれが、工務店の息子さんが多いんですね。大抵一人前になると実家に就職してしまうから、うちで働いてくれるわけではなかったのが、少し残念でした。
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社長自身、先代の後を継ぐ前に住み込みで修行に出ていた時代があった。そこで培った人生の礎を、若い職人に還元していきたい……そんな気持ちで、何人もの育成に励んできた。
たんに「柏崎に寄り添った仕事をする」のではない。長年この地域で、住民の皆さんとともに力を合わせて生きてきたからこそ、持てる視点や強い関係性がある。「地域密着型工務店」という言葉は近年業界でもしばしば使われる表現だが、おふたりの話から、その密着度の高さが伝わってきた。
一峰さんの入社とこれまで
◎「スーパーマン」な父の背中
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社長である父の背中を見て育った一峰さん。新卒でゼネコンに入社後、6年間現場管理を行い、平成29年の秋に池田工務店に就職した。
一峰さん ゆくゆくは後を継ぐことを考えると、正直プレッシャーを感じたこともありました。というのも、私がいうのもなんですが、社長はかなりの「スーパーマン」ですから。
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工務店の仕事や地域の活動を、一峰さんが入社するまでほとんど一人で担っていた社長。バイタリティやスキルの差を感じ不安になった、と一峰さんは苦笑する。
一峰さん 社長から後を継ぐように言われたことはありません。それでも、就活の時には建築の道に進むと決めていました。今思えば、親戚や周囲からの刷り込みによるものかもしれませんね。
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先述の通り、社長は昔住み込みで修行し、池田工務店の2代目として後を継いだ。背中を見て育った一峰さんの中にも「いつか後を継ぐとしても、まずは修行」という思いがあり、新卒での就職先にゼネコンを選んだ。
さまざまな工事を経験し、月日は流れた。社内での評価も高く、面白さもあった。「このままゼネコンで勤め続けてもいいのでは」とも考えたという。しかし、一峰さんの中にはずっと「柏崎でチャレンジしてみたい」という思いがあった。
一峰さん 地元でチャレンジしたい。どうにか盛りたてて、柏崎を次の世代に繋いでいきたい。そんな思いがありました。働きながら色々な将来を考えましたが、徐々に「柏崎で働こう」と、気持ちが固まっていったんです。
◎ゼネコンとのギャップを埋める日々
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ゼネコン時代についても詳しく語られている
入社してから、取り扱う建築物のギャップに驚いた。ゼネコンでは公共建築など大規模な現場を手掛けており、木造建築を扱うことはほとんどなかった。そのため専門的な知識や技術を身につけなければならず、「もはやこれは別業種だ!とすら思った」と一峰さんは当時を振り返る。
さらに、コミュニケーションに関する違いも痛感した。ゼネコンでは設計事務所、設備担当など企業との連携がほとんど。しかし池田工務店では、個人のお施主様と話を進めていくことが多いため、アプローチの仕方が全く違う。
慣れない業務の中、その度に出てくる不安を解消するために、技術と知識が必要だった。まずは知識をつけるために書籍やネットで情報収集し、インプットした。そして社長のコミュニケーションの取り方を見て学び、自分の中に落とし込んでいった。
◎人間にできないことは、ない!
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笑顔で答えてくれた一峰さん
一峰さん 当時を振り返って「仕事で大変だったこと」と訊かれると、毎回大変なことにぶつかっていたので、あげきれません(笑)。これは、日々新しい仕事の相談をいただく今でも変わりませんね。ひとつクリアしたら、また次の壁が立ちはだかってくるというか。
池田工務店では近年、住宅の新築・リフォーム・修繕だけではなく、事業用物件に携わることも増えてきた。
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柏崎市にあるサウナ宝来洲(ホライズン)
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「kito(運営:NPO法人aisa様)」を設立
事業によって異なる法律やモジュールを理解して設計し、許可を取った上で形にするのは、大変な業務である。しかし、これまでに携わったことのない案件でも、組合から「池田さんならできる?」と相談があったり、個人でお問い合わせをくれるお客様がいる。
一峰さん やったことがない場合は、とにかく勉強して自分の中に知識を蓄えます。基本的に「人間、できないことはない」と考えていて。正しい知識と資金と時間さえあれば、お客様のご要望は実現できると思っています。
まずは何でも、やってみる。その中で、建築の基本の流れである【勉強→設計→申請→施工】をしっかりと押さえる。業務範囲を狭めずに前向きに挑戦し続ける姿からは、柏崎全体を引っ張っていくという覚悟が窺えた。
さらに、住まいづくりのかたわらでまちづくりにも力を入れている。
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女子美術大学・女子美術大学短期大学部とともに
アートイベント「たんねのあかり」を開催
店舗を開きたいという方の開業支援や、柏崎を盛り上げるためのチーム発足など。他にも各方面で、柏崎の可能性を広げ次世代に繋ぐためのチャレンジを続けている。
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谷根について語る一峰さん。移住や別荘利用にもいい。
関係人口を増やしていきたいと話してくれた
池田工務店のこれから
◎建築で豊かな暮らしを創造する
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民樹社長 昔は、こちらが作ったものをお客様が受けとってくれる時代でした。しかし今は、お客様が欲しいものを作って、選んでいただく時代です。私は、職人気質なもんで。息子を必要以上に褒めるわけじゃないですが、不透明で不安定な時代のなかで、必要な情報をていねいな言葉で伝えて、一人ひとりに誠意を持って対応していると感じています。
変化の激しい現代。環境や社会情勢が移り変わる中で、住宅に求められる役割も急速に変化し、多種多様に広がっている。
一峰さん 地域に根ざす私たちのような小さな工務店でも、「今あるものを大事にし続ける」だけではいけないと思っています。新規のお客様に向けて住まいや暮らしの提案ができるよう、考え続ける。そのために今、社の理念の整理などを進めているんです。
池田工務店が新たに掲げる理念は「建築で豊かな暮らしを創造する」。建物の完成をゴールにせず、そこから何十年も続いていく暮らしがより良いものになるように。お客様の生活に合わせたご提案を徹底していく。
取材を通して、池田工務店の根本にあるものを知ることができた。激動の時代の中でも根本は決して変えることなく、お客様からのご要望は柔軟に受けとめていく。そしてこの柏崎から、建築で豊かな暮らしを創造していく。池田工務店はこれからも、前向きに挑戦し続ける。
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コウダイコメント
新潟家守舎とも「AMINARI」で何度かコラボレーションの実績もある池田工務店さん。現在、「コウダイ企画室」で住宅事業のカイゼン業務支援に入っています。今後の進化にもご期待ください☻
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![小林紘大|新潟家守舎|じぶんのまちをじぶんのことに](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39062224/profile_8ab48fbb22cc0e8f02709c51b45fb233.jpg?width=600&crop=1:1,smart)