音色調整を使う際に気をつけていること
バンブラPの作曲や耳コピにおいて、より凝ったものを作りたい際に使う音色調整についての解説していきたいと思います。
普段から「これどう鳴っているの?」と言われることが多いので、記事にしてみることにしました。
よりこだわった音源を作りたい方向けの記事となっております。
※12/27 リコーダーの記載にミスがあったので追記しました
音色調整とは
バンブラPにて左下のツールボックス→右上の音色調整を選択したものとなります。A・Bという表示があるように、これを小節の好きなタイミングで配置できるものとなっていて、その設定を[AB設定]からすることが可能です。
各機能について
設定を選択すると、以下のような画面が出てきます。
・エンベロープ
・モジュレーション
・エフェクター
・フィルタ(EQ)
この4つの項目がありますが、これを一つ一つ丁寧に解説していきたいと思います。
エンベロープ
エンベロープを選択すると、以下の画面が出てきます。
上画面に赤い曲線と下に何やらアルファベットが出てきますが、これについてざっくり解説をすると音そのものの鳴り方を調整するものとなっております。
Aはアタック、Dはディケイ、Sはサスティン、Rはリリースとなっており、それぞれ
・A → 最初の音の強さ
・D → 音が弱くなるまでの速度
・S → 伸ばした音がどれだけ弱くなるか
・R → 音が止まった時どれだけ伸ばすか
となっています。Aは音の強弱、DはSに移行するまでの時間、Rは余韻の長さと考えると分かりやすいです。
これをどう使うかという考え方ですが、例えばピアノを弾く際、鍵盤を叩く速度でピアノの音の強弱は決まります。アコースティックなものだと鍵盤を押した際、ハンマーで内側の弦を叩いているので、必然的に弾く強さで音の強弱が変わります。
この時の調整をA(アタック)と考えると分かりやすいかもしれません。優しく弾くなら低めに、強く弾くなら高めに設定すると、それらしい音になります。
次にD(ディケイ)ですが、こちらはギターが分かりやすいと思います。
ギターを弾く時、力が入るのは最初の瞬間のみで、後は弦そのものの振動が音になります。この音の沈み方がいわゆるDです。
S(サスティン)はこの音が沈み切らないようにするために調整する部分です。電子楽器ではここを調整した方が音として綺麗に伸びることが多いです。
この2つを上手く使うと、エレキギターなどに厚みがかけることができます。
R(リリース)は聴いてみると分かりやすい方だと思いますが、音の残響です。楽器によって好きなように設定しても全然構いません。敢えて使い分けるならば、シンフォニックな曲なら下げて伸びを豊かに、ロックやエレクトロな曲なら上げてメリハリをつける、みたいな感覚でいいと思います。
軽い応用例を挙げると、
・ピアノでA0にするとリバースピアノっぽい音に
・AB設定を使い分けつつA0と通常の音を分けることで一時的なクレッシェンドを作れる
・クラシックギターやバイオリンみたいな生音に敢えてエレキギターみたいな調整をすると、エレアコやエレキバイオリンっぽくなる
・Rを残すことで次への音の繋がりができるので、スラーができてふわっとした演奏になる
・R0とクロス(後述)を使った擬似和音
etc…
と、いろいろあります。
モジュレーション
モジュレーションを選択すると以下の画面になります。
色々な項目があって焦るかもしれませんが、ゆっくり理解していけばそんなに難しくはないです。
ここは音の動きを決めるところです。例えば上の図だと、バイオリンを弾いている時にゆっくり音が揺れる部分を再現しています(デフォルト)。
各項目を解説してから、上のバイオリンがどう鳴っているかというのを説明したいと思います。
各項目について
まず上の項目は、何を動かすか決めるものです。
動かせるものにピッチ、音量、ステレオがあります。ピッチは音程の揺れ、音量は音の強弱の揺れ、ステレオはLRのパン(音の位置)の揺れとなっております。
ステレオの場合だと波形が下に行くほどLで、上に行くほどRになります。
次に中央左の項目です。
HLDはホールドで、音が変化するタイミングの位置です。値を上げると開始が遅くなります。
DLYはディレイで、音が変化し始めてからどれくらいの時間で設定した値になるか、という部分です。HLDと違い、少しずつ変化します。
DEPはデプスで、音の波がどれだけ強く変化するかを決めます。19にするとわにゃわにゃした音になりますが、これを使ったテクニックをご存知の方も多いと思います。
SPDはスピードで、音の波がどれくらいのスピードで揺れるか、という部分を決めます。先ほどのDEP19と合わせると分かりやすいかも(0だとわ〜にゃわ〜にゃ、19だとワニャワニャワニャワニャみたいになる)。
次に中央右の項目ですが、これはどの波形を使うかについてです。見た通りの動き、といえばそうなのですが、丁寧に説明していきます。
まず一直線のものは、波形を平行にします。何も設定の変化が起きなくなるので、つまりモジュレーションをかけないという設定になります。
次にぐにゃぐにゃしたものは、波形をランダム波にします。ランダムと言っても、数値毎に一定の規則はありますが、不規則な動きをする音の楽器で採用されています(コトなど)。SPDを変えると波形のパターンが変わります。
次に波線のものは、波形をサイン波にします。一定の規則的な音の運動をするので使いやすいものとなっております。純粋に楽器の音色をブラッシュアップしたいのならここの調整が大切になると思われます。
次にカクカクしたものは、波形を矩形波にします。音の動きとしては特殊なもので、通常は主にシンセ楽器などで使用する波形です。ですがここの部分を巧みに使うと、音の半音をあげたり、擬似的にグリッサンドを作ったり、一楽器でLRにパンを振れたりします(後述)。
次に右上に坂道になっているものは、波形をのこぎり波にします。のこぎりの刃のように、例えばピッチだと音が徐々に上がって戻る、みたいな音になります。使いどころに悩みそうな波形ですが、弦楽器の響きに近しい動きなのでシンセで取り入れることがあります。また、いわゆる拡張音源(後述)を作る際に使う時があります。
最後の右下に下り道になっているものは、波形を逆のこぎり波にします。前述の逆バージョンです。こちらも前述と同じ使い方をする時があります。
バイオリンを例として
上のバイオリンの波形なのですが、こちらはステレオ・0-3-11-1・サイン波となっております。要約すると、左右にゆっくり揺れる音です。バンブラのプリセットではこのように、楽器の特性に合わせてあらかじめ設定されていることが多いです。
もちろんこれが全てという訳ではなく、自分で上手く調整すれば曲調に合わせた綺麗な音源にもなれます。
ここに加えてエンベロープも入ると、より音の作りが変わります。いろいろ試して、お好みの音を探してみるといいかもしれません。
エフェクター
エフェクターを選択すると、以下のような画面になります。
ここは音の効果を決めるところです。今使っている音をもう一つ使い、その2音を組み合わせた効果を使うことができます。
使える効果は以下の通りです。
クロス……2音を交互に鳴らします。そのため、一音一音の繋がりができて、滑らかな音の効果が付きます。
コーラス……コーラス効果を付けます。シンプルに言うと合唱の声のようなハーモニー感を付けるものです。原理的に詳しく説明すると、2音の片側はいわゆる微分音で、わずかに高い音を同時に鳴らすことで厚みを出しています。
エコー……反響効果を付けます。1音を鳴らしてから、少し間隔を空けて弱音を鳴らすという仕組みです。長押しすると音が重なります。
オクターブ……今の音から1オクターブ高い音を同時に鳴らします。倍音を作りやすいので、サウンドに厚みを持たせたい時に有効です。
数値は0〜20まで設定でき、音の補強などがしやすいです。またファミコンのような規則的な楽器の音だと効果を受けやすい特質があるので、こちらも拡張音源で使うことが多いです。
フィルタ
フィルタを選択すると、以下のような画面になります。
先に言うと、こちらは上級者向けの設定となります。
ここでは今鳴っている音のどの周波数帯域を強調したいかを決めます。
楽器には周波数の特性があります。ドラムやベースは低音域、ピアノやアコギは中音域、バイオリンやピッコロ、女性ボーカルなどは高音域です。
ここではその楽器における、音域の補強が可能です。イコライザーと言うとピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。
こちらも一つ一つ説明していきます。
LP……ローパスフィルタを適応します。低音域を強調するので、値を上げるほど鈍い音になります。
HP……ハイパスフィルタを適応します。先ほどとは逆に高音域を強調するので、値を上げるほど細い音になります。
BP512……512Hz付近をバンドパスフィルタで強調します。値を上げるほどまろやかな音になり、温かみあるサウンドを作りやすいです。
BP1024……1024Hz付近をバンドパスフィルタで強調します。シンプルに言うと中音域強調です。値を上げると筋の通った音となり、メロディラインなどで使うと印象的になります。
BP2048……2048Hz付近をバンドパスフィルタで強調します。値を上げるほどハキハキとした明るい音になり、淡白に感じさせない音になります。個人的にはストリングスで使うことが多いです。
フィルタの用途は様々ですが、どれも効果的に使うと音源のディテールが増します。耳コピなどでは、より原音らしい音に近づけられるかもしれません。
またバンドパスフィルタについては、生楽器との相性がとても良いです。臨場感ある演奏を再現したいならばこちらを設定してみるといいかもしれません。
LP、HPはギターの音に厚みを持たせやすいので採用することは多いです。また、どちらもともに拡張音源で使う時が多いです。
拡張音源
先ほどから謎のように連呼しているこの言葉。
自分はこの界隈に入るまでは知らなかったのですが、バンブラーでは「なんだこの音!?」というのは通称拡張音源というらしいです。なので、こちらでせっかくなので少しその作り方も紹介致します。
ギターの厚みを持たせる調整
ギターにオクターブ20をかけてから、上記のフィルタで特性を決める、という方法です。こちらを使うとギターにお手軽と言っていいほど簡単に厚みを持たせられます。
例えばBP2048で6〜9だと、どのギターでもロックギターのような厚みになります。
逆にBP512を強めにかけるとしっとりとした音になり、LPを強くかけるとBP2048よりハードな感じに。
HPはかけると少し音が弱くなるのですが、それを先ほどのエンベロープなどで18-19-1-19にして音を短くすると、綺麗なカッティングになると思います。ギターとフィルタはかなり繋がりが深いものなので上手く調整してみると良いかもしれません。
矩形波とランダム波を使ったテクニック
モジュレーションを矩形波かランダム波を設定した状態で、DEP18or19にすると、音が上か下に動く波形になります。これに加えて手前のHLDかDLYをかけると、基準となる音から波形設定した音になるまでの動きが作れます。
例えば1-0-18-0にすると基準音→半音となる動きになって、これを上手く並べると16分音符のみで擬似32分音符や擬似グリッサンドが作れます。
また0-19-19-0のような感じにすると、ゆっくりとしたベンドが働きます。これをクロスなどと合わせて使うと、上にあがり続けるベンドなどを再現することが可能です。
コードの節約
モジュレーションでピッチ・矩形波orランダム波にした状態で0-0-18-0にすると、最初のところだけ半音高い音が作れます。これが何に使えるかと言うと、コード和音においても一瞬だけ半音高い音が鳴らせます。
バンブラPには残りコード数という制約があるのですが、これをオーバーしてしまった際にこの音色調整を使うことで、コード数の節約にあてがうことが可能です。
これを駆使すると通常のドレミやギターコードなどでも、想定されていない音域よりも上(または下)の音が出せたりするので、必要に応じて活用できそうです。
ティンパニーでスクラッチ
こちらの前半の曲で使っているスクラッチ音はティンパニーです。こちらについては、
・エンベロープを12-19-0-19
・エフェクターのコーラスを6
・フィルタのBP1024を6
というベースを作った上で、
・Aのモジュレーションをピッチ・0-0-19-1・逆のこぎり波
・Bのモジュレーションをピッチ・0-0-19-3・のこぎり波
という設定にして、使い分けています。
のこぎり波の波形は打音を作りやすい形で、かつティンパニーも使いやすい打音なので、工夫してみたところこのような音になりました。
ファミコンベースでファミコンタム
ファミコンベースを先ほどの要領でピッチ・0-0-19-0・逆のこぎり波を付けると、ファミコンの曲で使われるタムの音になります。ゲームならロックマンの曲など、音作りの細かいチップチューンを再現したい場合は使ってみると良いかもしれません。
ピッコロでリコーダー
こちらの主旋律のリコーダーは、ピッコロを使ってピッチ・0.5-1-15-0・矩形波を使うことでそれらしい音に再現されております。
付録:HLD0.5について
こちらの表は各楽器のモジュレーションの初期設定をまとめたものです。この中でHLDに色がついていて、かつ0のものは0.5という数値になっております。
疑問に思う方が多いとは思いますが、一瞬だけHLDが入るものが初期設定であったりします。
これをどう使うのかというと、上動画のリコーダーで、最初の音に上がるまでのわずかなこの数値を使うことで、リコーダーの特色を再現しています。ピッ、という感じがよく出ていますね。
コントラバスでリードギター
こちらの後半の主旋律で、リードギターのような音が鳴っていますが、こちらはコントラバスとなっております。
エフェクターでオクターブ20をかけて、HPを10に、コントラバスの音域より高い場所に音符を置くとギターのような音に変化します。
ちなみに、こちらは曲調がやや高めで、少し独特な雰囲気を醸し出していますが、これは原曲が微分音を使った曲だからです(わずかに通常のキーより高い)。そのためこの耳コピでもピッチ・0-0-17-0・ランダム波に設定した上で鳴らしているようで、かなり再現度が高いものになっております。
オルゴールでウィンドチャイム
この曲の冒頭で、ウィンドチャイムが鳴っておりますが、こちらはオルゴールです。
テンポを倍速にして再現する方法もありますが、こちらはピッチ・0-0-18-18・矩形波にして、エンベロープのR0とクロス20を駆使しながら最高音域から半音ずつ鳴らして再現しております。キラキラした感じが、ちょっとトイっぽい響きで可愛らしい感じになっています。
ビブラフォンで鳥のさえずり(Bird Tweet)
上動画の2番のAメロにて、鳥がさえずるような音が入りますが、これはビブラフォンです。
ピッチ・0-3-18-17・逆のこぎり波で、かつHP(orBP2048)の20をかけて高音域で鳴らしています。鳥がさえずるタイミングは、音量調整の0と99で任意のタイミングで鳴らすように調節しています。
ハープで秒針の音
こちらでは最初のイントロや最後のサビの直前で、少しだけ秒針の音が入っています。これはハープです。
エンベロープを19-19-0-19、モジュレーションをピッチ・0-0-19-1・逆のこぎり波、オクターブ20とHP20を振って、最下音のドで鳴らしています。秒針の音は少し小さいため、音量バランスなどは工夫する必要があります。
シンセリード和音を使ったノイズ
こちらのシンセリードは曲調の全体でノイズの役割を担っています。
ギターコードにて、ピッチ・0-0-18-19・サイン波、HP20で鳴らすとこの独特な音が作れるそうです。曲調も相まって、最初聴いた時少し衝撃的だった記憶があったのでご紹介させていただきます。
シャクハチ2パートを使ったセミ
サビ前に入るセミの喧騒は、シャクハチです。
モジュレーションをピッチ・0-11-18-18・サイン波にして、エコーを17、HPを19にしたものを2パート並べて、少しタイミングと半音ずらした音を同時に鳴らすことでセミのような声が鳴っています。
ピアノを使ったコト
「コトは元から実装されているのでは?」と思うかもしれませんが、パート数が足りない……という壁によくぶつかります。
そのため、上動画ではピアノでコトを再現しています。音をモジュレーションでピッチ・0-0-19-0・矩形波にして、1オクターブ上の音として使っています。
楽器によっては低・中・高音域によってサンプルされている音が違うのですが、これは中音域の音を無理やり高音にすることでコトっぽい音を再現する、というやり方をしています。
あとはエンベロープを18-18-0-19、オクターブ10にして鳴らすと、コトのような音色に近づきます。
ピチカートでティンパニー
同じくパート不足を補う一つの方法です。
ピチカートを使い、エンベロープを15-0-19-0、モジュレーションをピッチ・0-0-18-0・逆のこぎり波にして、楽譜の最下音に置くとティンパニーのような音になります。(フィルタはお好みで)
ピチカートを使う曲はオーケストラであることも多いため、ティンパニーの代替として使えそうな音になります。
和音1パートでピアノ×ティンパニー
この曲には原曲にティンパニーがあり、ティンパニーも再現しているのですが、ティンパニーを使っておりません。
仕組みは、ピアノのギターコードから鳴らしています。ピアノコードの3和音×ティンパニー用の3和音をギターコード一つでやらせることで、パート不足を補う方法をしております。
これらのように、使いこなせるととても楽しい項目なので、ぜひ活用してみてください。
ご参考にしているサイト・動画など
mynaさんによるバンブラPにての音色調整講座です。非常に分かりやすいのでぜひ一聴いただければと思います。
あいしさんによるバンブラPのテクニックや細かいデータの調査をまとめたサイトとなります。音色調整だけでなく、コードの逆引きや音量調整についても細かく書かれているので参考になっております。
最後に
バンブラにて音色調整をまとめた記事というものをあまり掲載しているところを見たことがなかったので、備忘録も兼ねて執筆致しました。何かのお役に立てればと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
(情報提供にmynaさん、あいしさん、ツムンテマさんにご協力頂きました。ありがとうございます。)
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