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非日常な入院生活を味わい リハビリを考える

4月24日から脳血管の病気で、都立大塚病院で治療を受けた。5月16日脳内科専門医の先生から薦められて、体力を回復するために原宿リハビリテーション病院に転院した。以前、リハビリという言葉をあまり知らなかった。
 
今回、一か月入院したことで、リハビリにはこんなにニーズがあると驚いた。医療法人社団巨樹の会には27の系列病院がある。外観も内装もホテルと似ている。企業文化が優れている病院だと感じる。多くのところで、きれいな花が飾られている。新患者が来たら、院長先生が自ら挨拶に来られた。リハビリスタッフのベストスマイルへの投票イベントなどがある。最も感心するのは、スタッフたちの優しい言葉遣いである。
 
原宿リハビリテーション病院は代々木公園、代々木競技場第一体育館に近い。窓から見る代々木の周りの風景は、あたかも雲の上の景色、青空も格別に魅力的である。その屋根はあたかも武士の冠。時々体育館の外で、映画、ドラマ撮影が行われている。時々、若者が長い列に並んで、アイドルの演出を見たり、アイドル関連のグッズを買ったりしているらしい。 
 
病院の環境は特に素晴らしい。私の入院時期はちょうど春と夏の間で、紫陽花が満開。病院の敷地内の散歩道には、素敵な植物と花がいっぱいある。一本の木が美しく剪定され、まるで天空の盆栽のようだ。
 
 入院した後、20数年前の日本語の啓蒙先生が「どうぞ、のんびりと、病院生活を楽しんでください。私も何度も入院したことがありますが、入院中の楽しみは普段しなければならないめんどくさいことから全て離れること。どうぞ、非日常を楽しんで!」と言ってくださった。これらの言葉はこころの救いになった。
 
入院は「現実逃避」だが、実に一種の「贅沢」だ。特に、リハビリテーション病院では、心身ともに完全にサービスを受ける側になっている。ある意味で、旅行と似ている。勿論、入院患者の状況もさまざまである。苦痛に耐えて、病気で苦しんでいる患者さんは、確かにいる。患者には不安もたくさんあるはずだ。
 
原宿のオシャレな街で、療養生活をスタートした。原宿リハビリテーション病院はホテルと療養院、両方の特徴を持つと感じる。不思議なところの一つは、「格差」が大きいことだ。値段が高い部屋は一日10万円を超える、つまり月300万円。一番安い個室は13000円ぐらい。ただし、無料な部屋もある。年中満室だという。「格差」はあるけど、皆が同じステーションでリハビリに励んでいる。病の前は、皆が平等だ。リハビリを励むお年寄りが多いが、実に20代、30代の人も少なくない。それにも驚いた。近年、若い人の脳梗塞が増えていると言われた。
 
私が住んでいるのは有料の四人部屋だけれど、きちんとキャビネットと布製カーテンで仕切られている。一人の空間は10平米ぐらい。テレビもある。一人部屋より三人四人が一緒に住んだら、いい刺激がもっと受けられるのではないか。リハビリスタッフと患者の会話も時々聞える。私はパソコンを病院に持ち込んで、毎日、文字を書いている。これで、本当にホテルにいる気分になる。そして、病院の一階で、数十年ぶりに思いっきりピアノを練習した。
 
病院のリハビリスタッフは若くて明るい。リハビリスタッフの中には、理学療法士(PT)・作業療法士・言語聴覚士(ST)・機能訓練指導員などがいる。彼らは患者の状態を評価し、個々のニーズに合わせたリハビリテーションプランを立て、運動療法、物理療法、認知療法などの手法を用いて患者をサポートする。
 
リハビリは、怪我や疾患の回復を助けるだけでなく、障害者や高齢者の自立生活を支援する重要な分野だ。リハビリの訓練は多方面的に行う。脳梗塞で失語症に襲われた人もいる。口の運動や正しい音を作る訓練等を実施する。
 
リハビリの合間、私はさりげなくスタッフに質問をした。「なぜリハビリ訓練士になられたのですか」と聴き、答えはいろいろある。 
 
一人の女の子は、親からリハビリの勉強をするように命じられたという。女の子は、ファッションデザインの勉強をしたかったが、親に「実用的な職業に従事したほうがいい、一生使えるスキルが身につく」と言われた、という。なるほどね、これはまるで人生の真理だ。 
 
ある男の子が微笑みながら「リハビリ訓練士になりたくて、なりました」と答えてくれた。幸せ者だね。ある人が「おばあちゃんがリハビリ訓練を通して、元気になった。そして、自分もリハビリ専門を目指した」という。ある方は自身が高校でスポーツ選手だったのが、負傷した経験があったので、リハビリによって回復した。そして、リハビリを職業にした…
 
好きな職業を仕事にする、それは人生の得なこと。辛うじて好きではない仕事をするなら、これは人生には「損」ではないか。ただし、仕事の「味」は美味しいかどうか。自分の心で決める。世の中、いろんな職業があるけど、リハビリは直接人を助ける仕事であると今回切に実感した。 
 
入院によって、人生観に関して、新しい心得がある。技を持つ人、職人など方々が一つの技に専念し、一生こころの平和を保てる。羨ましい。確かにリハビリ職業としては将来性があると思われる。多くのスタッフがやはりその「技」を身に着けるために、リハビリ訓練士になった。 
 
リハビリと介護には共通点もある、身近に人の体を守ること。ただし、大いに違っている。リハビリは人間らしさ・自立性・プライドを取り戻す。人間に再び生命力を与える。例えば、骨折した人、本来車椅子を使う人、言語能力を失った人、リハビリによって、自ら歩ける、走れる、話せるようになった。 
 
さて、リハビリの仕事はAIに取って代わられるのだろうか。AIだけでリハビリを行うことはまだ困難だと思う。実感想としては、リハビリは、患者の状態を評価し、個別のニーズに基づいて治療計画を立て、患者とのコミュニケーションや人間のタッチを含む個別のケアが必要だ。 
 
一部のリハビリでは、AI技術が活用されている。たとえば、都立大塚病院では、パソコンのソフトを使って、患者の記憶力、判断力、空間図形などを訓練している。パソコンのゲームを使って、脳の集中力、判断力を鍛えるリハビリ方法もある。ずっとゲームと疎遠になっていた私は、ゲームはただの遊び、時間の無駄だと自分の偏見を修正せずにいられない。
 
しかし、リハビリにおいては、患者との個別の関係や感情的なサポートが非常に重要だ。また、患者の状態に合わせて治療計画を調整する柔軟性や判断力が求められる。これらの要素は、現時点ではまだ人間のリハビリ専門職によって提供される。AIはリハビリの補助として活用されつつあるが、人間の専門人材の存在が不可欠である。患者さんの特徴や、次に何をすべきかを記録するために、スタッフがノートや紙をつける光景もよく見かける。
 
リハビリ病院は、IQのテストも行う。それは病気治療の判断材料になるでしょう。ただし、IQとは何か。IQ測定の意味は何なのか?と考えるようになった。人間は誰もが有意義な存在であり、ある分野で能力が低い人が、他の分野で特別な才能を持っていることもある。発達障害の方も特殊能力を持つ人が少なくない。また、IQのテストを行うなら、パソコンを使って人工知能に任せた方がいい。正直言って、病院のIQテストは、アナログカタチのものが多すぎる。 
 
自分の弱点は、特に数字に関するテスト。スタッフが中国語で数字を言ってくださって、びっくりした。ありがたい面白い体験だ。図形のカタチと色を覚えるのは得意。社会問題を議論するのは楽しい。例えばスタッフから「なぜ言論の自由は大事ですか」と聞かれて、「私は言論の自由のために日本に来ましたよ…」とこの冒頭のセリフで答え始めた。それはまさに、自分が日々考えること。
 
勿論、リハビリ病院で、体がうまく動かない人が多くいる。特にお年寄り。介護士、リハビリスタッフがとても丁寧に根気よく面倒を見てあげる。どんな体の障害があっても、お年寄りの患者さんはいつも整然と清潔に保たれている。食事、飲み物、睡眠など、介護職員が補助している。 
 
ある日、広い浴室で、一人の体不自由なおばあさんが専用のベッドに横たわり、2人のスタッフが協力しておばあさんの体を丁寧にきれいに洗っているのを目にした。涙が出るほど感動した。 
 
病を機に「老い」を考えずにいられない。どうやって「老い」を迎えるのか。記憶力や判断力は、年齢とともに確実に衰えていく…頭の回転をサボらないように、意志力を鍛えることが大事でしょう。これからリハビリの技術がどんどん進んで、人間が「脳高速」になったらいいな。また一つ言いたいことは、日本のリハビリ事業を中国に進出したら将来性がある。日本リハビリ事情を中国にも伝えたいと考えている。
 
リハビリ病院の特徴として、患者とスタッフのコミュニケーションが多い。リハビリ訓練士は、ある程度心理カウンセラーの役割も発揮したと思います。患者さんとの絆もできている。病院は、今後回復患者交流会・講演会を開催する可能性がありますか。
 
リハビリスタッフたちと話すことは本当に楽しかったのですよ。優しい言葉の大切さを教えてくださいました。皆さんの素敵な姿とスマイルは一生のいい思い出になりました!もう一度その方と話し合いたい、もう一回あの方のリハビリ訓練をうけたいとか…そんな思いもあったのだが、人生と時間の流れは前に進むだけで、後戻りすることはないでしょう。まさか一期一会。非日常な入院生活は、特別な人生の旅をする気持ちにもなりました。


 

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