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【ジョジョnote】第5部考察 構成編 ジョルノ・ジョバァーナ その②

目次
ジョジョnote

前回
構成編 ジョルノ・ジョバァーナ その①

1-4. 「人としてのプリンス」と「人を超えたプリンス」

ジョルノというキャラクターを理解する上で、
最も重要なポイントが「プリンス」だ。

このプリンスというポイント…
正直にいえば4つなのだが、強引に「二重性」に絡めて、次のような形でまとめてみよう。

「人としてのプリンス」
・アーティストとしての「プリンス」
・王子 = 次なる王としての「プリンス」

「人を超えたプリンス」
・悪魔の「プリンス」
・神の「プリンス」

この2x2の組み合わせ、「『二重性』の二重性」が重要なのだ。

① アーティストとしての「プリンス」
[信頼度: A (確からしい! 出典あり)]


まず僕の本論に入る前に、一つの著作を紹介しておこう。

西寺郷太氏著の「プリンス論」だ。

今回、プリンスにまつわる考察のために読んだ。
ジョジョ考察の上では、Wikiに載っている情報でも事足りたわけだが、
荒木先生が敬愛するプリンスという人物がいかに偉大であったか、
それを西寺氏による解説で遅まきながら理解できた。

プリンスというアーティストを知りたい方はぜひ読んでいただきたい。


さて、本題に入ろう。

第5部でプリンスといったら、真っ先に出てくるのがジョルノのスタンド、
「ゴールド・エクスペリエンス」だろう。

だが、この表現はいささか正確ではない。
なぜなら、ゴールド・エクスペリエンスというアルバムをリリースした1995年当時(第5部連載も同年に始まる)、プリンスというアーティストは存在しなかった。
彼は、レコード会社との確執を経て、プリンスという名前を捨てていたのだ。
当時彼が名乗っていたのが、「♀と♂」を組み合わせたような記号。
読み方がないので、この記号は「ラブ・シンボル」と呼ばれ、メディアでは名もなきアーティストは「The artist」や「The artist formaly known as Prince (かつてプリンスと呼ばれた男)」と表記されていた。

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この「ラブ・シンボル」(上の写真)というものは、ジョジョ好きならピンとくるかもしれない。

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例えば、こちらは第4部冒頭の第2話目の扉絵。
背中のJOJOのOの文字が、ラブ・シンボルになっている。

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この扉絵も、荒木先生のプリンス愛が詰まっているだろう。
仗助の趣味が「プリンス」のCDをきくこと、なのに加えて、
襟元の錨のシンボルも、どことなくラブ・シンボルに寄せられている。
(僕の以前の考察で、錨 = 怒りで、仗助のプッツンしやすい性格を表している、ってなことを書いた)

第4部のプリンス要素の、極めつけはこちら。

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こちらは第4部、第1話の承太郎。

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こちらは、第4部中盤、「虫食い」というネズミのスタンド使いを退治しにいくときの扉絵。
承太郎のコスチュームが明らかに変わっているのがわかるだろう。


そしてこちら。

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こちらは、重ちーの死後、吉良の消息を辿ってムカデ屋に向かうときの承太郎。
承太郎のコスチュームが劇的に変化している件については、僕の以前の考察に譲ろう。
ここで重要なのは、承太郎第3段階のコスチュームにも、プリンスのラブ・シンボルが多用されている点だ。

このような具合で、荒木先生のプリンス愛はかなりのレベルだ笑

ラブ・シンボルに見られるような、「男の性と女の性が混ざっている」という要素も、前回述べた「ジョルノの男性的・女性的」な要素につながるのかもしれない。


本論から逸れてしまった…

まず、プリンスという人のイメージ・カラーを上げるなら、
それは「金色と紫色」であろう。

これは、前述の西寺氏「プリンス論」、Kindle版の2204行目にも書かれている。
「それまでもプリンスが、チャリティ・ソングやコラボレーション曲を柔軟な姿勢で発表することは珍しいことではなかった。2005年8月末にアメリカ南東部を襲った巨大ハリケーン[カトリーナ]被害者援助のために、いち早くダウンロード楽曲を公開(カッコ内省略)。2010年には地元XXX(本note筆者が意図的に伏せた)のNFLアメリカン・フットボール・チーム「ミネソタ・ヴァイキングス」のために応援歌<パープル・アンド・ゴールド>(紫と金はヴァイキングスのチーム・カラーだが、なんとプリンスにぴったりの組み合わせなんだ!)をプレゼンとしている。」

ここで、改めてゴールド・エクスペリエンスというスタンドを見てもらおう。

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プリンスのイメージ・カラーの一つが金色であることは、ジョジョ好きにしてみれば「ゴールド・エクスペリエンス」から入るから当然といえば当然だろう。
もう一つの「紫色」は、プリンスの出世作である楽曲、「パープル・レイン」に端を発することは、プリンス好きにとっては当然とはいえ、ジョジョ界隈では説明が必要だろう。
ジョルノが金髪で、紫色〜ピンク色の制服を着ているのも、プリンス的要素に由来するのだろう。


このように、ジョルノ・ジョバァーナという人物には、アーティストの「プリンス」のイメージが盛り込まれているのだ。


ちなみに、第5部のアニメをご覧になった方ならお気づきかもしれないが…
第5部冒頭、ラグーン号でナポリ島へ向かう途中、敗北したズッケェロへの制裁のときにながれるBGMは、「ゴールド・エクスペリエンス」に収録された「P control」へのオマージュ曲になっている。
このオマージュの謎ボイスは、第5部後半のOP曲、「裏切り者のレクイエム」を歌うハセガワダイスケさんらしい。

追記でもうひとつ
第3部〜第6部の主人公のスタンドは、奇しくも皆、鉱物に関連している。
・スタープラチナ
・クレイジー・ダイヤモンド
・ゴールド・エクスペリエンス
・ストーン・フリー
この件については、JOJOVELLER HISTORY本の152ページに、荒木先生のインタビューが載っているので、興味があるかたはぜひ。
(鉱物にしました、くらいの内容ですが)

この説明だけで納得だろうか?

いや!僕は納得しない!!

ここからもう一段階、論を展開して、アーティストとしての「プリンス」についてもっと掘り下げよう。


② なぜ、第5部は「ネアポリス」から始まるのか?
[信頼度: B (それっぽい! 推測)]


第5部を読んでいて、ふと疑問に思ったことはないだろうか?

あれ…?ネアポリスってイタリアのどこのことだろう?


このネアポリスという都市は、厳密に言えば現在のイタリアには存在しない。
イタリア南部西海岸にある、ナポリという都市が現在の呼び名で、ネアポリスはそのギリシャ語読みだ。
この呼び方は、古代ギリシャ人に「新しい都市 = nea + polis」と名付けられたことに由来し、ナポリ(Naple, ネープル)はそれが訛った形らしい。
現在の日本の首都を東京と呼ぶか、江戸と呼ぶか、に近い感覚だろうか。

しかし、他の都市がローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアと現在の名前で呼ばれるのに、どうしてナポリだけはギリシャ語・ラテン語読みなのだろう?

僕は最初、「んー…、これはラテン語読みだから、ラテン系の話とか、あるいは宗教系(キリスト教ではラテン語が用いられる)にヒントがあるか?」などと考えていた。


だが、答えは極めてシンプルなところに、しかも「この理由以外は考えられないな…」というところにあった。


ここで、プリンスというアーティストの歴史を紐解いてみよう。

プリンスは1958年、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスのマウント・シナイ病院で生まれた。

はい、これ。

ここでもう答えは出てるでしょう。

プリンスというアーティストは、デビューするまでの十数年間を、アメリカ中央の北部、五大湖の一つスペリオル湖に接するミネソタ州の、「ミネアポリス」という町で生まれ育った。

この、ミネアポリスという都市名は、先程も出てきた「都市」を意味するギリシャ語、polisと、この土地に暮らしていたネイティブアメリカン・ダコタ族の言葉で「水」を意味するmniを合わせた名前だ。

つまり、第5部でイタリアの都市・「ナポリ」をあえて古い呼び方である「ネアポリス」にしているのは、プリンスの故郷であるアメリカの都市・「ミネアポリス」のもじりなのだ。

重要なのは、これをどう捉えるか、だ。

先程述べたように、荒木先生はかなりのレベルでプリンスを愛している。
とすれば、単純に「好きなアーティスト」のもじり、という程度で入れたと考えてよいものだろうか?

それよりも、もっと荒木先生の意図を汲んで、
「第5部の主人公に『プリンス』を据えようとしたのでは?」
という大胆な仮説に踏み込んでも良いのではないだろうか?

構想段階で、「プリンスを主人公にしよう」と考えていた。

だから、「主人公の故郷を、ミネアポリスのもじり、ネアポリスにした」
だから、「主人公のスタンドを、プリンスのアルバムにした」

こう考えたほうが、自然ではなかろうか?

もっと、もっと踏み込めば(これは半分妄想だが…)
ミネアポリスの語源が、「水+都市」であることを踏まえると…
「物語の序盤は、プリンスの故郷であるミネアポリスから、ネアポリスにしよう。
そして、物語の後半は、水+都市から連想されるイタリアの都市、ヴェネツィアから始めよう」
と構想を立てたのではないか?


果たして、この「プリンスを主人公に据えた = プリンス仮説」
はどの程度、的を射ているのだろうか?

それはこの先の論の展開を踏まえ、読み手の方に判断していただきたい。

第5部関連でプリンスといえば、
上遠野浩平氏によるスピンオフ小説「恥知らずのパープルヘイズ」にも
プリンス要素が詰め込まれている。
この小説は、第5部についてかなり深い考察・研究をした上で書かれているように思う。(フーゴという人物の捉え方がとくにすごい!)
シーラ・Eってプリンスの楽曲制作に加わっていたり、プライベートな関係もあったり…な人です。
だから、小説の中でジョルノ(= プリンス)を崇拝してるってのも、
なかなか意味深な設定です。

③ 王子 = 次なる王としての「プリンス」
[信頼度: B (それっぽい! 推測)]


ここは、明らかといえば明らかな「プリンス性」だ。

そもそも第5部という物語は、
一介のネアポリス市民であるジョルノが、最終的には裏社会のボスにまで登りつめる物語だ。
言い換えれば、「裏社会のボス = 王、に『王子(次なる王)=プリンス』が登りつめる」物語だ。

この、王と王子論、あるいは帝王学的な要素は、
物語終盤のタイトルに表されている。

チャリオッツ・レクイエムが創り出した、それぞれの個人の背後にある光る球体をブチャラティが破壊して昇天する。
そして、ディアボロがつかみ損なった矢がジョルノの手に渡る。

その次の話のタイトルが、「王の中の王(キング・オブ・キングス)」だ。
この言葉には、王様の中の王様、という意味に加えて、西洋・イスラム圏における「唯一神」の意味もある…(このあたりも意味深だ)

こんな具合で、ジョルノには「次に王になる人 = プリンス」という性質もある。


まとめ

1. 荒木先生はプリンスが大好き
2. プリンスのイメージ・カラーである「金と紫」がゴールド・エクスペリエンスに盛り込まれている
3. 「主人公をプリンスにしよう」という構想から、物語の出発点をネアポリス
(プリンスの故郷・ミネアポリスのもじり)にしたのでは?
4. ミネアポリス = 水+都市から、物語の後半をヴェネツィアから始めたのでは?
5. 「次のギャングスター = 裏社会の次なる王(王子 = プリンス)」という意味も込めたのでは?

おお、意外に「人としてのプリンス」性の前半2つでも長くなってしまった。

後半の「人を超えたプリンス」性については、次回に譲ろう。

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