【ジョジョnote】第4部考察 その③ 承太郎考察
6. シンボルの謎(第4部続き・承太郎考察)
シンボル問題の本丸、それは承太郎だ。
承太郎は、第4部の中でかなり劇的にコスチュームを変えている。
(↑これ自体、どれくらい気づかれているのだろうか?)
まずは変遷をたどってみよう。
・初登場時「空条承太郎!東方仗助に会う」(コミックス29巻、文庫版18巻)
白い服に、帽子の「J」と「ハートに手」
↓
・「狩り(ハンティング)に行こう! その①」(コたぶん35巻、文22巻)
帽子に「イルカでできたJ」」と「太陽」
左胸に「ペンだこのペナント(細長い旗)」
右胸に「2匹のイルカとそれが形どるハートの穴」
服の内側に「鎖でぶらさがった太陽のバッグ」
↓
・「杜王町の人々」(コたぶん37巻、文23巻)
帽子の「太陽」が「ハート」に変化
↓
・「シアーハートアタック その①」(コたぶん38巻、文24巻)
帽子と内服に「大量の、♂と♀が組み合わさったマーク」
帽子、喉元、ベルトに「ペンだこ」
一番内側の服が黒色
この変化はかなり強烈だ。
一度気づいてしまうと、「なんでいままで気づかなかったんだ?」というくらいに明らかだ。
これは、どのような意味を持っているのだろう?
6-1. 「第4部の承太郎」という存在
ここからの考察をするために、まずは「第4部の承太郎」という存在そのものを考えてみたい。
第3部において、承太郎はザ・ワールドと同様の「時を止める」能力を獲得した。
読者としては、それはそれは素晴らしい展開である。
一方で、承太郎自身にとって、それは良いことなのだろうか?
そもそも、第3部の冒頭から、承太郎には「先祖の因縁の宿敵であるDIOを滅ぼすこと」が宿命付けられてしまっている。
DIOを倒すためのエジプトへの旅は、承太郎自身が望んだものではなく、「よくわからんおばけに巻き込まれたから」余儀なくされたものだったのだ。
もちろん、承太郎は主人公として大変魅力的だし、敵との駆け引き、仲間への気配りなど、人間的にも優れている。
しかし、光速のスタンドである「スター・プラチナ」が最終的に「時を止める」能力を獲得することは、かなり大問題なのだ。
スタンド能力は本人の性格や意志と関連している、と言われている。
(↑これって、いつごろから言われ始めたんだ?)
で、DIOって人間やめて死んでいる人だ。
第1部のディオは全てをアンデッド化しようとしていたし…
第3部でも人間に対する配慮はほとんど見られない。
人間の部下は駒として扱うし、終盤の一般人もゴミ同然に扱っている。
(ジョルノの母親などは第5部で出てきた設定なので置いておく)
つまり、DIOにとっての支配とは、アンデッドが生者を(食料として)支配する世界であり、その意志と本人の「死者=生命の時間が止まっている」という性質が「ザ・ワールド」という能力に体現されている。
この考察自体は問題ないだろう。
しかし、承太郎が光速の果てに「時を止める」能力を獲得すると話は変わる。
これは、承太郎がどんどん刹那的=瞬間的になり、承太郎の内部で「何らかの死」が進行している、ということにはならないだろうか?
実際、よくよく考えてみてほしい。
第3部の承太郎は、「DIOを倒す」という目的があったからこそ、主人公性が付加され、ストーリーが動いていたのだ。
果たして、DIOを倒した後、承太郎本人には「ジョジョの奇妙な冒険」としての主人公性・ストーリー性があるのだろうか?
それはつまり、DIOを倒したあとの「ジョジョの奇妙な冒険」という物語に、どのような軸が存在するのか?という問いに直結する。
僕は、このあたりの事情と承太郎の白服には関係があると睨んでいる。
① 第3部の承太郎の学帽は「太陽と日の出」を象徴(黒色の学ランがベース)
② 第4部の白服は「黒色=夜中ではない=DIOがいない世界」を象徴
③ それと同時に、黒色 -> 白色の変化は主人公としての燃え尽きを表現
承太郎の帽子の「ハートに手」は、心の抑圧を表しているのかもしれない。
このように、第4部の承太郎は、「主人公性を喪失して、ストーリーの軸=物語としての死を内包している存在」と考えることができるのだ。
6-2. 承太郎の陽化
さて、そうした事情を抱えた(と僕が勝手に考察している)承太郎が、突然コスチュームを大きく変化させる。
それが、虫食い(ネズミ)を狩る話だ。
この話…ストーリー上は、まったく必要がない。
他の話は、何らかの伏線になっていたり(例えば、透明の赤ん坊 -> ジャンケン小僧、辻彩 -> 吉良の逃走、噴上 -> エニグマ、など)、別の話への誘導が盛り込まれていたりする(鉄塔からエニグマへの導入など)。
しかし、このネズミの話は完全に独立している。
改めてネズミの話を考えてみると、「承太郎が生物学者として生き生きとしている」のだ。
それまでの承太郎には、仗助のお守り、あるいはSW財団の連絡役という「役割」が与えられていた。
これは、第3部の主人公性を引きずってしまった、承太郎の義務なのだ。
一方で、このネズミの話は承太郎(+荒木先生)の趣味が爆発している。
こういった、「自分の好きなものに邁進したい」という気持ちが、
・「イルカ」であしらわれた「J」のバッジ(海洋学者の好きなもの)
・帽子の「太陽」<- ここからも、学帽のマーク=太陽説が傍証される
・鎖でつないだ太陽バッグ <- 若いころのアイコン
につながっている、と考えられる。
しかし、重要な問題がある。
・右胸の「2匹のイルカ」は、「中身が抜けたハート型を表している」
これは、「好きなことはできているけど、心を満たすもの=やりがいは見いだせていない」という状態を表現しているのでは?
奇しくも、この時期の第4部は吉良が登場する前で、物語上の柱を見いだせていない状態だ。
僕は、荒木先生の「ジョジョの作者」としての性質が、承太郎に投影されていると考えている。
(漫画家としての性質は露伴に投影されているのだろう)
6-3. 承太郎のリビドー
さて、ネズミと戯れる趣味の時間を過ごした承太郎は、
重ちーが亡くなったあと、全員が集合した場面では帽子の太陽だけハートに変化している。
(右胸の2匹のイルカはそのまま)
次の承太郎のコスチュームが大きく変化するのは、吉良のボタンを手がかりにして康一とムカデ屋にいくところだ。
ここでは、これまでと打って変わって、第3部で象徴的だった「四角いペンだこマーク」が3つも復活したことに加えて、「♂と♀マークをあわせた模様」が大量に見られる。服装の内部も、黒色に変化している。
この♂+♀マークは、第4部の第2話「空条承太郎!東方仗助に会う その②」の扉絵に描かれている、仗助の背中の「JOJO」のOの字にも見られる模様だ。
このマークは、おそらくは「生命力=リビドー」を表していると思われる。
なぜ、承太郎はリビドーを獲得したのだろうか?
それは、吉良吉影の追跡によって、物語の中心をなすストーリーの軸が生まれたことを表しているのでは?
先程も、「承太郎のコスチュームはジョジョの作家としての荒木先生の性質」を表している、と予想した。
実際、リビドーマークの出現に伴って、「中身が抜けた2匹のイルカ」=「空虚な楽しみ」マークも消えている。
この承太郎のリビドーもまた、荒木先生の作者としての性質を表しているのだろう。
(内部の黒色への変化は、第3部の学ランへの回帰なんかもしれない)
このように、承太郎のコスチュームを眺めることによって、第4部という物語がどこから加速されたのか?
という問いに対しても答えを導くことができる。
6-4. 承太郎の博士号
これはもはや小ネタなのだが。
第4部の最後で、承太郎はとある生き物の論文で博士号を取得している。
それは、ヒトデだ。
星型の海の生き物…さすがジョースター。
長いよー!
そろそろ終わりにしたいけど…
続きます。
タイトル画像は仙台名物牛タンです。