僕 VS フェレット


やっぱり動物はあんまり好きになれない。


友達の家で友達と友達の彼女と3人でマリオカートをした後の話。



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ややこしいので場面と登場人物を整理します。

僕(こう)
筆者のことです。27歳。

友達(Aさん)
僕の5つ年上で、先輩のような友達のような感じ。

Aさんの彼女
最近Aさんと婚約したらしいので正確には奥さん。Aさんと一緒に住んでる。

フェレットたち
2匹いる。名前は身体の色にちなんで「シロ」と「クロ」らしい。


Aさんとは大学時代にバイトで知り合って、しょっちゅう遊ぶ仲。僕が実家暮らしなのもあって、遊ぶときは大体そのまま泊めてもらう。
そのときAさんが付き合っている彼女を含めた3人で過ごすこともしばしば。
そんな感じで6年くらいの付き合い。

この日もいつも通り一緒にパチンコを打って軽くお酒を飲んだ後に泊めてもらった。

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パタパタパタ・・・

パタパタパタパタパタ・・・・・・


何か聞こえる。そして何か顔に当たる。

ゆっくり目を開けてみても、コンタクトか眼鏡無しでは生活ができない僕の目にはハッキリしたものは映らない。


まず眼球だけを動かし、その後少し首をひねると、


左側になんかいる。めっちゃこっち見てる。


こいつは。


フェレットだ。そして黒いからクロの方だ。


何を思ったか、最近Aさん夫婦が飼いはじめたフェレット。
さっきマリオカートで激闘を繰り広げていた横でも放し飼いにされていて、ちょくちょく噛みつかれて思ったより痛かったことを思い出した。


お前ケージで寝てたんじゃなかったのかよ。

なんでここにいるんだよ。

寝ろよ。


スマホで時刻を確認すると午前5時。今日は日曜日。
寝たのは確か2時頃だったから、3時間睡眠。さすがにキツイ。もう少し寝ておきたい。


・・・・・・。


ケージに戻すしかない。パタパタを聞きながら再び眠れるほど図太い神経があれば良かったのに。


パッとつかまえて、サッと入れるだけ。できる。

マリカの最中も何度か掴んだが、大したことはなかった。


「こいつらの身体グネグネだから、大体どこ持っても大丈夫。」


奥さんも言ってた。ちなみに奥さんは僕より5つくらい年下のギャル。

ちらりと横をみると、Aさんと奥さんは一緒のベッドで熟睡中。お願いどっちか起きて。あと僕は寝袋で寝てるから身体が痛い。


まあ起きるわけがないので、僕は闘いを決意した。


身体を起こすと、


パタタッ


ものすごい勢いでフェレットが身構えた。

のを見て僕も全力で身構えた。

すごく小さい声で「ぅぉぁ」って声が出た。


朝5時に、他人の家で小動物と全力で睨み合う。


何だこの緊張感は。

ゴキブリに遭遇したときっていう表現がまさにぴったり。


で、そこから20分くらいの死闘。


クロはホントにゴキブリのようにベッドの下や棚の隙間に隠れやがる。


ああこの棚、なぜか奥さんに言われて僕が組み立てたやつだ・・・

とか心底どうでも良い思い出に耽りながら、なんとかケージのある部屋にクロを追い詰めた。(1LDKのマンション)


ちなみに一回素手で掴んだらガッツリ噛まれて、

「ン゛ーー」って心の中で叫んだ。

改めて噛まれるとすごく怖くなってしまって、素手では触れなくなった。


仕方がないから鞄の中から自分のタオルを持ち出して、一気に掴む。

ああ、タオルが臭くなる・・・。


住んでる本人たちは全く分からないらしいが、この家は玄関に入ったらすぐにケモノ臭がする。犬や猫とは比べ物にならないと思う。


タオルに別れを告げながらなんとかケージに詰め込んだ。

ちなみにケージの中でシロは爆睡していた。いい奴かよ。



とにもかくにもこれで闘いは終わった。

と思いきや、一度ケージからの抜け出し方を覚えたクロは、疲れ切った僕の目の前で早くも2度目の脱走を開始している。


身体をくねらせながら

ズズズズッ

と隙間を通って出てくる瞬間を目撃したときの恐怖は、何とも言い表すことができない。

強いて言うなら、

「もういやぁ・・・」

と絶望系漫画に出てくるモブの女の子が言いそうなことを、27歳青年の僕が呟いてしまうくらいの恐怖。


赤の他人である僕がこれ以上クロの衝動を抑えることはできないし、そもそも抑える義務はない。

ということで開き直った僕は、駆け回っているクロを放置して、部屋の扉を封鎖した。
これで少なくとも僕らが寝ているスペースには入ってこれまい。

なんか棚とか漁られるのかもしれないけど、そんなことは知らん。ははは。

最初からこうすればよかった。




ふぅ・・・。

クロとの闘いを終えた僕は、これまでになく清々しい気持ちになっていた。

一回り成長できた気さえする。


壁の時計を見ると時刻は5時半。今日は日曜日。
せっかくこの時間に目が覚めたんだ。何でもできるじゃないか。


とりあえずベランダで一服しながら、早朝の空気を感じよう。

そう思ってタバコを手に取ろうとしたら、自分の身体がケモノ臭い。

急いで確認してみると鞄も臭い。クロのやつ漁りやがったな・・・。



何とも言えない気分になった僕は、タバコをしまって、再度クロが駆け回る部屋を通り、
(クロは僕を見て相変わらずめちゃくちゃビビッていたが、死闘を乗り越えた僕は、クロを見てももうなんとも思わなかった)
洗面所で徹底的に手を洗って、ついでに顔も洗って、

再び寝心地の悪い寝袋に横になった。



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目が覚めると8時半。やっぱり人間は3時間単位での睡眠がベストらしい。



一足先に起床していた奥さんから、クロが脱走していた報告を受けた。

うん、知ってます。


お返しに3時間前の闘いの報告をしたら、


奥さん知ってた。


でも夢かと思ったから無視したんですって。なるほどね。

ちなみにAさんは一切気づかなかったらしい。なんでだよ。


3人でクロの脱走対策を軽く協議して、僕はAさん宅を後にした。



時刻は9時半。今日は日曜日。

コンビニ前で今度こそ一服して、なんとなく僕は休日出勤することにした。

まだ5時間も経っていないのに、
あの黒いフェレットとの奇妙な追いかけっこが、少し前の夜の出来事のように感じる。


フェレットたちのケージが完全にふさがれたら、もうあの不思議な時間を過ごすこともないな、と思うと、


寂しさとかは全くなく、嬉しい気持ちでいっぱいです。



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