「XRコンテンポラリーダンスは『自由ではない』?自由な身体表現である「コンテンポラリーダンス」をXRで行ったら
0.はじめに
私は元々ダンス経験はなく、昨年の4月頃からVRCHATというソーシャルVRアプリをプレイし、たまたまVR上でストリートダンスをされているダンサーさんとの出会いからVRでもダンスができることを知りました。
当時は衝撃的で、デスクワークが基本の私は身体を動かす習慣はなく、ダンサーさんから「とりあえず音に乗って動いて楽しもう」との誘いからやってみることにしました。
いざやってみますと、これが意外と面白いもので、下手で適当なことをしているだけでも楽しくなってしまいますし、なによりフレンド(VRCHAT上の友達)から「良い感じに踊れているね」と持ち上げられることもあり、音楽が流れている場所では調子に乗って適当に身体を動かして楽しんでおりました。
昨年10月頃には、ダンサーさんから私の適当に身体を動かしているこの動作がダンスジャンルのコンテンポラリーではないかとのことで、今日まで踊っている私のダンスジャンルがコンテンポラリーであることを前提として記載させていただきたいと思います。
1.コンテンポラリーダンスとは
コンテンポラリーダンスとはいったいどんなダンスジャンルなのでしょうか。ご存じない方も多いと思います。コンテンポラリーダンスとは、表現形態に共通の形式を持たず、自由に感情や音を表現できるジャンルのダンスになります。(時代の流れの中を現在進行系で進むダンスであり、舞台の上のみならず、教育や福祉の中にも存在しうるものです。昨今はMVなどで取り入れられることも多いです。)
2.XR上でコンテンポラリーダンスを踊るということ
ダンスという文化は日本では最近必修授業として教育されることにはなりましたが、まだまだ踊ることが好きな方以外は興味がないあるいは知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、XRが発展することで、日本でもストリートダンスや音楽系イベントなどが活発になり、ダンスに触れる機会が増えるのではないかと思っております。(現状、VRCHATではダンスに触れるイベントが多く、踊る人口が増えていっております。)
そのような中で、ダンスに触れたことのない方々が適当に身体を動かし、感情で思い思いに踊っていく人口が増えていくならば、コンテンポラリーというダンスジャンルを踊られる方が多くなっていくと思われます。
しかしなぜそのように思うのかという疑問については、私の以下の体験によるものがあるからです。
・自分の好きなアバターを着用し表現することができる。
・本来の自分の身体が見えないため匿名性が高く動きやすい。
・好きなワールドや服装、パーティクル、アイテムなどを使用して楽しむことも可能である。
上記のことも含め、非現実的で非日常的な行動ができることがもっとも興味をそそり楽しんでできたからにほかならないと思っております。
そして上記は理屈ではなく、自分の感情に従って行動しているのみですので、このコンテンポラリーというダンスジャンルにおいて、感情による踊りの表現方法というのは非常にマッチしているのでないかと思うわけです。
3.コンテンポラリーはXRにおいてまだ「自由ではない」可能性
現実においては、体を自由に扱い、時には壁にぶつかり、床にねそべり、自由な表現、トラディショナルに囚われない「まったく新しいダンス」を行うコンテンポラリーであるがXRにおいては「トラッカー機材がある」「部屋の広さに上限がある」「周りが(HMDによって)見えない」という「不自由さ」が多く存在します。
さらに現実の身体を動かさないとどんなに自分の中にイメージしている表現方法があったところで、アバターに介して表現ができないことがあり、自分自身をより鍛えたり、表現方法を身体に覚えさせなければいけません。
そのことからそれを億劫に感じてしまい、やがて努力をせずに離れてしまう危険性をはらんでいるわけであります。
これが本当に「完全に自由な身体表現」なのでしょうか?決してそうとはいい切れません。
4.XRはコンテンポラリーダンスを行う上で適した場所に進化する確信
自分の姿かたちとはあきらかに違う姿で踊ることができることがXRです。それは、人間である必要性、生き物である必要性すらありません。
その上で、幻想的、創造的なワールド(衰退した世界、廃墟、空の上や地下など)といったものを「実際に見て」踊ることができます。
私はコンテンポラリーダンスにおいて「感情の表現」をとても重要視しているのもありますが、これらが存在するが故に「コンテンポラリーダンスの敷居が高い理由」の一つである「自分で自分以外を表現する」「存在している世界が違うかのような動きをする」という「イメージ力」を補助することができます。これこそが「コンテンポラリーダンス」をより多くの人達にトライしてもらえる、楽しんでもらえる要素だと思っております。
そのためには「フルダイブシステム」のように部屋もトラッキング機材も気にせず踊れるようなシステム……とまでいかなくても「より利便性の高いXR機材」が存在すれば、我々はもっと自由に、音楽を、しいては「感情」を表現できるのではないか、と思っております。
5.実際現状のXRでコンテンポラリーを習得した場合
以下が、私kouaのコンテンポラリーダンスになります。
私は「トッカータとフーガ ニ短調」を表現させていただきました。音を聞きその自分の中から沸き上がった感情をそのまま身体に出力して表現することに尽力いたしました。
そして、カソウ舞踏団団長であるVRPerformer「yoikami」による
「くるみ割り人形 金平糖の精の踊り/チャイコフスキー」
こちらは「バレエとオペラの合作である曲を、現代のXRにてコンテンポラリーダンスとして表現する」という課題があるようです。聞こえうる感情をそのまま動きとして表現し、夢の世界、くるみ割り人形、ネズミの軍勢、そして金平糖の精。
そういったものを一緒くたに表現している様が見て取れるかと思われます。
これらを見て、とても自由に自分の表現したいものを表現している、と思われる方が多いと思います。
しかし、我々は身体に大量のトラッカー機材やバッテリー、ケーブルを取り付けて、狭い部屋で踊っているのです。
是非、もう一度頭で思い浮かべるか、動画を見直してほしいのです。
狭い部屋で踊る工夫や、重いトラッカー機材をつけても自由さを表現する工夫がみられるはずです。
これらが本当に「自由」であるのでしょうか?私達は、この状態で行える最大限の自由を行って、表現し続けるつもりです。
しかし、今我々は、本当に自由なのでしょうか。
そして未来のXR文化はどうでしょうか。
現実の自分の身体を動かす必要があるのでしょうか。
未来のXRでは、脳内でイメージしたことがそのままXR上で反映されるような未来になっているのではないでしょうか。
もしそのような未来になったのなら、このコンテンポラリーというダンスジャンルは現状では理解できないような表現方法になるのではないかと思います。
「本当に自由に解き放たれた時、我々はどのような作品を作ることになるのか」
妄想は止まらず、技術を待ち望むばかりです。
※これはyoikamiさんと私kouaの合作になります。
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