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100文字ノワール No.116-134 2020.8.12~2020.8.18

バッドエンドといっても色んな種類がある。最も分かりやすいのは主人公の死亡である。主人公が死ぬから物語も終わる。多くのノワール小説がこれで書かれている。もうひとつ、日本人が嫌うタイプに「悪人の勝ち逃げ」というのもある。これも特に珍しいものではない。
死ぬのが主人公以外の人間であって、主人公が特に悪者ではなく、人生の虚無や社会への嫌悪などを主題したものも多い。このパターンの一部が、かつてハードボイルドと呼ばれて親しまれたものだ。俺は「ハードボイルドはノワールのジャンルのひとつ」くらいにしか思ってない。ちなみに、そう思っているのは俺だけではなく、日本ではハードボイルド扱いになっているローレンス・ブロックのマット・スカダーのシリーズは、セリ・ノワールから出版されている。文句があるならガリマール出版社に言ってくれ。
以下に書かれているのは、そういう考えの持ち主が自分なりにノワールだと思って書いた断片だ。楽しんでもらいたい。

116.

誰かに見られたような気がして、少年は自分の後ろを振り向いた。廃屋の窓の外は、ただ暗闇が広がっていた。もう家に帰らなくては。

117.

「僕らに共通の敵なんていたっけ」
「たくさんいるさ。お前の頭脳と俺の行動力で腐ったヤツらを殺して回ろうぜ」
「なんか面白そう」

118.

「じゃぁ、お前はなぜ死なない?」
「いずれ死ぬわ。あなたと一緒だから」

119.

まぁ、いいさ。殺ってくれるだろ?報酬ははずむぜ。

120.

「もう下りよう」
「待って。もう少しだけ」
「どんなに待っても、殺された人は帰ってこないよ」

121.

「とりあえずワンアウト取らないとな」

122.

お前さ、実は計算もろくすっぽできないだろ。

123.

「いやいや、驚いてるよ」
「嘘、笑ってるもん」

124.

「普通に殺すって言い方面白いな」
「拳銃ならこっちも汚れないし、いいかなと思って」

125.

またどっかの街でいい加減なこと言って、騙して逃げるんだよ。ずっとあいつはそうやって生きてきたんだ。

126.

「昨日の夜、あんたは何をしてたんだ?」
「昨日の夜、夫を殺しました」

127.

「二人だと何がいいの?」

128.

何百年後かに、ここは墓地だったと思われるのだろう。

129.

130.

131.

132.

133.

134.

「どうして俺のことが分かったんですか?」
「我々からは、後に死んだほうの関係者を調べればいいだけなので」
「プロですね。おかげで誰にも何にも探られずに済みましたよ」
「妹さんはお元気?」
「いえ、死にました」







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