優しさの香りをまとって
一年前、友達から香水をもらった。
私が欲しかった、YSLのモンパリ。
誕生日にはまだ早くて、なんでもない日だった。
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友達がコスメを買いに行きたいと言うので付いて行き、その時に見つけて買うか迷っていたのがサンローランのモンパリだった。砂糖菓子のような甘い香りと、アンダーで香るムスク。試しにつけさせてもらい、その日はずっと良い香りだねと2人で惚れ惚れしていた。
それからしばらくして、私は失恋をした。
自分でも驚くほど哀しくて、辛くて、沈んでいた。
それから数日後、私を元気づけようと、友達がパンケーキに誘ってくれた。美味しいものを食べて元気出して、という気遣いが、とても嬉しかった。
渋谷のカフェの、角の少し小部屋になっているような居心地の良い席。
パンケーキとおいしいコーヒーを堪能し、話をして、そんなやつ早く忘れて幸せになりな、と励ましてくれた。
ありがとう、ありがとう、と何度もお礼を言った。
すると急に、大きなカバンの中から紙袋を取り出して私に渡す。
黒地にゴールドでYSLと書かれた、あの紙袋を。
え…これってもしかして…。
言わなくたって、中身はわかる。
溢れる涙がこぼれないよう、目を力一杯見開いて、シックなボックスを開ける。そこには、私の欲しがっていた、モンパリが入っていた。
「欲しいって言ってたから。良い香りでしょ?ほら、元気出して。」
嬉しくって、嬉しくって、笑った瞬間涙がこぼれた。
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あの日から1年が過ぎ、香水は使い切っていた。
香水を使い切ったのは初めてかもしれない。
友達からもらった優しさの香りは私を包んで癒し、元気の香りで包んで心を豊かにし、素敵な香りの鎧を纏わせてくれた。
もう鎧はなくても大丈夫。
きっと、あの瞬間からもうとっくに大丈夫だったんだよ。
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