「取引基本契約」はどこまで対象にできるか
取引はヒト・モノ・カネ・チエのやりとりで、定期的、高頻度に多数の取引を行うときは「業務委託基本契約」など「○○基本契約」というものが締結されます。
商社やメーカーとの取引では「取引基本契約」というタイトルの基本契約が締結されることがありますが、中身は商材の売買契約を中心として業務委託も含めるような内容であることが多いです。
より両者の関係性が深まると業務提携、出向、合弁など特有の関係性に進みます。
ところで「基本契約」はその名のとおり「個別契約」を前提にしており、個別契約で共通して定める事項をあらかじめ定めておくこと、個別契約で定めるべき事項の確認が主な役割になります。
それゆえ、「基本契約」が対象としてとれる個別契約は内容の性質が似ているもの、個別契約ごとに条件がブレないものである必要があります。
継続的な売買契約であれば、毎回モノの種類・数量は変わるでしょうが、支払い条件まで変わるようであれば「基本契約」では定めきれない事項ということなってしまいます。
ではもう少し横着して、ある取引者間で非常に多種類な取引を行う場合、どこまでを「基本契約」としてまとめることが可能でしょうか。
代表的な契約類型ごとに一般的に定める条項は以下の表のようになります。
◎固有性高い・特に重要
〇一般的に設ける
△場合により設ける
もちろん「〇」がついている条項は「まったく同じ文言」を使えるとは限りません。ライセンスや共同研究開発における知財条項は売買に比して非常に詳細に作りこむべきです。それはライセンスや共同研究開発が本質的に「チエ」を取引の中心に据えているため、チエに関する法的権利である知的財産を重視するからです。
このような取引の本質・固有の条件を除くと、これらすべてを対象にする「基本契約」を対象にしようとすると、反社条項や合意管轄程度のわざわざ契約する実益の乏しいものに限られてしまうかと思います。
したがって、基本契約としてくくるべき取引の基準として、
①対象物の性質(有体=モノ or 無体=チエ など)
②取引の履行が一過的(納品などある時点の行為を重視する)か継続的(コンサルティング、ライセンスなど継続的な関係性と労務、価値の提供を重視する)か
③支払い、報告などの書類・やりとりの実務が同じタイミング、担当者、フローに乗るか
以上の3点を考えるといいのではないかと思います。