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SOのための流れ方講座

具体的な話はしたくないなんて記事を書いておいてなんですが、岸岡さんのツイートを見て創作意欲が湧いたのでマイクロスキルについて書きます。

共感しかありません。
流れてはいけないという指導は今はそうでもないのかもしれませんが、少し前はかなり一般的なものだったと思います。ただ、実際は流れることによって得られるメリットがたくさんあるため、一概に流れることが悪だと言い切るのは早計です。

流れることを否定しないまでも、効果的な流れ方を教える人もそれほど多くないのではないでしょうか?
流れることで得られるメリットを理解していても、流れ方を教わっていなければ試合で上手くできないと思います。

そこで、今回は流れ方を教わっていないであろうSOに向けて、元SOの目線で流れるメリットと具体的な方法を書いていこうと思います。


流れるメリット

・自分の一つ外の選手のトイメンにノミネートしてもらえる
・内側に固まっているDFを置き去りにできる
・まっすぐだけのリズムを変えられる
・ギャップに仕掛けやすい

ざっと書き出してみましたが、こんな感じだと思います。(他にもあったらコメント欄で教えてください)

ここで僕が一番主張したいのは、「流れることによってマークチェンジを起こせる」ということです。

というよりも、マークチェンジを起こすために流れるという方が的確かもしれません。

個人的には「流れる」という言葉が良くないのかなと思っています。なんとなく、パスに押されて仕方なく外に走っているというイメージがつくような気がします。
本来の意図を考えると、「流れる」というより「外に仕掛ける」と表現したいところですが、ややこしいのでやめておきます。


つまりどういう状況?

とても雑ですが、こういう状況です。

エスコート.001

SOが一人ずらせば外が一人余るという至ってシンプルな考えです。相手がDFミスをすれば逆に12と13の間が空きます。つまり、同数ではSOが流れることでスペースを作ることができるということです。

では具体的な方法を説明していきたいと思います。


STEP①:相手を見る

めちゃくちゃ当たり前のことを書いているな。馬鹿にするな。

と言われてしまいそうですが、ちょっと待ってください。
ここで僕が言いたい「相手を見る」というのは「ミクロとマクロの視点で相手を見る」ということです。
つまり、DF全体のどこにスペースがあるのかということと、自分のトイメンとその外のDFはどこを向いているのかという二つのことを考えなければならないということです。

まず、DF全体のどこにスペースがあるのかという目線で考えることから書いていきます。


◇マクロ視点のチェック項目◇

①外が余っているが、WTBまでボールが回せそうにない場合
・ATとしてはどこかで縦に走るランナーが欲しい(10シェイプを想定)
・DFはシャローで前に出てくる可能性が高い
流れた方がいいかも?
②外が余っていて、WTBに少ないパスでボールを回せる場合
・DFはドリフトで流してくる可能性が高い
流れずにまっすぐ走ってパスした方がいいかも?
③外が余っていない場合
・ATとしてはどこかで縦に走るランナーが欲しい(10シェイプを想定)
・DFはシャローで前に出てくる可能性が高い
→流れた方がいいかも?

簡単にするために3つの場合に分けました。
ここで判断基準となっているのは、「相手のDFシステムがどうなるのか」ということと「ATとしてそのフェイズでどこを攻めたいのか」ということです。

展開したいのであれば、SOはボールを持っている時間を長くする必要性がそれほどないです。むしろ、最後の2vs1の局面でラストパスを投げる選手のためにも早くボールを手放した方がいいです。

逆に、10シェイプなどSOからのパスで縦に当てるプレーをしたいのであれば、流れることでマークチェンジを起こしてスペースをこじ開ける方がボールをもらう側のためになることがあります。


次に、自分のトイメンとその外のDFはどこを向いているのかという点について説明します。

言わずもがな、この二人のどちらも自分のことをノミネートしていないのであれば、キャリーすれば抜けます。

ここではそれを前提として、このDF2人がATの内側と外側どちらに立っているのかというところにフォーカスして見ていきます。


◇ミクロ視点のチェック項目◇

①ドリフトDFするべきシチュエーションでATの外に立っている
・流れてもマークチェンジを起こせない
・スタンディングでパスをしたらすぐにプッシュされる
→まっすぐ相手の内側に向かって走る
②ドリフトDFするべきシチュエーションでATの内側に立っている
・特段流れる必要性もない
→パス距離や外のスペースに合わせて対応(流れない方がいいケースが多い)
③シャローDFするべきシチュエーションでATの内側に立っている
・トイメンを振り切れる可能性大
→流れてマークチェンジを起こしやすい!
④シャローDFするべきシチュエーションでATの外側に立っている
→立ち位置がかなり外側ならまっすぐ!
→ボールを貰いながら外に出られそうなら流れる!


大事な部分なのでじっくり説明していたら、想定外にSTEP1が長引いてしまいました...


STEP②:ボールを貰う

効果的に流れるためには、ボールの貰い方にも気を付ける必要があります。
これはSTEP①で得た相手の情報を元に考える部分です。

ドリフトDFをしてくる場合はあえて省いて、シャローDFをしてくる相手がどのくらい外に立っているのかという点にフォーカスして図示します。

①少し開きすぎている場合(正面抜けそうだなあと感じるくらい。大体3m?)
・真っ直ぐもらって相手を内側に向かせる
→内側に寄ってきたら外に流れる
→寄ってこないならそのままキャリー

エスコート.002

(一本目の線はボールをキャッチするまで、二本目の線はキャッチしたあとの移動を示しています)

②そこまで開いていない場合(一歩分くらい)
・DFは真っ直ぐアップしてくる
→開きながら貰えばDFアップのコースが変わり、出足を遅くできる

エスコート.003


この2つに共通しているのは、DFにアングルチェンジを強いるということです。
ここがボールを貰う時のメインアイデアになります。
シャローDFは一気に前に出るので急激なアングルチェンジをするのは難しいです。
そこで相手が減速している間に外に逃げ切ってしまおうといったイメージをしてもらえればと思います。

さて、いよいよ流れます。


STEP③:流れよう!

この項目のポイント:

・ボールをもらったらトイメンを見ない
・ショートスワーブのイメージで流れる
・常に抜きにいく

STEP①、②では相手を見ることが大事だと書きましたが、ボールをもらってからはトイメンを見る必要性はないです。

トイメンの一つ外のDFをガン見しましょう。
やってみると分かると思いますが、トイメンは見ても見なくてもついてきます(笑)
もちろんどのくらいついてきているのかという認識は大事ですが、基本的に視界の隅っこに映るはずなので、たまにチラ見するくらいで大丈夫です。
ここで大事なのが、トイメンの外のDFが自分を見ているかどうかです。見ていなければ、一気に加速して外のDFの背中に出るようなコースで走りましょう。

この時に直線的に走るとトイメンが自分に追いついてしまうので、イメージとしては若干ショートスワーブ気味に遠心力を感じながら走る感じです。

エスコート.004

このようなコースを取る別のメリットとして、最後の自分の体の向きがスクエアになるということがあります。
横を向いたままの選手に抜かれる気はしませんよね?スクエアに体が向いているからこそ、「抜かれるかもしれない!止めにいかなければ!」という気持ちになります。
※もちろん、ギャップができている時は直線的に外に走った方がいいです!

トイメンの外側のDFをそんな気持ちにさせれば勝ちです。マークチェンジが起きて目的達成です。
あとは外の選手が空いているスペースを攻略するだけです。


こんな記事を書きましたが、結局大事なのは使い分けです。

流れることしかできない。もしくは、真っ直ぐしかできない。という状況では選択肢が少なく、ATとしてベストな答えを分かっていても実践できないというジレンマに陥ってしまいます。
どちらもできるようにしておくことで、プレーの幅だけでなく考えの幅が広がると思っています。

賛否両論あるかとは思いますが、何かの参考になれば幸いです。

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井坂 航 (Kou Isaka)
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