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【現代ファンタジー小説】祓毘師 耶都希の復讐(23)コンビの直毘師

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 天寿を全うした祖父のコネクション(仲介屋とのパイプ)を引き継いだ、27歳の頃。
 私の内外面で変化が生じ始めた。ニュースになっている事件がキッカケ。私が処理した以外の加害者の死亡記事が、引っ掛かっていた。

 復讐代行活動はシングルで行なうことが多かったが、コンビで行なう時もある。その相手は、直毘師《なおびし》である当時大学生の伊武騎碧《いぶきあおい》氏だった。

 幼稚で陽気でヒーロー気取りの彼を好きになれなかったが、直毘師としての能力は素直に認めていた。私の母の復讐で協力してもらったことにも感謝していた。
 だから今も尚コンビを組み、復讐依頼を遂行することが年に幾度もあった。

 祖父が手を組んでいた直毘師が、伊武騎碧《いぶきあおい》氏であったことも理由の一つ。
 子供の頃から正確に依頼ごとを遂行する、大人顔負けの直毘師《なおびし》だったようだ。
 彼の祖母は鹿児島の資産家で直毘師の一人。父はリゾート系実業家、母はエステ&コスメ系実業家、らしい。つまりコンビの相手は御坊ちゃま。ヒーローものが大好きで、『弱き者を助ける』という正義感の強い少年。
 祖母、伊武騎咲ユリ《いぶきさゆり》氏と祖父は長い付き合い。その孫は5歳の頃には現場に関わっていた、と聞いたから驚きだ。

 私が母の復讐を依頼した日。
 そう、祖父と実父との邂逅的な出逢いの日――出雲の伊努《いぬ》神社にいた時も、近場で待機していた伊武騎家の二人。彼は当時13歳。私が神社を去った後、祖父と共に刑務所内にいる主犯の処理を実行してくれた、ということだ。

 祖父は闇喰《やみく》――命《みょう》と闇(これを幽禍《かすか》と呼んでいる)を吸引後、伊武騎家が所有するヘリコプターで岡山へと向かい、ヘリポートから車で岡山刑務所へ。

 刑務所付近に到着したのは、深夜0時過ぎ。
 少年は祖父から幽禍(闇付き命《みょう》)を受け取る。そのまま闇儡することもできたらしいが、私ほど闇を抱えていない人の怨度《おんど》(闇の大きさ)では十分でない、と判断。付近を浮遊している既に亡くなっている者の怨度の高い幽禍《かすか》を選び、闇のみを父の幽禍に付着させた。この技は直毘師の得意とするところ。
 対象となる囚人が、施設内のどこにいるかなど窺《うかが》い知ることはできないが、依頼人の闇が対象とする囚人と共鳴し引き合うため、容易に発見できるらしい。碧《あおい》氏の制御によって囚人へ闇儡(体内に注入)する。依頼人の闇とプラスした闇を一緒に。

 祓毘師は対象者に直接触して注入するが、直毘師は遠隔で注入できる。祓毘師は生きた対象者から直接触して幽禍を取り出すが、直毘師は死人の幽禍を操る。祓毘師は体内で闇を管理するが、直毘師は体外で管理する。
 祓毘師と直毘師のコンビは、伝統的なダブルスといった感じだ。

 闇儡を受けた対象者は、特段の指示をしていない場合は、一時間もしないうちに症状が表れるという。
 そして予定通り、二日後、愛する母に手を掛けた主犯は病死した。

 当時私は、ネット上のニュースで結果のみを知った。
 その後、祓毘師の祖父の闇喰《やみく》と直毘師の伊武騎碧氏の闇儡《あんらい》によって、私の復讐依頼は成就された、と聞かされた。

 その彼と組んでいた。
 コンビで行う依頼遂行は、殆どが病死だった。しかしここ最近、ネット記事では加害者の自殺や不慮の事故死などが、起きていた。気にならないわけには、いかなかった。
 事実の自殺や事故なのかもしれない、と思っていたが、“力ある者”によるものではないか、と考えるようになった。
 他に“力ある者”がいることは祖父から聞いていたが、その“他”に会ったことがなかった。ボンボンで全国情報を持っている碧氏に、その“他”に会えないのか訊ねたが、居場所は知らないとのこと。実際、私の居場所さえも知らないという。どこに住んでいるかなど興味ない、と断言していた。

 そんな好奇心を抱いている時、機会が向こうから飛び込んできた。

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