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【現代ファンタジー小説】祓毘師 耶都希の復讐(24)ホテル・ラ・スイーツ神戸

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 祖父の教えを守り、目立たないようにしていた……つもりだったが、愛車BMW・X6《エックスシックス》だけは妥協できなかった。
 高級車RVの国内販売台数は知れたもの。住居を探し出すことなど、彼らには雑作もないことだった。

 パートを終え帰宅すると、自宅近くに黒い乗用車が停まっていた。品川ナンバーであることに疑問を抱いた私に、降りてきた二人の男たちが見せたのは、警察手帳だった。
 結果、同乗して神戸へ連れて行かれることになったが、到着するまで一言も発していない。それに男たちも、特に気構えるふうもなく、ただ傍にいる、という雰囲気だった。
 私の予想していた道路から外れ、思いも寄らない方向へ車は移動していく。
 その場所は……ホテル・ラ・スイーツ神戸ハーバーランド。

(なぜ? )

 警察を装う二人の案内で、不安と不信を抱きつつ部屋の中へ。スウィートルームの広さと大きな家具とスペースは、無駄な空間と率直に感じたのは間違いない。

 スーツを着こなした紳士的な二人。ソファーに座っている30歳代のメガネをかけた男と、大きな窓から外を眺めているスキンヘッドの50歳代の男がいた。
 メガネ男に誘われソファーに座り、そしてスキンヘッド男と対面、話しが始まった。自己紹介なく、テーブル上のファイルされた薄い資料を見ながら。
 私の過去の出来事、豊富な資金、祖父のこと、これまでの闇喰の成果について、調査結果をわざわざ報告してくれた。
 警察であれば、その程度の情報を入手することは容易なのだろう。

「なぜ自分のことを調べているのか?」
「警察が私に何の用なのか?」

 当然の如く、訊ねてみた。
 祓毘師による復讐は、逮捕し立憲することは不可能であることを、知っていたからだ。

「我々は警察ではない」

 男の意外な応え。

「誰、なんですか?」

 問い質すも、

「今はまだだ」

 と。

「何の、ご用ですか?」

 不安より不満が強まった私は、詰問した。正直、尊敬語を使う気にもなれない。

「君の力を借りたい。手伝って欲しい」

 それこそ、意外な返答だった。

「報酬も準備している」

「報酬をもらってはいけない」と祖父から忠告されていた。それに資金で困っているわけではない。報酬ごときに興味はなかった。

「何を、手伝う、のですか?」

 不満と不愉快さが積もり積もっていく。

「その前に……なぜ君は祓毘師をやっているのかね」

 ファイルをテーブルに軽く投げ置いたスキンヘッド男からの、逆質問。

「殺人を犯した奴らを葬るため、です。被害者の願いだから」

 間を置いて、当初から変わらない使命を口にした。
 人助け意識より「犯罪者は許さない」という処刑的意識が、圧倒的に強かった。愛する母の事件は忘れられるものではないから。

 目前の男は、祓毘師《はらえびし》らによって処理された加害者の命《みょう》について、語り始めた。

 始めて耳にすること、というよりこれまで意識になかった。
 祓毘師《はらえびし》によって亡くなる加害者は、病死なのか、自殺なのか、それによって加害者の命《みょう》が大きく違うらしい。

 自殺者の命《みょう》は闇と化し、自然界に戻ることは二度とない。命《みょう》そのものを放棄したことになるから。その者の闇は浮遊できず、その場所で永久に留まる。俗にいう“地縛《じばく》”だ。

 “力ある者”による病死である場合、寿命前での死であれば命《みょう》は宙に存在し得る。それゆえ、祓毘師《はらえびし》らによって加害者が絶命しても、命毘師《みょうびし》という“力ある者”により、人間的死後四十八時間以内なら蘇生させることができる、と言うのだ。つまり、命毘師《みょうびし》でも蘇生させられない状況にしなければ、蘇生の機会を与えてしまうことになる、と。

 命毘師の存在については聞いていた。が、関わりのないものと思い込んでいた。
 この瞬間、可能性を疑った。私が処理した加害者を蘇生させることも有り得る、ということだ。心情的に許せるわけがなかった。

「伊武騎らと手を組んでも、病死だけだ。我らと組めば、自殺で処理できる。
 被害者遺族のためにも、世の中のためにも、是非仲間になって欲しい」

 そのセリフは、すんなり受け止めることが出来た。
 だが、付け加えられたことには、心なしか身構えた。

「もし仲間にならないのなら、いつでもあなたを活動できなくすることが出来る」

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