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#74 カギのこと

この時間で引っ越しのトラックに一切合切を乗せられていたら、
これでもうここに戻ってくることは二度とない状態だったら
どんなに良かったか。

頼れる警察官のお二人と別れて、
とにかく早くその場から遠くへと、
逃げるように車を走らせます。

ただ、ずっと頭から離れないのはカギのこと。

結局ヤツが持ったまま…。
絶対にまたあそこに戻るつもりなんでしょう。
行く場所がないんだから、何一つ生活用品がなくたって
雨風が凌げる場所は貴重だもんね。

1時間程走ったところで、
車を停めてお義母さんへ報告の電話。

「とりあえず荷物はまとめてきました。」

「アイツはいなかった?カギは?」

一通り説明をすると、やはり同じ心配を口にします。

「戻ってくるわよ。」

「ですよね…」

カギをリセットする方法もあるのですが、
何しろ水曜日で不動産屋がお休み、というタイミングの悪さ。

カギの事を考えると怖くて怖くて、
どうにか現状のカギでは入れないように出来ないものか、
コンビニの駐車場でアレコレ調べてみたものの、
開かないようにするには、もう1つ外付けするしかないっぽい。

明日、引っ越し業者が来るのに、
部屋で寝てる可能性大。
さ、い、あ、く。

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