#49 逃げる
「もう、いいよ、俺、こいつ殴ってまた入るよ。それでいいんだろ!」
一人で興奮がMAXになった彼が、いよいよ私に手を上げようと近づいてきたタイミングで、
更に2名の警察官が我が家になだれ込んできました。
「押さえて!押さえて!」
入ってくるなり二人がかりで彼の取り押さえに回ります。
私は後からきた警官に連れられ、
取り急ぎの必要な物だけを掴んで外へ出されました。
「車の鍵は持ってる?」
「はい。」
その後、パトカーの中で事の経緯を一通り説明し、
行かれる場所があるなら、とりあえずそこへ身を潜めてなさい、とそのままその場を離れるように言われます。
部屋の中では暴れる彼を、残った3人の警官でやっと押さえ込んでいる状態だとか…。
「もう直接のやり取りはしない方がいいでしょう。
弁護士すんなり、間に人を入れて話し合った方がいいですよ。
離婚にも素直に応じないと思いますし…。」
「ですかね…。」
その時点で午前3時。
実家がある街までゆっくり走って2時間。
呼び鈴を鳴らすには早すぎるので、
近所のゲームセンターの駐車場に車を停め、せめて6時になるまで、
積んであった毛布にくるまれて目を閉じました。