#11 文通という魔術

衝撃の告白後、私は大激怒の手紙を書きます。
が、その手紙を読む前に書いた愛に溢れる手紙(笑)が、まず彼に届きます。
加工バリバリのものは相変わらずどこかでストップしている様子で、話題に出ることもありません。

彼としても、まさかあれを読んでこれを書いたんじゃないよね?という事はさすがに気付いていましたが、ズルいことに「きっと、こういう事を書いて来ると思うんだ」的なことを書いてきます。
何度も何度も繰り返し繰り返し反省の弁を書き綴ってきます。

刑務所(留置所)なんて入ったことないから、精神的にどの程度のところにいるのか想像も出来ないけど、冷たいことを言ってしまえば自業自得だし、突っぱねることは簡単だったんだろうと思います。何しろ向こうは塀の中だし、正に手も足も出せない状況。ただただ受け身でいるしかない訳で。
私はなんで変ないい子ちゃんになろうとしてしまうんだろう。
彼が受け身でしかない状況の中で、自由な私が二人にとっての大きな決断をするのはフェアじゃないのでは?とか、良く分からない考えにとらわれて、結局「戻ってきたら十分に話し合おう」という曖昧な感じで許した形になってしまいます。

またチャンスを逃してしまうのです。上の立場で問題なく終わりに出来たのに。

メールやLINEでタイムラグのないやり取りが出来ていたら、
この一言にこの返事、がちゃんと出来ていたら、違った結果になったのではないかと思ってしまいます。

でも、きっと結果は同じ。
『SLIDIND DOORS』です。
その時が来るのが早いか遅いか。
切り替えにかかる時間の長さが少し違うだけ。いつか今と同じ状態にはなっていたはず。

ただ、手書きの文字には活字にはない力があることは確かだと思います。良くも悪くも説得力や気持ちの重さなどを伝えるには凄いパワーを発揮します。悪意を持って使えばそれは立派な武器になるのです。

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