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introduction〜心像劇場〜(ⅱ)

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作   :骨髄
ジャンル:幻想、ファンタジー
名目  :小説風、脚本風
手長く描いてみました、第一作です。思ったより手長かったので、分割しました第ニ話、どうぞよしなに。。
第一話はこちら↓
https://note.com/kotucotu_z552151/n/n1e9c99d074aa?sub_rt=share_sb
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客人は手近な椅子に腰掛けて息をついた。

客人   :「心像ノート」……?

 ふと、客人は机の上にいくつか積まれたノートに目をやった。そのうちの一つを手に取って、試しにパラパラと適当に走り読みしてみる。

客人   :名前、生年月日、家族構成……将来の
      夢は、「4歳の頃は建築士」ってかっ
                     こいいな。子どもの夢ってこんなにキ
                     ラキラしているのか。これは、子ども
      の成長記録……?お、なんだろ、何か
                      の一覧?

 客人の開いたページには、一面に箇条書きで言葉が書き並べてある。小見出しには『忘れてはいけない言葉』。

客人   :『人にされて嫌なことはやらな
      い』、『ありがとうとごめんなさい
      をちゃんと言う』、『思いやり』、
      『強い心』、なるほど。

客人は次のページを見てゾッとする。荒れた文字、滲んだインク、破れたところを補強したテープ。このページだけが、異様だった。

客人   :『期待してた』、『裏切られた』、
      『不潔』、『とろい』、『見ててイ
      ライラする』、『視界に入ってくる
      な』『みんなそう思ってるよ』ーー
人形   :ーーるさい、うるさいうるさい
                      っ!!!
客人   :うわああああ!!!

客人は驚きのあまり椅子から転げて、背中を床に打った。その痛みよりも、客人は声の主の方が気掛かりだった。この部屋には自分以外いないはずだ。

人形   :あんた何なの!?もう分かってるっ
      て言ったじゃん!私が最低なのは知
      ってるの!なんでこんなに重ねてく
      るの?私だってこんな性格になりた
      かったわけじゃ無いのに!!
客人   :ぁ……!!に、人形?

さっきまで何も置かれていなかったはずの化粧台の上に人形が立っていた。見開かれたビードロのの丸く大きい目は悲痛に光り、白く、冷たい、滑らかな陶磁の頬を熱い涙が伝った。口元は固く結ばれて、今にも泣き崩れそうなのを必死にこらえているのが見て取れる。腹の底の憤怒を必死に押し殺しているような、そんな苦しさが表情を歪めていた。

人形   :みんな勝手にあたしに期待して、勝
      手に失望して!具合悪くても怒られ
      て、ご飯食べなかったら追い出され
      る!泣いたら悲劇のヒロイン気り、
                      甘ったれるな!?あ、あたしだっ
                      て……みんなが私のこと嫌いなの知っ
      てるからっ!あたしもみんなのこと
                      嫌い、約束さえ守ってくれない……誰
                      も、覚えててくれないんだもの……!
客人   :……あ、あの……これ。

客人が人形にハンカチを差し出す。人形はそれを引き抜き鼻をかむ。客人はハンカチを返そうとする人形に断りを入れながら、椅子に座り直す。

客人   :えっと、落ち着きましたか?
人形   :……。
客人   :さっきのは、すみませんでした。つ
      い好奇心でーー
人形   :好奇心で人の傷抉るなんて、良い趣
      味してるわね。
客人   :うっ、すみません。
人形   :……で、あんたは何?
客人   :あ、私はーー
青年   :ーーお待たせしました!ティーセッ
      トの捜索に手間取りまして。
少女   :前の小道具に使ったの忘れちゃって
      て……ごめんなさいね。
人形   :またあんた!?いつも使ったら戻せ
      って言ってるでしょ!
少女   :だから「ごめんね」って言ってるじ
      ゃない。そんなに怒ることかしら?
人形   :~~あんたねぇ!
青年   :はいはい、ストップー。お客様の前
      で何してるの?すみません、騒がし
      くて。
客人   :あ、いえ……こちらこそ、そちらのお
      人形さんを泣かせてしまって。
少女   :まあ、本当だわ!可愛いお顔が台無
      しじゃない。一体何があったの?
人形   :別に!何もないから。あんたには関
      係ないでしょ、構わないでよ。
少女   :マリー!何でそんな悲しいこと言う
      の!
人形   :どうせあんたのそれも、こんな私に
      気を遣って善人に見られたいだけな
      のよ。偽善者なんて大嫌いよ。
少女   :マリー!

人形は化粧台から飛び降り、締まりきっていないドアの隙間に手をかけて振りかえる。

人形   :あんた、客だかなんだか知らないけ
      ど、余計な事言わないでよ。それで
                      は邪魔者は退散しますので、ごゆっ
                      くり。

ーーバタン

少女   :そんな……マリー。私は、本当に……

少女は静かに涙を落とした。客人は本格的に申し訳なくなって、せめて何か言葉をと考えを巡らせたが、言葉は出なかった。涙を流す少女の横顔は、ただただ美しくて、儚げで。その眼差しは慈愛に満ちていた。

青年   :お客様、本当に申し訳ないです。
客人   :いや、ほんとに私のせいなのでーー
少女   :そうですよ。あなた、お客様といえ
      どもマリーを泣かせたんです。私は
      許しませんよ!
青年   :エミカ。

少女は客人を睨めつける。青年は困り顔で少女くをなだめ、落ち着かず立ち上がってしまっていた客人に椅子を勧めた。

青年   :しかし、そうですね。なぜ彼女が泣
                     いていたのかは、気になるところで
                     す。お話、聞かせていただけません
                     か。
客人   :ええ、私も気になることがあります
                      ので。

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まだ続きます。。好奇心は猫を殺すとか。身を滅ぼすとか。でも、気になるものは気になるんですよね。人の心に土足でズケズケ踏み荒らすことだけはないよう、気をつけましょう。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
ぜひ続きなんかも楽しみにしていただけたら、嬉しく思います。

第三話>>https://note.com/kotucotu_z552151/n/n4b000d455c44?sub_rt=share_b

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