さぁマテリアルズ・インフォマティクスを始めてみよう
マテリアルズインフォマティクス(Materials Informatics)とは、材料工学と情報科学を融合させた研究分野あるいは技術のことを言います。(※)
2024年にノーベル物理学賞が人工ニューラルネットワークの基礎研究に授与され、またノーベル化学賞がAlpha foldによるタンパク質の構造予測に授与されるなど、今まさに旬と呼べる領域でしょう。データ科学による様々な科学分野へのインパクトはとても大きく、今後も広がり続けることと思います。
インフォマティクスの利用はものづくりにおいて沢山のメリットがあります。昨今の材料開発はデータが膨大になっていますので、自動的な解析によってスピーディーな開発を実現することができます。導入コストも比較的安価でフリーのライブラリも沢山存在しています。実験と違って事故のリスクが低く、安全に研究開発を進めることができます。データに基づいて統計的に材料探索や機能解析を行うため、先入観が無く、人間の直感や経験を超えた結果が得られることもあります。時にはこれまで見たことのない世界を目の当たりにすることもあります。
つまり、速く、安く、安全で、時には人間を超える結果が得られる、とてもエキサイティングな分野なのです。材料設計を効率的かつ戦略的に進めることができ、なによりやっていて楽しい分野であることは間違いありません。
もちろんAIやロボットにはできないことも沢山あり、発展途上なのも事実です。しかし、出来ないことは新たな研究課題として立ち上がってきますので、これもまた開発のシーズとなります。必要のあるところに科学の発展があるのです。
マテリアルズ・インフォマティクスは米国を皮切りに、現在も全世界で活発に研究開発が進められています。日本でも各研究機関や大学、また企業で盛んに開発が進められています。応用範囲は幅広く、触媒、電池、半導体、高分子、金属、磁性材料など、様々な科学分野に波及しています(ここでは書き切れないくらい広がっています)。その一方で新興の分野なので、工夫次第でいくらでも自分の研究成果や可能性を広げることができます。特にこれから活躍したい若手研究者や学生にオススメです。
小嗣研究室でもマテリアルズ・インフォマティクスの研究を進めていて、ロボット合成や量子ビーム解析、また新しい理論の構築など、データ科学を使った色々な開発を進めています。個別の解説はまたの機会に譲るとして、日々あたらしい発見があって刺激的な分野です。あなたも一緒にマテリアルズ・インフォマティクスの研究をしてみませんか?世界の見方が一気に広がることと思います。
研究を楽しく!
※米国では計算科学と機械学習の融合研究を指すことが多い