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♯48 この道は初めて知る道

この地域に転居してきて20年弱になる。商業施設が少なめの町なので、行くスーパーはだいたい同じ。いつも2日分の食材をまとめて買うので、1週間に3〜4日は同じスーパーに来ている計算になる。

1ヶ月だと、16日くらい。
1年だと190回以上。
トータルだと3500回は超えるはずだ。

そして今日もいつもと同じように、このスーパーに買い物をしに行った。今日はたまたま家族が一緒で、他愛もない話をしながら買い物を済ませ、家に帰ろうとしたときのことだった。

「あのさ、知ってる? いつもの出入り口とは違う出口があるんだよ、このスーパーって」

初耳だった。しかも、そちらの出口のほうが自宅に近いというのだ。そんなことぜんぜん知らなかった。

家族についていくと、スーパーの裏側に着いた。あそこだよ、と家族が指を差す方向には、確かに小さな出口がある。自動車は通れないが、自転車やバイク、人なら通れる。その出口の存在を、私は今日初めて知った。

しかも、この出口から帰ったら、いつもより4分ほど早く家に着いて衝撃を受けた(興味本位で時間を計測した)。だって、これまで3500回以上行っていたのに、知らない出口があったなんて予想外すぎる。大きなスーパーではないから、余計に驚きだった。

「自分はよく知っている場所だと思っていても、誰かと歩くと、新しい発見があるものです」

遠い昔、国語の先生が言ったことなのだが、印象に残る言葉だなと感じたことを急に思い出した。

「新しい」を知りたいと思ったら、道を変えるしかないと思っていた。でも、一緒に歩いてくれる人を見つけたり、それまで一緒に歩いたことがない人とともに歩くというのも、発見手段の一つなのだ。

自分だけでできることはたかがしれている。そして、自分の目だけで見ている世界は、とても狭いということをあらためて実感した出来事だった。


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