終末期の患者さんと中心静脈カテーテル

私は病棟で働く看護師で、終末期の患者さんと関わる機会が多いです。

先日、終末期の患者さんの状態が急に悪くなり、中心静脈カテーテルを入れるかどうか、家族さんが早急に決断をしなければいけない場面がありました。
家族さんとの関わりを通して、自分も改めて考えるきっかけになりました。少しでも誰かの参考になれたら。と思い、書かせていただきます

患者さんの状態変化は、思いがけず突然起こる事が多いです。腕や足の末梢静脈の血管が細く、血管確保が難しい場合、医師から家族さんへ「治療をするためには、中心静脈カテーテルの確保が必要です。どうされますか?」という病状説明が突然に。という場面も少なからずあります。

医療従事者でない限り、中心静脈カテーテルと言われてもピンと来ない方が多いでしょう。
今回の場面でも、家族さんは中心静脈カテーテルのことはご存知なく、急な決断に戸惑われていました。
医師は、病状説明の中で、中心静脈カテーテルとは。メリットとデメリットなどを説明します。
看護師としての視点での補足事項もいくつかあったため、家族さんにお伝えしてじっくり話し合い、今回の場面では、「中心静脈カテーテルは入れない」ということに決まりました。

医師が説明する、中心静脈カテーテルとは。メリットデメリットについては、インターネットで検索すると分かりやすくまとめられてるため省略させて頂きます。
医師の説明があった上で、
私が補足事項として家族さんに説明したことは
メリット
・(先生の説明をさらに噛み砕くと)太い血管を確保できるから、ちゃんと点滴が施行出来る。つまり治療できる。
デメリット
・身体抑制が必要になる可能性があること
(太い血管に入れるので、中心静脈カテーテルを自分で抜いてしまったら大変。なのでそれを予防するために、両手にミトンをつけたり、両手に抑制帯をつけないといけないこともある。そうなると行動に制限がでてしまう)
・中心静脈カテーテルの穿刺は侵襲を伴うこと
(1回の穿刺で成功したら良いけど、何度も刺し直して1時間以上かかる場合も。局所麻酔はするけど痛みを伴う方もいること)
・感染のリスクがある。感染したらまた穿刺し直しする可能性もあること

をお伝えしました。
今回の患者さんは、元々一切の延命措置を希望されていませんでした。そして、ご家族さんもそれに同意されており、身体抑制の可能性があるのなら、きっと辛いと思うから、自然の形で最期を迎えよう。という決断に至りました。

急に決断を迫られた時、患者さんや家族さんが充分に理解できないまま、医師の説明に同意して治療が始まる。という事は実際あります。
私はそんな場面を見て、本当にそれで良かったのかな。もっと自分にできることがあったのでは。とジレンマを感じる事もありました。

患者さんにも、家族さんにも後悔して欲しくない。医師の説明だけでよしとするのではなく、本当に患者さん、家族さんが理解されているのかを確認して、対話を重ねながら共に考えることの大切さを学ばせてもらいました。