プロもアマも関係ないデジタル出版時代の、ガイドライン強化の重要性を書いておきたい。
犯罪手記の出版が、世間に議論を起こしているのですが、私はこの件がデジタル出版に与える影響を考えて、非常に危険だなと思いました。
なぜなら、電子書籍というのは、epubについていえば、HTMLベースで出来たものであり、各種ブラウザやOSで再現が可能な、いわば小さなインターネットだからです。
従って、かつて、あるいは現在でも、インターネット上で問題になったことは、全て電子書籍でも問題になるとみて、間違いないと思います。
一度インターネット上に上がったものは、それを回収するのが、非常に難しい。だからこそ、プライバシーや人権を保護するために、各種サービス会社は利用規約を作り、私達はそれに従って表現をしているというのが現実です。
紙の出版であれば、売れなければ絶版という選択になりますが、電子書籍ならば、売れても売れなくても、ネットストア上に存在する、ということになります。それは、プロ・アマ、出版社・個人、関係なくできることです。
電子書籍に限っていえば、出版社ができることは、個人でも全てできてしまうのです。
出版社であれ、個人であれ、結局作っているのは人間ですから。
出版社が、被害者遺族の人権を考えずに出版することを是とすれば、個人も是とし、模倣することになるのです。
犯罪手記が利益をあげるのなら、個人が出版社を経由しないで犯罪手記を出しても、問題ないと考えるのです。
自分で犯罪を犯し、犯罪手記を販売しようと考える人が出てくるかもしれない。しかもそれは匿名で、構わないということになります。
この犯罪の中には、殺人だけではなく、ありとあらゆる犯罪が入ってきます。その危険性、恐ろしさを運営側も、出版社も、個人も考えるべきなのです。
商用冷蔵庫に入った写真をアップするのと同じ感覚で、犯罪を犯すかもしれない。犯罪予告を、本として出すかもしれない。
それは、売れないかもしれない。しかし、そんなことは、関係なく、起こってしまう可能性があり、それを未然にどう防ぐべきなのか。
犯罪を犯さなくても、犯罪手記を出さなくても生きていける道を、遺族の心情を傷つけなくてもすむ道を、出版社(者)自身が示さなくてはいけない。そしてそれは、出版業である必要は、ありません。
それが本来あるべき、故人への供養であり、遺族への謝罪であり、更生であり、犯罪防止ではないでしょうか。
そのためにも、ガイドライン(利用規約)の強化をすることが、非常に大事になってくると思います。あらかじめ決めておかなければ、抑制することができません。他社サービスを利用するなら、これは仕方がないことです。
色んなサービスがあるのだから、自分にあったサービスを選ぶという自由もあるわけですから。