雨宿り、ぬいぐるみ宿り
広場で小さな女の子と出会った。
茶色の子犬のぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
近くにはベンチや円型の花壇があり、少し離れたところには見上げるほど高いビルがある。
ビルのすぐ前の道路は人通りが多そうだったけれど、こちらの広場は人はまばらで、各々が思い思いに過ごしている。
空は曇っている。
誰かの叫び声。
ビルの屋上に巨大な白い雲のようなシルエット。
四足歩行の動物、白くて毛並みがとても良い犬にも見えた。
本物なのか、遠くてよくわからない。
白い犬が広場めがけて落ちてくる。
当たったら自分が簡単に潰れてしまいそうな大きさだ。
ビルへ戻るか一瞬迷って、より広い方へとビルを背に走った。
逃げ惑う人々が嫌でも目に入る。
落ちてきた巨大な犬は動く気配はなく、ぬいぐるみだと分かる。
先ほどの女の子に声をかけ、お互い無事を確認する。
しばらくすると、雨が振ってきた。
ビルの上にはもう数えきれないほどの巨大な白い犬のぬいぐるみたちが所狭しと並んでいて、落ちるのを待っているようだった。
ここ一帯どころか世界が白いぬいぐるみで埋め尽くされそうな気がした。
そして、それらが降ってくる。
今度はビルに向かって走った。
女の子は同じように走る人の渦に吸い込まれるように見えなくなってしまった。
降ってきたぬいぐるみが頭に当たる。
痛い。
結構固い。
両手で頭をぎゅっと抑えて走る。
女の子が持っていた子犬のぬいぐるみが落ちていたので、拾ってビルの中へ駆け込んだ。
周囲を見渡してもその子は見つからない。
雨でべたべたする。
ぬいぐるみは降り続いている。
みんなが窓の外を呆然と眺めている。