『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』のレビュー第四回を投稿します。
(各回をまとめたマガジンはこちらです。)
※ こちらのレビューは、非常に内容が濃い本書を私なりにまとめた「概要」です。
興味をお持ちになった方は、ご購入の上、本レビューを副読本的にお読みになることをお勧めします。
第2部 ストーリーの諸要素
4 構成とジャンル
【映画のジャンル】
このように述べた上で、著者は、主題、設定、役割、出来事、価値要素のちがいによって分類されたジャンルを列挙しています。
「ラブストーリー」、「ホラー映画」、「モダンエピック(現代叙事詩、個人と社会が対立)」、「西部劇」、「戦争映画」等々のジャンルが挙げられていますが、著者は次のような補足もしています。
【ジャンルに精通する】
上記の方法は私もよく行っています。
脚本は入手できないことが多いですが、自分が執筆中のものと同一ジャンルの作品をなるべく多く観て、分析をします。
基本的には成功作(というか、私自身が面白いと感じる作品)について、「面白さの素」を探っていくのですが、これによって、自分の作品に欠けている要素や、同一ジャンルの他作品との差異が明確になる、という効果があります。
因みに石田衣良さんも、この動画で、「自分が書きたいものと同じジャンルの作品を1,000冊読みましょう」とおっしゃっています。
【創作上の制約】
どのジャンルで書くかを選べば、おのずと制約も生まれます。
各ジャンルには「約束事」が存在するからです。
第一章では著者は、「ストーリーの型を体得することでおのずとクリエイティビティが解放される」と述べています。
それと同様に、ジャンルにおける「約束事」も、脚本家の独創性を奮い起こす効果がある、というわけです。
「クリシェ」とは、「ありきたりな表現」といった意味です。
書き手のなかで「斬新なものを書かなくては!」という思いが強すぎると、クリシェを避けるのではなく、「約束事を破る」という領域に入ってしまう場合があるように思います。
ですが、そういう作品は観客にとっては斬新なのではなく、「期待外れ」になってしまうということです。
【ジャンルの融合】
「社会派コメディー」であったり、「ミュージカル・ホラー」であったり、さまざまな組み合わせがあり得ますね。
【ジャンルの再構築】
例えばラブストーリーにおいては、時代と共に以下のような変容が起きたと著者は言います。
【忍耐という才能】
時々「小説はとても自分には書けそうもないけれど、脚本なら何とかなると思うので、脚本家を目指しています」という方がいらっしゃいます。
「脚本は小説よりも書くのが簡単」と誤解されることがあるのは、「小説よりもことばの数が少ないこと」が要因かもしれませんね。
ですが、言葉の数が少ないから簡単なわけではなく、むしろ脚本家は、苦心惨憺してことばの数を切りつめているのです。
「今、取り組んでいる作品は、自分自身が雨のなかで並んでも観たい映画であるか?」と自問することは、とても大切だと思います。
自信を持って「はい」と言えるだけの情熱があれば、「一本の脚本を書きあげる」という長く険しい道のりをきっと乗り越えられるはずです。
☆「第2部ストーリーの諸要素 5 登場人物」に続く
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脚本、小説のオンラインコンサルを行っていますので、よろしければ。
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※このブックレビュー全体の目次は以下の通りです。
第1部 脚本家とストーリーの技術
(1)ストーリーの問題
第2部 ストーリーの諸要素
(2)構成の概略
(3)構成と設定
(4)構成とジャンル
(5)構成と登場人物
(6)構成と意味
第3部 ストーリー設計の原則
(7)前半 ストーリーの本質
(7)後半 ストーリーの本質
(8)契機事件
(9)幕の設計
(10)シーンの設計
(11)シーンの分析
(12)編成
(13)重大局面、クライマックス、解決
第4部 脚本の執筆
(14)敵対する力の原則
(15)明瞭化
(16)前半 問題と解決策
(16)後半 問題と解決策
(17)登場人物
(18)ことばの選択
(19)脚本家の創作術
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