喫茶店の人 #7 【純喫茶ブラジリア】 吉岡敏子さん
山之内遼さん、九州で亡くなったって聞いたで。独身のまま逝ったんやなぁ。店には何回も来てくれたわ。本が売れたからカラーでまた出したんやってね。わりとええ値段やのに、買うてくれる人がいるなんてありがたいな。
山之内さんは生きとった証を残したんやな。
本に載せてもらったお礼に年賀状を出しとってん。そしたら彼のお母さんから電話がかかってきて亡くなったことを教えてくれてん。
びっくりしたもん、それ聞いた時は。
もう身体はボロボロやで。
天国行くのん近いけん。
昔やったら生きとれへん年やで。
一昨年に転けて怪我して2か月弱入院してたんよ。
退院後もしばらく店を閉めていたら、常連さんから「開けて開けて」って
電話がかかってきてん。
コロナで飲食店はどこもお客さんがいなかったから、辞めどきかなと思ったけど、この店は上に自宅があって家賃がかかるわけじゃないから、開けといてあげてるんよ。
朝はゆっくり、夕方もはよおしまいよ。やけど、人のためになんかなったらええと思って開けとるんよ。
色々な人生あるな。幸せにいかなあかん。
長いこと生きさせてもらって、みんなにお会いできて幸せよ。遠方から、わざわざ来てくれてありがとう。
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