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インターン みやち 2024.03.07

予定前に到着。まだ空いていない。

荷物を置き、散歩する。商店街。

カネコアヤノさんの『アーケード』が似合うと噂で、歩いてみたかった。

二つに分かれた道。ちらほら人だかり。ちょろっとお客が訪れ、近すぎない距離で要件。ほんの少し雑談。

それを横目に、一周ぐらいしたところ。

スタッフの方が鍵を開けていた。

お邪魔して、電気。部屋が明るくなり、お互いに自己紹介。床掃除をする。5分ぐらいで終了。お店になる。

手が空いたので、本棚を眺める。

かよさんがやってきた。挨拶する。

「何時に来ましたか?」「13時前くらいです」「早かったですね」。

意外とあっさり。けれどなんだかホッとした。ソファに腰を下ろす。

ここに来た理由を話す。文学フリマで売ったことがあり、宣伝文句で売れるのが不満だったこと。

届く人に届いて欲しいと思ったこと。お客さんの中に、友だちにあげるから買う人がいたこと。

誰かにお礼をしたい、そんな気持ちで買ってくれる本こそ届くと感じたこと。だから、一人に届く、そんな本の売り方を知りたい。

そこで知った、小鳥書房さん。

「『たったひとりのための本』を届ける出版社」。釘付けになった。調べた。一日インターン。やってみよう。行ってみよう。

知りたいことがある。どんな場所なのか、どんな人が訪れるのか、本ってどんな存在なのか。だから今日ここに来て。

ドアが開く。鈴が鳴る。優しい音。いつも通り入ってくる感じ。

いらしたのは、本を買わない常連さん。

「名前が芸能人みたいですね」と言われた。「一期一会ですね」と言い残された。けれどその後、またいらっしゃった。

そうか、身近な人なんだ。お店だから寄るより、誰かの家に寄る感覚。それで話に行く、聞きに行く、コーヒーを飲みに行く。

明確な用事はない。ちょっと様子を見に行こう。自然な感じ。

静かな時間。小さい頃遊んだ、公園を思い出す。そこには柵があって、奥に森があった。ポツポツ木が生えている。1.2メートルで並んでる。やってくる鳥。居合わせ会話する。なんてことなく飛んでいく。

たくさん集まり、盛り上がることも。そこにいけば、会話に入っている。

抵抗のない、摩擦が起こらない、起こらない配置に、ソファや椅子が置いてある。

こじんまりな休憩スペース。

一方、半分はお店なスペース。本棚が並ぶ。

お店は入り口近い方、覗くと奥が休憩所。今日訪れたお客さんは、さっと奥に向かう。

そこに、かよさんの顔がみえる。入口からは見えない。会うには、本棚の先へ行き、顔を合わせにいく。

かよさんは、一人一人に話しかける。

誰かがいても緊張しない程度に、むしろ話題に入れるような、緩やかな語り口。

仕事の話もするし、プライベートの話もする。

本当に大事な話は2階に上がってするけれど、基本的には全部下。けれど筒抜けじゃない。言葉を選んで話してる。

予め推敲されたような言葉。相手に傷つくことがないよう、壁をふわっと越えていく。

聞いた。「たったひとり」ってどんな人のことですか。

それは、日々一緒に暮らす人。目の前で、密かに思いを持ってくる人。「自分のことを本にしたい」、そんな夢を抱く人。

そういう方々に、私なりに恩返しがしたい。私のできること、それは本を作ること。

かよさんは、これまでの経験で培った力を、身近な人に役立てようとする。

当たり前のようだが、僕はいつも反対。役立ちたいから学ぼうとしてばかり。

それじゃあ相手が決まってる。

かよさんはそうじゃない。最初から決めない。相手は向こうから訪れる。

小鳥書房という場所に。

今日も小鳥書房には、「たったひとり」の「すうにん」が集っている。

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