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【短編シナリオ】息子の彼氏

再婚することになった堅物頑固親父が、最愛のひとり息子に女装させて映画を撮ったりする美少年と一緒に生活する羽目になるファミリーコメディです。

シナリオセンター本科課題「親子」

タイトル:息子の彼氏

【人物】
斉藤 厳(42)大工
仲澤 由貴(17)高校二年生
斉藤 智樹(15)厳の息子
仲澤 春子(45)由貴の母

〇白島高校・全景
   第52回白鳥高校文化祭の看板。

〇校舎・廊下
   文化祭が行われている。
   廊下は生徒や来客でにぎわっている。
白島高校は男子校である。
パンフレットを持ち、きょろきょろしながら歩いている斉藤巌(42)
   廊下側の窓が暗幕で覆われている教室の前を通る厳。
   教室の扉から廊下を覗く斉藤智樹(15)
   厳の姿を見て嬉しそうに笑う智樹。
智樹「(小声で)お父さん」
   智樹に気付き、駆け寄る厳。
智樹「(小声で)もう始まっちゃうよ。」
   暗幕をくぐり、教室に入る厳。
   白島高校映画研究会・上映会場の看板

〇教室(上映会場)・スクリーン
   セーラー服で女学生役をしている智樹が映っている。
   
〇同・客席
30脚程の椅子は埋まっていて、後ろに立ち見の人たちがいる。
   教室の隅で立ち見をしている厳。
   スクリーンの智樹の姿を見て驚く厳。

〇同・スクリーン
   中性的な美少年・仲澤由貴(17)が学ラン姿で映っている。
   女学生役の智樹と青年役の由貴は顔を
近づけ手を取り合っている。

〇同・客席
   呆然としている厳。
   客席からは拍手が上がる。

〇校舎・廊下
   他の観客たちと共に教室を出る厳。
   厳を見る由貴。
由貴「あの」
   振り向く厳。
厳「はい?」
   由貴を見て驚く厳。
由貴「斉藤智樹くんのお父さんですよね?」
厳「あ、はい」
由貴「はじめまして、部長の仲澤です。」
厳「息子がいつもお世話になっています。」
由貴「こちらこそ。今後ともよろしくお願いします。…お父さん。」
   厳をじっと見つめる由貴。
   面食らう厳。

〇団地・全景(夕)

〇同・斉藤家・居間(夕)
   斉藤家は2DK程の団地の一室である。
   居間の片隅に斉藤里香(享年35)の写真と花が飾ってある。
   写真の前で手を合わせる厳。
厳の声「天国の里香。今日は智樹の高校の文
 化祭に行ってきました。智樹は女の子の役
 で映画に出ていました。恋人役の男の子が
 それはそれは美しく…」

〇フラッシュ
   厳を見つめ、「お父さん」と言う由貴。

厳「ん?お父さん…?なんで…」

〇厳の妄想
   正座をしている由貴と智樹。
由貴「お父さん、智樹さんを…息子さんを僕に下さい」
智樹「いいでしょ、お父さん僕たち愛し合っているんです。」
   真剣な顔で厳を見つめる由貴。
(妄想終わり)
厳「いやいやいやいやいや」
   首を横に振る厳。
厳「それより、里香に報告しなければならな 
 いことがあります。以前からお付き合いをしている春子さんに、プロポーズをしようと思っています。」
智樹の声「ただいまー」

〇映画研究部部室(夕)
   智樹と由貴が部室に居る。
由貴「そうか、親父さんびっくりしてたか」
智樹「はい、女学生役ってことは言ってなくて、なんかアワアワ言ってました。」
由貴「あはは。そうだ。斉藤、来週の金曜日
 の夜空いてる?イルミネーションが始まる
 から撮影の練習したいんだけど、付き合っ
 てくれない?いつもの部活より帰りは遅く
 なるけど。」
智樹「あ、多分大丈夫です。一応父さんに確 
 認しますね」
由貴「しかし斉藤のお父さんも今時珍しく過
 保護というか心配症というか」
智樹「ずっと二人だけだったから、仕方ない
 かなって」
   智樹の肩をつかむ由貴。
由貴「これからは、俺がいる。ずっと一緒にいられる。…ことになるかもしれない。」
   はにかむ智樹。

〇駅前広場(夜)
   駅前広場の真ん中には大きなクリスマスツリーがある。
   歩いている厳と仲澤春子(45)。
   ツリーを見て目を輝かせる春子。
春子「うわあ、きれい」
ツリーに見とれる春子。
ガチガチに緊張した様子の厳は、ポケットの中の指輪ケースを握りしめている。
〇同・駅側(夜)
撮影機材を持って歩いてやってくる由貴と智樹。
仲睦まじいカップルが目に入り、気恥ずかしそうにしている智樹。
   機材を設置している由貴。
   クリスマスツリーの前に立つ智樹。
   カメラ越しに智樹を除きながらピントを合わせる由貴。
   智樹と由貴から数メートル離れた場所にいる厳と春子。
厳「あの」
春子「はい?」
厳「あの、えっと、その」
   握りしめていた指輪ケースをポケット  
   から取り出す厳。
厳「春子さん、僕と」
   カメラを除いている由貴。
由貴「はい、カメラ回すよ」
   カメラを操作してから、智樹の方に近づく由貴。
   智樹の前に立ち、両手を智樹の肩にそっと置く由貴。
   智樹の顔に自分の顔を近づける由貴。
   智樹と由貴に気付く厳。
   厳からは智樹と由貴がキスをしているように見える。
血相を変えて走り出す厳。
   握っていた指輪ケースが地面に落ちて
いく。
智樹と由貴に走り寄り、二人を引き離す厳。
驚く智樹と由貴。
智樹「お父さん!?」
   由貴の肩を持ち揺さぶる厳。
厳「お前やっぱり…」
由貴「落ち着いてください、お父さん」
厳「君にお父さんと呼ばれる筋合いはない」
   厳の後ろに立つ春子。
春子「あれ?由貴じゃない」
   動きが止まる厳。
由貴「お母さん」
厳「え…?」
   互いに顔を見合わせる厳と春子と智樹と由貴。
   地面に転がった指輪ケースの蓋が空き
   中のダイヤの指輪が光っている。

〇斉藤家・全景
   新築で二階建ての一軒家である。
   道路には引っ越し業者のトラックが停
   車している。

〇斉藤家・リビング
   荷物を運びこんでいる引っ越し業者。
   引っ越し業者に指示を出している厳。
   荷開けをしている春子と智樹。

〇斉藤家・リビング(夜)
   引っ越しの段ボールがある。
   リビングの片隅に置いてある里香の写
   真と花。その横に厳と春子と由貴と智
   樹が一緒に写っている記念写真。
   テーブルを囲む厳、春子、由貴、智樹
   神妙な面持ちの厳。
厳「はい、無事引っ越しもひと段落しました
 ところで。私たちは今日から一緒に暮らす
 ことになります。至らぬ点もございますが
 家族として、何卒よろしくお願いします」
   微笑む春子。
   にやりと笑う由貴。
由貴「よろしくね。…お父さん。」
   厳をじっと見る由貴。
由貴「あ、智樹飯終わったら俺の部屋来いよ
 一緒に映画見よう。」
智樹「いいんですか?」
由貴「敬語やめろよ、俺たちもう家族なんだから」
   はにかむ智樹。
厳の声「いや、なんか、いいんだけど、なん
 か…」
   困惑した表情の厳。

おしまい


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