映画「エリックを探して」感想

 『最も高貴な復讐は、赦すことだ』。 

 主人公の抱える苦しみや家族の課題がひどくリアルに描かれる一方で、その解決篇は釣りバカ日誌を思わせるいかにもフィクション然とした内容であり、強い違和感を覚えた。しかしながら、初老の郵便配達員を取り巻くどうしようもない現実をきれいさっぱり解消する方法など実際にあるはずもなく、この結末を虚構の効能として受容するのが正しい態度なのだろう。現実と虚構の継ぎ目をいかに自然に見せるかこそが、佳作と傑作を分けるのかもしれない。

 『バレエみたいだった。一瞬、自分のクソ人生がどこかに消えていた』。

 そう、素晴らしい文章を書けたとき、私も一瞬だけ自分のクソ人生を忘れることができる。しかし、素晴らしい文章とこのクソ人生との間には、何の関係も連絡もない。

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