ゲーム「ディアブロ4」感想
クリア前
ディアブロ4、原神への課金にすべきか悩みつつも、早期アクセス版を購入してレベル35へ到達。ハクスラの正当な評価は99%以上の時間を過ごすことになる最高レベル・最高難度のエンドゲームを体験せずには不可能であるため、ここから記述する内容は「感想未満の印象」ぐらいで受けとめてください。おそらく、本作は3の愛好家にはネガティブに、2の愛好家にはポジティブに受け止められることとなるように思います。ちょうど私が真・女神転生3を2までとまるでベツモノだと感じて離れ、その反動で4とFINALを先祖がえりとして高く評価したのと同じ心の動きが生じるだろうと予想しておきましょう。3のパチンコみたいなエフェクトは鳴りをひそめ、全体的に薄暗くて陰鬱な、地味とさえ言えるレベルに演出が抑制されているのは、2までのディアブロ・ワールドの正しい解釈だと感じました。
本作はオープンワールドをうたっていますが、移動や視点の自由さになんら拡張がないため、「3の全ACTマップをつないだ上で面積を大幅に広げて、シームレスにしたもの」が実状に近いような気がします(パス・オブ・イグザイルやグリムドーンと比べて特別なにか新しい感じはしません)。そして、ジャンルの創始者が苦しむ「クォータービューの呪い」は未だに健在で、「どれだけ3Dモデルを精彩に作りこんでも、プレイ中に見るのはオッサンの背中と頭頂部だけ」問題を解消する革新的なアイデアは見られませんでした。さらに、グラフィックを作りこんだゆえの処理落ちを避けるためかーーティアキンの手法を見ならうべきところでしょうーーかなりキャラに寄ったデフォルト視点を引いた位置へ変更することができず、「オープンワールドなのに、カメラの問題で広がりを感じられない」という自己矛盾を抱えてしまっています。また、中世キリスト教世界をベースとした神と悪魔にまつわる西洋人の内面は、原神などアジアのそれを通過した現在、あらためて読むと非常に画一的で薄っぺらく感じられ、「なぜ、こんなものをありがたがっていたんだろう」という気分にはさせられました(これが西洋の物語全般に当てはまる指摘ではなく、シナリオのクオリティが原因であることを祈ります)。
なんだか腐しているばかり(いつもの)になってきましたが、リザレクテッドを経由したからでしょうか、前作との大きな違いとして、ハクスラの金字塔である2への敬意を端々に感じられることは、かつてのファンにとって単純に嬉しい限りです。3の制作者インタビューで、前作を「古臭い」と断じて新作を称揚しようとする内容を読んでしまい、行き場のない怒りにふるえたことを昨日のように思い出します。オリジナルを作った人間がだれもいない状態からの巨大IPリブートに、不安と気負いが大きかったゆえだろうと想像はしますが、「熱心なファンを厄介者と断じて排斥する態度」は、揮発しないヘイトの蓄積へとつながるがゆえに、クリエイター諸氏は厳に戒めるべきものでしょう(シンのエヴァとかね!)。
いろいろと言いましたが、ディアブロ4、中年期以降の傷んだ身体で黙々と半日ブッとおしで遊べるくらい「手ざわり」の良い、軽快なゲームであることだけは間違いありません。え、タイムラインをにぎわせた「45歳で人体の保証期間が切れる話」のこと、どう思いますかだって? そうですね、我が人生の先達から得たありがたい金言をここで諸君らと共有しておきましょうーー「(中年期を過ぎると)酒飲みとデブは、確実に弱っていくね」。震源地となったアカウントが時折アップする食事の風景と、「飲食店の水がジョッキでサーブされると嬉しい」などの発言から推理すれば、トリセツを無視した人体の使用方法が原因であることは明らかですね(ウイスキーの入ったスキットルのフタをふるえる手でつかみながら)。
最後にディアブロ4へ話を戻しますと、この規模にまでゲーム部分を膨らませておきながら、従来通り1年を4シーズンに分割してラダーリセットかけるって、ちょっと本気で言ってます? もうブンケイの大学生か、ゲーム配信で生活費が入ってくる層しかまともに遊べないのでは? 「現実の、時間経過による蓄積のしなさ」から逃げるためにゲームをしている身にとって、この過酷な仕様はあまりにもつらい……レベル上限を999にして、5年に1回リセットくらいで手を打ちません?
クリア後
ディアブロ4、メインストーリーをクリアして、ナイトメアで各地のサブクエストを潰しつつ、名声値をかせいでいる。アーリーアクセスで開始しながら、平日は1時間、休日は少し多めにプレイしても、まだレベル60前後にしかならないし、新たなクエストの発生はいっこうに止まる気配がない。オープンワールドの自由度とゲームバランスを両立させるため、プレイヤーのレベルに応じて敵全体の強さが同時に上がるシステムは、ハクスラのゲーム性と水油であることもわかってきた。社会人がする趣味程度の触り方では、7月に予定されているラダーのファーストシーズンまでに、カンストであるレベル100へ到達することは、とうてい間にあわないペースで、ここまで大学生やゲーム配信者ーーもしくはリタイア後の老人ーーめがけた作りになっているとは、思わなかった。
ジャンルをMMORPGへと拡張したのに本質の部分はMORPGのままで、同じキャラをじっくり育成したい欲望は無視され、一定期間が経過した後は新たな仕組みの導入で、長時間を費やしたキャラを無価値化されてしまう。また、かなり手軽にスキルポイントをいちから振り直せるため、「レベル100までの経験値をかせぐ」イコール「すべてのスキルポイントを入手する」ことが最終目標として顕在化してしまい、本シリーズの魅力である「自分だけのキャラを育成する喜び」ーー後戻りできないゆえの試行錯誤ーーが消失してしまったように感じている。「雑にポイントをふっていき、バージョンとトレンドに合わせて都度リスペック」というのは、ハクスラのゲーム性の小さくない部分を歪めていると思えてならない。全体的に「プレイするゲームをディアブロ4のみに定め、人生の時間をすべてそこに注ぎこめる、生活費の心配がない人物」にとってのみ面白さが最大化する作品だということがわかってきたので、ファイナルファンタジー16が発売されたこともあり、モチベーションはだいぶ失われてきている。
シナリオはけっこう好きな部類で、「まだ神と悪魔で疲労してんの?」と思わないでもないが、遠藤周作から輸入した「神の沈黙」をテーマにからめて深みーーほんの少しだけーーを出すことに成功している(まあ、ライターが触れたのはスコセッシ版の映画だろう。個人的には、篠田版の邦画を薦めておく)。幕間のムービーはどれもよくできていて、1の1.2倍、2の0.9倍、3の1200倍はよかった。何より、不倫人妻感のムンムンに横溢したリリスが、とてもとてもエロい。リリスのエロさに駆動される形でメインストーリー部分を追いかけたといっても、もはや過言ではない(頼むから、過言だといってほしい)。唐突に終わる。1時間後ぐらいに、ファイナルファンタジー16製品版の所感を述べる。
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