映画「かぐや姫の物語」感想
ジブリに、いや、高畑監督にしか作り得ない、ハイパー・日本昔ばなし。そのこだわりは、特定の嗜好品において、ある時点から質の向上と値段の上昇が急激に連動しなくなっていくあの高みにまで達している。一般人には1万円のワインと1000万円のワインの味の違いがわからないように、500万と50億の制作費が生むクオリティの差を感じられるアニメ・ソムリエだけにしか、この作品の真価をはかることはできない。
個人的には、百年を待たない新しい芸術であるアニメが、ついにこれだけの嗜好品を生み出した事実に、深い感慨を覚えた。ストーリー的には徹頭徹尾、かぐや姫であり、女の子を育てるって本当にたいへんだな、と思った。あと、つがいを得て子を成すことが地上の輪廻に乗ることであり、それのかなわなかった者たちの魂の回収される場所が月なのかな、と思った。
ちぃちぃ……さみしぃょ……
自分が名づけをした生命が、この世界から永久に失われるということ。結局、私は、何もわかっていなかった。
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