映画「42」感想
全体的にアメリカ国民としての常識を前提に進んでいくため、あらかじめ想定外の視聴者として拒絶されている感が強い。ジャッキー・ロビンソンの生涯と南北戦争からこちらの黒人差別についてある程度まで知悉していなければ、どこに共感すべきかわからないまま、盛り上がりに欠ける二時間がいつのまにか経過することになるだろう。
伝記映画のはずがメジャー昇格一年目までしか語られず、作中に行われる差別描写も相手監督からの執拗な言葉責めぐらいがせいぜいで、極東在住の名誉白人にはイマイチ当時の黒人の置かれた苛烈な状況が伝わらず、アホなジー・エイ・エルが見れば適度な悪意で退屈な日常にスパイス、適度な放射線ホルミシス効果でお肌ツルツルぐらいにしか感じないに違いない。ベースボール部分の描写も甘く、野球ファン的な盛り上がりも期待できないため、ジェイ・エイ・ピーにとって視聴のハードルが非常に高い作品であると言える。
もしかすると、69というタイトルで双葉山のバイオグラフィーを制作すれば、奴らに同じ感情を味わわせることができるのやも知れぬ。主人公の名前を聞いて、スラントバックナックルからサマーソルトしそうだな、ぐらいにしか思わなかった貴様は手を出さぬが無難だろう。
あと、老齢を迎えたハリソン・フォードの台詞のしゃべり方がヘンだなあ、と思った。