映画「マン・オブ・スティール」感想
スーパーマンが手錠をかけられ、取り調べを受ける予告編にすごく想像力を刺激されたので、視聴した。しかしながら確認できたのは、予告編を編集した誰かの素晴らしい手腕だけであった。あれっ、最近なんか予告編にすごいワクワクして試聴したら肩すかしを食った映画があったなー、なんだったかなーと思っていたら、エヴァQだった。
名前のある数名の登場人物以外はすべて書割りの背景に過ぎず、派手にあちこち舞台が切り変わるにも関わらず、すごくミニマムで閉塞した感じを受ける。異星人の葛藤ばかりに焦点があり、守るべき世界が魅力的に描かれていないため、世界を守る大義は空転し、結果として観客のカタルシスが大幅に減じるという負の構造だ。あれっ、どこかでこんな構造の映画見たことあったなー、なんだったかなーと思っていたら、エヴァQだった。
あとザック・スナイダーって、300の印象から絵画的な止め絵を美しく描く監督と思ってたんだけど、今回は画面がゴチャゴチャしている上にアクションが速すぎて、いま目の前で何が行われているのか非常にわかりづらい。CG技術としては凄いのかもしれないが、どの場面もまったく印象に残らない。そして、こういった素人感想にCG技術の専門家が鼻息荒く、「どれだけ大変かわかってないよ! おまえが作ってみろよ! 嫌なら見るなよ!」とか逆ギレのコメントをしそうだ。あれっ、なんか最近、そんな視聴者の感性を罵倒する映画あったよなー、なんだったかなーと思っていたら、エヴァQだった。
前回のリブートであるスーパーマン・リターンズは、冒頭の野球場に至るシークエンスや、眼球で弾丸を弾き返すシーン(たぶん、範馬刃牙のゴキブリダッシュで指を折る回から強烈にインスパイアされた)など、彼のヒーローとしての象徴性や凄みをすっきりと効果的に表すことができていた。しかし今回は物語が進行すればするほどますます、CG技術の向上以外は新たな切り口が何も無いことを露呈していき、なぜ再リメイクに至ったのかが全くわからなくなっていく。
もうマン・オブ・スティールはこのまま座礁させて、今こそスーパーマン・リターンズ・リブートをこそ制作するべきであろう。そろそろ地球の自転を逆回しにして時間を遡行し、恋人を蘇らせるあの名場面を最新のCG技術で見せていただきたい。あれっ、リブートを繰り返すくせに物語がぜんぜん前に進まなくてイライラするのって、最近何かで体験したよなー、なんだったかなーと思っていたら、エヴァQだった。
それと主人公の外見も、これまでのスーパーマン像をわざと外してやるみたいな粗野な雰囲気で、まったく気に食わない。あれっ、最近なんか主人公のキャラデザインが前回までと違っていて気に食わなかった映画があったなー、なんだったかなーと思っていたら、エヴァQだった。感想を書いていて気づいたが、全体的に何から何までエヴァQだった。