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枝垂桜
今年も近所の駐車場に立っている枝垂桜が咲いた。正式な名前は知らない。
この桜を見るといつも思い出すことがある。
それは、仕事を再開して長男を保育所に入れた14年前のことである。
14年前の春、1年半の育児休業を終え翌日から慣らし保育が始まるというその日に、実家から母が来てくれて長男と私の3人で散歩をした。
長男を三輪車に乗せて、咲きほこる枝垂桜の下で写真を撮ったのだ。
桜とは対照的に、私の心は明日から始まる生活に不安を抱いて小さくしぼんでいたことを覚えている。
慣らし保育は数時間しかないのに、4月1日から仕事を再開することにしてしまったので、結局、義理の両親や実家の母に送り迎えを頼むことになってしまった。
慣らし保育の初日は実家の母が連れて行ってくれたのだけれど、案の定、長男は号泣した。
母はその足で少し買い物をしてからまた保育所の前を通ったのだが、その時まだ長男の泣き声が聞こえていたそうだ。
保育所の先生とやりとりをしていた連絡ノートには『電車のおもちゃが気になって遊んではみたものの、寂しくなってウエーンと泣いてました。明日もまた来てくれるかな。』みたいなことが書いてあった。思い出すと今も胸がギュッとなる。
結局、長男は1年ぐらいは保育所に向かうたびにメソメソ泣いていたと思う。
朝起きてごはんを食べさせて、お気に入りの電車のビデオを観て、じゃあ行こうか、と言うとじわじわと目に涙を浮かべながら、それでも手を繋いで二人で保育所まで向かった。
涙顔の長男を保育園に預けて、後ろ髪をひかれながら仕事に行った日々が懐かしい。
明日は長男の高校の入学式。
長男は新しい制服を着て、あの桜の前を通って登校するのだ。
14年前は不安だった私だけれど、今ならこう思える。
心配しなくて大丈夫。
きっとなんとかなるよ。