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ヨーグルトのこと

ヨーグルトは健康にいい。
私の母はひどい花粉症だ。花粉シーズンになるとマスク、メガネ、帽子でなるべく肌の露出を減らしていた。そのうち目出し帽に辿り着くのでは…と母の花粉対策を見るたび思っていた。
しかもマスクを外すと鼻の内側に花粉の侵入を防ぐ透明の何かをつけていた。呼び名はわからない。彼女の装いから花粉に対する憎しみがビシビシと伝わる。

その母曰く、ヨーグルトは花粉に効くらしい。毎日取り憑かれたように食べていた。
そして実際少し良くなったとヨーグルトに感謝していた。

私も軽い花粉症だ。ただ症状がきつい年もあれば比較的楽な年もある。なので母の言うヨーグルト効果は気のせいなのでは…と思ってる部分もある。

何かを熱狂的に支持した時本質を見失ってしまう。母のヨーグルトに対する絶対的信頼はある種の信仰のようで見てて少し不安になった。

でも。ヨーグルトは色々と体にいいはず。腸内環境を整えるためにも積極的に取り入れたい。味も好きだ。
そう思って食品コーナーでヨーグルトを手に取る。コストを考えて大きい容器のものを買う。それを数回に分けて蜂蜜やフルーツやジャムなどのトッピングで食べる。
小腹が空いた時のおやつにちょうど良い。
売り場でいつもそう思う。

意気揚々と買ってきて冷蔵庫にしまうと、なんだか食べるのが億劫になる。味も好きなのに。なんとも不思議、としか言いようがない。
食べる為に買ったのに。
翌日には存在を忘れ放置してしまう。やつは冷蔵庫の中で静かに佇んでいる。
わ、いかんいかん。と封を開けてお皿に盛り蜂蜜をまわしかける。おいしい!健康!体にとても良いことしてる〜!

そしてまた忘れてしまう。
時々、賞味期限を大幅に過ぎてしまうことなどもある。匂いを確認して問題なければ食べるけど、乳製品はちょっと怖いので泣く泣く処分することもある。モッタイナイ。
反省して次こそは!と、また買ってきて忘れる。
別に嫌いじゃないのに…連れて帰って冷蔵庫にしまうとヨーグルトに関する記憶が抜け落ちてしまう。これは何かの陰謀かもしれない…ヨーグルトを私に食べさせまいとしている闇の組織の力が作用してるのか。

健康にいいものを買ったという満足感で食べないなんて無駄すぎる。
昨日買ってきたヨーグルト。
忘れるな、自分。

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