ねえ、知ってた?
きみは、電車で1時間離れた病院に入院している。
駅から病院までは歩いて10分。
最寄りの駅が近いっていいよね。
ぼくは、毎週土曜日と日曜日は、面会時間の終わりまできみのそばにいて、会社であったこと、友だちと遊んだこと、映画を観たこと、いろんな話をした。
きみはいつも、ぼくの話のすべてを微笑んで聞いてくれたよね。
本当は早く退院して、ぼくや友だちと楽しみのひとつひとつを共有したいのだろうけど、もうしばらくは我慢しないとね。
ある日、いつものようにお見舞いに行ったとき、きみはぼくにこう言った。
「わたしの病気って治るのかしら?」って。
あのときは正直、胸をぎゅーっと絞られたような気持ちだったよ。
それでもぼくは、「治るに決まっているだろ」ってしか言えなくて、それ以上の言葉が出てこなくて、すぐに違う話にすり替えてしまったね。
ごめん。
でも、知ってた?
あの日から、毎回お見舞いに行った帰りには、駅で最終電車が来るまでぼくはベンチに座って、空を見上げていたんだ。
少しでもきみのそばにいたくて。
同じ星空が見たくて。
そして今、きみは安心したようにぼくの隣で寝息を立てている。
「うん? もう起きたの?」
「おはよう。まだ寝てて。食事が出来たら起こしにくるから」
「ありがとう」
ぼくは、いつものようにキッチンに向かうと、コーヒーメーカーのスイッチを押した。
おわり
★みんなのギャラリーからお借りした画像から考えたショートストーリー第2弾。
こんな感じでこれからも作っていこうと思います。
良かったらまた読んでください。
ありがとうございました。
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