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セブ島でビサヤ語を③〜ASDとパートナー〜


・はじめに
・いっちーについて
・察しておくんなさい
・テンプルオブレイアでキレていた
・うきうき新婚旅行のはずが
・暗雲立ち込める
・通訳はつらいよ
・ASD強制終了
・特性に乗る?
・言葉じゃなくて行動で示す

はじめに
今回の記事は、割と夫婦喧嘩の話なども出てくるので、ゲンナリする人もいるかもしれない。この記事を読む際には、特性の強い人がどのようにパートナーとの関係を作っているかに注目して欲しい。
特性の強い子どもをもつ親も呼んでくれてるかもしれない。特性が強いと意思疎通に障害が出て、パートナーを見つけにくいかもと心配している人もいるようだ。
しかし、なうのパートナーいっちーのように、個性の強い人と一緒にいること好きな人もいる。いっちー曰く、「引っ張っていってもらわないときつい」そうだ。
特性が強いと必ずしもパートナーに恵まれないわけではない。しかし努力は必要だろう。他のカップルと同じだ。そのようなことも踏まえて、この記事を読んでもらえると良いと思う。

いっちーについて
なうのlovingパートナーこといっちーは、とてもできるやつだ。家事も育児も言われたことは一通りできる。毎日同じことを変わらず出来て、忘れない。定型発達の人眩しい。
いっちーは男兄弟の多い家庭で育ち、職場も男性が多い。「なんだよお前!ギャハハー」「うるせーよ」みたいなノリで、兄弟と楽しそうにしていることがよくある。信頼関係があればこそだろう。

察しておくんなさい
結婚する時に、言わなくてもわかってもらおうとするのはやめようと決めた。何度か海外でルームシェアをして、人と暮らすということはそういうことだと学んだのだ。

産後事情が急に変わった。寝不足でいっちーが今何をしているかまで気が回らず、して欲しいことをいいタイミングで伝えられない。免疫も落ちて、あかごのウィルスをフルでもらう。あかごが抱っこ大好きで、常に抱いているため、疲れる。思いやりを持ちながら全て説明してお願いするのが難しくなってしまった。それなら自分でやってしまったほうが早い。
そんな事を痛感していた頃、セブ島行きが決まった。

テンプルオブレイアでキレていた
前回の投稿、セブ島でビサヤ語を②〜ママ水買えたよっ〜を読んでくださった方はもしかかしたら気づいているかもしれない。

テンプルオブレイアの売店でなうがビサヤ語で水を買えた頃、なぜかONE OK ROCKのWhere ever you areのチェロ生演奏が聞こえてきた。皮肉なことに、いっちーが「水買いすぎじゃねー」とギャハハ男友達ノリを繰り出してきた頃には、なうはいっちーにすごくキレていた。

Where ever you are. I always make you smile…
Whatever you say, 君を思う気持ち

うきうき新婚旅行のはずが
新婚旅行を決行することに決めた1番の理由は、あかごの睡眠が安定していて、いっちーもなうもだいぶ楽になっていたことだ。
しかし、出発の1週間前あかごは高熱を出した。そして、急に夜泣きが酷くなった。抑肝散という夜泣きに効く漢方を飲ませると、少し安心して眠れるようだ。少し泣かせてからミルクにココアと抑肝散を混ぜて飲ませる。ココア自体にもリラックス効果がある。
水分をたくさん摂るため、尿量が増えてしまった。予備のオムツをすでにパンパンのスーツケースになんとかねじ込む。ついでにミルクも余計に持っていく。海外のものは合わないかもしれない。
いっちーが荷物が多いとぶつぶつ言う。

暗雲立ち込める
スーツケースを空港に送る日、いくら待っても集荷が来ない。いっちーが「夜遅い時間帯の指定にするからだよ」と例のギャハハノリで言ってきた。「うるせー。荷造り何にもしなかったくせにー。きーっ」と返事して、柔道の技をかけたらかけ返された。あかごがケラケラ笑っていた。

通訳はつらいよ
今回は普通に外国語を話すだけでなく、いっちーに通訳もすることが多かった。案外脳に負荷がかかっていたのかもしれない。
大谷翔平選手の元通訳水原一平被告が、ギャンブル依存の末に、大谷選手のお金に手をつけた理由として、そのハードな勤務形態をあげていた。庇うつもりは全くないが、おそらく激務だったのは間違いないだろう。
大学時代の講義で、言語学者で、通訳の経験もある黒田龍之助先生が「スーツケースを二つ持って、駅のホームをはじからはじまで全力疾走できたら通訳になれます」と言っていたのを思い出した。本当に体力勝負な仕事なのだ。
そして、これは"体力"だけの比喩ではないだろう。ニュースなどで同時通訳が数分おきに交代するのを聞いたことはないだろうか。やはり通訳することの脳への負荷は大きいのだ。

なうは感覚過敏もあって疲れやすい。テンプルオブレイアの帰り、夕食にタイ料理のレストランに行った。もうへとへとだった。料理の飾りとして、食べられない豆が出てきた。うっかり訳し忘れたら、いっちーがガリっと噛んでいた。通訳になれなかった(ならなかった)わけだ。

ASD強制終了
明日日本に帰国する日、とうとう強制終了モードが訪れた。あかごの夜泣きは旅に出てからさらに激しくなった。睡眠不足と外国語環境、湿気の多さとイヤイヤ期のあかごの体調管理、予兆は沢山あったのに。なうは自分の体調を調節できなくなっていた。

いっちーに「午後はホテルでお魚に餌やれるみたいだけど、やる?」と聞いてみた。するといっちーは例のギャハハノリで「えー。プール行くんじゃないのかよ」といった。
午後中プールに浸かってるつもりかと思ったらプチンとキレた。「別にちょっと面白いかなと思っただけだよ。ちょっと休んでくるからあかごをよろしく」と言い残して、部屋へ向かう。色々なことが頭を駆け巡る。パニックだ。これはもう強制終了するしかない。

あかごの哺乳瓶を消毒しないと。いっちーがギャハハノリだよ…飛行場までの送迎をフロントに確認…クリーニングに出したな服まだ届か…あかごのココア足りない?…いっちーギャハハノリ…おつむは?昼用しかない?………

部屋にフラフラ戻ると、客室清掃のお兄さんがシーツを変えてくれていた。「疲れたから寝かしてくれ、部屋はもうパーフェクトだよ」というと、お兄さんは「OKタオルだけ変えていくね」と言った。構わずシーツに潜り込むと、お兄さんは遮光カーテンを引き、部屋の電気もいい感じに調節すると、そーっと出ていった。
お兄さんナイス。感覚過敏の家族でもいるんか?でなければスーパープロフェッショナルだ…………………………

特性に乗る?
2時間ほどこんこんと眠ったら、なんとか生還した。まだパニックの感じが残っている。漢方を飲んで、火を使わないお灸をした。ついでにヨガも。なんとか日本には帰れそうだ。

久しぶりの強制終了モードで、いっちーに迷惑をかけてしまった。辛い。感覚過敏のある嫁をもらって可哀想だとも思った。

あかごを産む前は体調管理がだいぶ上手くいっていて、特性に乗れている感じすらしていた。旅先でいっちーをフォローすることもできていた。なのに、産後急に足場が悪くなってしまったかのようだった。いっちーともっと話し合えばよかったのだ。何も言わなくても重い荷物を持ったり、あかごの世話を代わったりして欲しい。労いの言葉をかけて欲しい。疲れて、自分で全部することを選んでしまっていた。

激務のいっちーとは顔を合わせないことも多くて、なんか遠慮してしまっていた。自分がいっちーを十分に労ってるとも思わない。

言葉じゃなくて行動で示す
それから家に帰るまで、いっちーと何度も話し合った。いっちーは大抵何も言わずになうの話を聞き、言葉少なに意見をいった。そして、率先してあかごの世話や荷物の始末をしてくれた。そうだいっちーはできるやつなのだ。言葉より、行動で示す人だ。そして一度言えばわかる。もはや拝みたい。ありがとうありがとう。

これからの数年間は、いっちーの助けがなければ、"特性に乗る"ことはできないだろう。そんなことがしっかりわかった旅だった。
でもこの借りは必ず返すよ。いっちー

Wherever you are, I always make you smile


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