「手から口へ」の作家先生(所見)

 作家先生は専ら何か書いているらしい。
 一方では権威主義に警鐘を鳴らしておきながら、片一方で学者や他の作家先生の権威を居丈高に振り回しており、人々曰くそれが本業にあたるらしい。
 さて作家先生、果たして「手から口へ」はあと何回出来るのか? 昔取った杵柄も生活苦のために愈々燃やすに至り、寂しき残り火を拠り所に暮らしていることと思うが、お加減はいかが?
 

 わたしはと言えば、とうの昔に専ら物書きによる生活者の景色は見られないものと確信している。慎ましい俸給を膝に乗せているような作家先生から見れば、わたしの作品は金を取れないと言われるであろうし、商業誌の掲載など到底不可能と断じられるであろう。
 しかしそれでいいのだ。縁もゆかりもない集落に何の魅力も感じていないし、そこに恩人もいないので返す恩もない。あれだけやって100万にしかならないのだから、バイトの一つ二つやりながら、あるいは他に職業を持ちつつ物を書いていた方が遥かに経済的であり、己が仁義や信条に背かないことであろう。
 然る年の二月に生じた「ことのは虐殺事件」を見ておきながら、反駁さえしなかった連中と同類と見られてはした金を貰う惨めな生活よりも、わたしは自分の位置を堅守する畢生を尊び、迷わず選択するであろう。
 いるかどうかは知らないが、現状への反逆を誓っている物書きには、是非あんな吝嗇集団より遥かに稼ぎを得て、やりたいことをやっていただければと思う。


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