子どものひらがな学習はどうやって進める?①
こんにちはコトノハ教室です。
ひらがな学習は小学校に入学してから本格に始まっていきますが、入学前から保育園や幼稚園でもひらがな学習を進めていくことが増えてきています。
私たちの身近にはひらがなや漢字で溢れており、文字があることに何ら変哲なく生活しています。
私たちはいつ頃から文字に興味を持ち始めたか覚えている方はいるでしょうか。おそらく〇年△月のように具体的に覚えている方はいないでしょう。
子どもたちが文字に興味を示し始めるきっかけは絵本が多いです。
絵本のイラストから少しずつ同じページに書かれている文字を見つけて『「これはなに?」と文字に興味を示しています』と教えてくださる保護者が多いです。もちろん、絵本だけでなく家庭内にあるテレビや玩具を通して興味を惹くことも十分考えられます。
文字学習と聞くと文字を書くということを連想する風潮にありますが、文字を書けるようになるためには文字を読めることが先決です。
そのため文字学習を進める際は文字を読むことから始めます。
今回はひらがなをひらがなを読むという文字学習に焦点を当て話を進めます。
ひらがなは全部で何文字ある?
ひらがなは50音表を用いながら学習が進められることが多いですが、50音表に記載されているひらがな数は46文字です。
ひらがなは基本的に母音、母音と子音の構造から成り立ち、
母音の行(5)と母音を含めた子音の行(10)を掛け合わせて50音表と呼ばれているだけであり、実際に50文字あるわけではありません。
例外として母音を含まない”ん”を便宜上50音表に含めています。
50音表の46文字の他に濁音、半濁音を含めると71文字となります。
※濁音(例:が,だ)、半濁音(例:ぱ)
拗音36文字、促音(っ)1文字、長音(ー)もあります。
長音(ー)に関しては話し言葉として表記されることも増えてきており、ひらがな学習において伸ばす音を長音として練習することも増えています。
幼稚園年長児はひらがなをいくつ習得している?
太田,宇野,猪俣¹⁾の調査結果によると
調査結果より、平均読字数が平均書字数を上回っており、読む事の方が習得が早いということがわかる。
なお先行研究として島村ら²⁾国立国語研究所³⁾の調査結果も併せて参照されたい。
¹⁾太田静佳,宇野彰,猪俣朋恵:幼稚園年長児におけるひらがな読み書きの習得度 音声言語医学59:9-15,2018
²⁾国立国語研究所:幼児の読み書き能力 1972,3,31
³⁾島村直己,三神廣子:幼児のひらがなの習得-国立国語研究所の1967年の調査との比較を通して- Japanese Journal of Educational Psychology,1994,42,70-76
小学校における文字の捉え方
小学校入学すると本格的に文字学習が進められます。
小学校での学習指導要領には下記のように記載しています。
出版図書によって細かな内容は異なりますが、いずれの教科書も学習指導要領に沿って学習内容が組み立てられています。
上記の事項からもわかる通り、全科目の学習においてひらがな習得は必須です。
しかし、ひらがな習得を苦手とする子どもも存在しています。そのような子どもは他の子どもと比べると教育を受ける機会が損なわれます。そのためICTを用いて他の子どもと同様に教育を受けられるように支援を進めていく場合もあります(合理的配慮)。
ひらがなを読む流れ
ひらがなを見てそれを声に出す(読む)という過程は以下の流れとなっています。
文字を見る
書かれてある文字を見つけることから始めます。
この段階では”り”という文字を【ɾi】という音声として結びついていません。
”り”と言う文字の形を認識しています。
文字を音に変換(デコーディング)
見た文字を始めて音に変換します。”り”という文字を見て【ɾi】という音声と認識します。他の文字も同様で”ん”,”ご”という文字を見て【N】,【go】と認識します。
そして3つの音を繋ぎ合わせて【ɾiNgo】という音である事に変換していきます。
※文字を音に変換する事をデコーディングと言います。
読む
文字を音に変換する作業が終わったらそれを声に出して読みます(音読)。実際に声に出さない場合は黙読として心の中で文字を読むことになります。
黙読では文字を読めているのか判断が難しいです。そのため絵と文字のマッチングプリントを用いる事で読みの判断を行う場合もあります。
そしてひらがなを読む過程において文字を音に変換して出来上がった単語を意味のあることばと認識する事で学習効率が大幅に上がります。
例えば”りんご”という文字を見たら赤い丸の果物である事をイメージ出来ます。
逆に”てひち”という文字を見たら何をイメージするでしょうか。この文字は私が出鱈目に打ち込んだ文字です。そのため”てひち”という文字に意味はありません。しかし、意味ないことばであっても読む事は出来ます。
学習というのは、その瞬間覚えているだけでは学習したとは言えません。1時間後、1日後、1週間後、試験当日のように目標のために覚えていなければなりません(試験当日だけでなく日常への般化が好ましい)。
では、”りんご””てひち”という文字3秒間ずつ見た時どちらの方を覚えているでしょうか。
おそらく”りんご”という文字の方が先に思い出すのではないでしょうか。
この理由は文字と音、意味が全て結びついているからです。小学校入学して文字学習が進んでいくと文章読解が始まります。文章読解は文章を見て質問に答えるという問題です。
この文章読解は文字で書かれた文章を読み、読んだ文字の意味を理解しなければなりません。
文字学習に苦手意識がある子どもは、文字を音に変換、変換した音を意味と結び付けるということに苦手さを抱えています。
単語では読めるけど文章になると読む事が出来ないという場合も多いです。
これは文章になると文字を音に変換するという作業が増えてしまい子どもに負荷が掛かりすぎてしまう事が原因として挙げられます。
読めるようになるために
ひらがなを読めるようになるためには文字認識(文字を見る)、文字を音に変換、読むという流れが必要な事は上記で示した通りです。
文字認識
文字を見るという事は文字認識すること。文字認識の学習は同じ文字同士を線で結ぶという学習があります。線を結ぶ選択肢が多いと難易度は上がります。
鉛筆の動きが苦手な場合は文字カードを用いて指さしで選択してもらう学習も行う事が可能です。これらの学習も苦手である場合は丸や四角などの簡単な図形の学習に戻ることも検討する必要があります。
文字を音に変換(デコーディング)
音に変換するためには音韻意識の力が大いに関与します。
音韻意識とはことばを音単位で考えることが出来る能力です。
例えば、「りんご」ということばはいくつの音から出来ているか(正解は3つ)。「ご」という音は「りんご」ということばのどこにあるのか(正解は最後)。
音韻意識を身に付ける遊びとしてしりとり遊びやたぬき遊び、思い出し遊び等があります。
しりとり遊びは目標とする音の付くことばを答えなければなりません。
目標とする音も相手の答えたことばの最後の文字を一つの音として認識出来る必要があります。
たぬき遊びは指定された音だけを取り除くという少し高度な遊びになります。指定された音を覚える。抜いた後のことばを覚えるという複数の処理が必要です。
思い出し遊びは語想起とも呼ばれ、目標音の付くことばを羅列しなければなりません。
いずれの音遊びも語彙力(ことばの数)が必要とされます。語彙力が少ない場合は絵カードや実物等を用いながら語彙力を増やしましょう。特に抽象語と呼ばれることば見たり聞くだけでは理解しにくいです。そのため具体語の語彙力を増やしたらことばの概念(意味)その物の学習を進めていきましょう。
音韻意識を身につけるためのプリント学習もあります。
これは絵の名前の文字(音)数だけ色を塗る課題になります。
例)いちご→3つ塗る 靴下→4つ塗る
この学習は色を塗ることが目的ではなく、あくまで音の数を理解できる事を狙いとしています。中には鉛筆を動かす事が苦手な子どももいます。その場合は音の数だけ拍手をしたり、具体物(おはじき等)をおく事で音韻意識を身につける学習にもなります。
読む
文字を音に変換(デコーディング)にも関連しますが、
ひらがなは1文字=1音対応です。
例えば、”りんご”というひらがなは3文字であり「りんご」という音は3音ということです。
ひらがな学習において、絵を見て正しい文字を選択する課題や線を結ぶプリントを使用する事もありますが文字を読めなくとも文字数の違いを手掛かりとして問題を解く事ができます。
音の数の違いから選択が可能であれば、文字と音のマッチングを進めながら読字数を増やしていきましょう。
文字カードを使う事も多く、その場合も文字数が異なる選択肢を用意し、聞こえたカードを選択してもらいます。
文字を1文字ずつ読めるようになってきたけど、単語や文章を読む際1文字ずつ区切りながら読んでしまうという悩みも耳にします。1文字ずつ区切って読んでしまうことを逐次読みと言います。
このような場合も文字→音への変換を素早く行う事を苦手とします。これを自動化能力と言います。
自動化能力を身につけるためには図形や絵、文字などがランダムに並んだプリントを素早く読み進めると言った練習もあります。
この他にも文字列の中から単語を見つけ出すという練習を行う事で、文字→音→イメージという繋がりを学ぶ事も出来ます。
まとめ
ひらがなを書けない子どもの半数以上が読むことに対して苦手意識があります。
そのため、まずは書くことよりも読む練習から始めてみましょう。
特に音を意識すること。
この部分が忘れられがちですが、とても重要なポイントです。
必ずしもプリントが必要な訳ではありません。
プリントが無くても手を叩いて物の名前の数を意識する練習もできます。
ひらがなは個人差があるため、まずは一人一人の子どものペースに合わせながら楽しく学習に取り組んでみてください。
p.s. ひらがなを身近に感じるために積み木遊びから始めることも多く、語頭音(始めの音)に対する音が裏面に書かれている積み木を使って楽しく興味を持ってもらう事も楽しめます。