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こんな雨の日に思いだすこと

今日は朝から湿気を含んだ風がぴゅーぴゅー吹いていて、部屋のカーテンをぶわぶわとさせていた。
今も雨が強く降ったり止んだりしている。

大学4年生の7月頭。
私を含めた4人は西伊豆へ旅行に出かけた。男子2人、女子2人で。
友だちなんだけど、普段よく一緒にいたわけではない私たちがなぜ1泊2日の旅行に出かけることになったのか、そしてなぜ行き先が伊豆だったのかは未だに謎で、もう会うこともなくなった私たちは、それについては確かめようもない。

ただ、今日と同じような天気の早朝、私たちは大学のバスロータリーに集合して、そして友だちの車に乗り込んで伊豆を目指した。

ずっと雨が降っていて、たまに小雨になったりもしたけれど、一度も晴れることなく廻った観光地はどこもとても楽しかった。
何を食べたか全く覚えていないけれど、花時計がきれいだったこと、雨で水量が増した滝の激しさ、蘭が咲いていた温室のもわっとした空気、真夜中にすぐそこに打ちつける波の音を聞きながら入った露天風呂、そしてずっとずっと楽しかった私たちの間にあった空気のことは、今も鮮やかに思いだせる。


私は、ぼんやりと旅の仲間である彼らの当時の恋愛事情を知っていた。
そして想いの矢印の先は、私たち4人のどこにも向いていないことも知っていた。旅の間、それぞれの恋愛事情を赤裸々に語ることもしなかったはずだ。だからこその純粋な楽しみを享受したのだろうか。
でも私はそれぞれの想いが、旅の間中それぞれの心の中にあって、ふとした瞬間に湧きあがるのを何回も感じた。自分の中にも。
だが誰もそんな想いを語ることなく、大学生らしくバカなことをしながら私たちの2日の旅は終わった。とても楽しい思い出ばかりを詰めて私たちは帰ってきた。

帰ってきてからも周りの友だちに「なんでこの4人で行ったん?」と随分と不思議がられたが、私たちにもなぜだったのかわからないし、きっとこの4人で出かけるなんてこの先絶対ないだろう、ということがわかっていた。
たった一度だけ絶妙なタイミングで、あの時間を共有したのだ。


西伊豆の道路を入っている途中、窓から見た雨の中の一本道とそこに続く青々とした桜並木。そしてフロントガラスを叩く雨。

今日のような雨と風の日は、そんな風景が一瞬で蘇り、そしてもう2度と来ないあの日々を鮮やかに思い起こさせる。
あの日も確か、7月4日だった。

#エッセイ #大学生 #西伊豆 #旅行 #2度とない

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