心に刺さったナイフの話
その会社を辞めてから数年後、当時の上司に会う機会があった。
途中で共通の知人の話になり、その知人ががんになり手術をしたことを私は伝えた。
元上司は、
「そっかー、あの人はいつかそうなると思ってたんだよな」
「俺は、ことほさんもそうなるんじゃないかと思ってた」
と何気なく言った。
元上司はとても影響力のある存在で、当時多くの人に信仰?されていた。
そしてもしかしたらそんな予言めいた力があるのかも…とさえ思えるような、そんな雰囲気を漂わせていた。
私も勝手にそんな力があるんじゃないの?なんて思っていたりした。
そんな人から言われた、この言葉が私の心にグサッと刺さり、それはそれは深い深い傷になった。
怖かった。もういろんなことが怖かった。元上司の存在も、言い放った言葉も、そして私自身のことも。
その後、元上司と何を話したか覚えていない。
一緒にいた息子が握ってくれていた手が温かかったことしか。
あまりに怖くて私と元上司と一緒に当時一緒に働いていた先輩に、数日後何とか話して、その後は誰にも話せなかった。
そこから私の中に怖れと不安が居座ることになり、何かあるとこの言葉が心の底から浮かび上がっては私はうまく立てなくなっていた。
ナイフが心臓に突き刺さり、血が流れているのにどうやって止めたらいいのかわからなくて怖かった。
現実ではちょっとした不調があるとありえないほど不安になり、そして病院に行き、何ともないことにその場で安心し、そして不調があると…の繰り返し。
そんなことがあってから数年。
私はもうこの状況をどうにかしたい!!!!!!!と強く強く思った。
ずっとずっと思っていたけれど、もういい加減離れようと思った(実際にはその元上司とはそれ以来1回も会っていないし、連絡も取っていない)。
私は勝手に支配されていたのだ、元上司に。
そしてありえないほどの怒りを感じていたのだ、その人に。
ということを認めて、そして少しずつ少しずつこの傷を信頼できる人に話していった。
そして私の心身は、その元上司とは関係ないのだ、というところに今やっとで来た。長かった… 5年かかった。
もう大丈夫、と思えるのに、まだこれを書いていて泣けてくる。
この間、私の周りの大切な人たちはとても誠実に私を受け止めてくれた。
その人たちとの話を通して、もう一度土台を築きあげ、そして一番最近、この話を取り上げた際にセッションしてくださった方と話していたときに「あぁ、私は自分で創り上げていけるんだ、この人生を」ということが、するーん!と落ちてきた気がした。
まだまだこの出来事を通して感じたことを言葉にはできない。
今初めて文章にしているくらいだ(話すのと書くのは、やはり違う)。
今思うのは、
あのままでは絶対に嫌だ!と強く思ったこと。
心のナイフを抜いたとき、その後に残っていた光を温かく感じたこと。
そして私はあのとき怒ってよかったんだ、ということ。
書いてみると、ええー?そんなに大変なこと?という気持ちも出てくるから不思議だ。
でも確かにしんどかったんだよなー、と自分の気持ちを受け止めて、今日は今日で進んでいこうと思う。
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